40話 戦争準備
無事に飛竜を討伐し残すは飛竜の卵が2つ。
どうしたものか?
ギルドに持っていけばいい金になるが、そうすると、今度は親の飛竜の事を聞かれるだろう。
カウス王から許可は貰っているが、説明が面倒くさい。
「冥王様、卵の状態では配下にできないのですか?」
と、リリス。
卵の状態でか、試してみるか。
「試したことが無いな。一度やってみようか、ダークソウル」
すると2つの卵は何の抵抗もなくダークソウルで配下にできたことが感覚でわかる。
まだ、死んでいない事も。
当たり前か、先ほどまで、飛竜に温められていたのだから。
すると、リリスとアリスが急に卵に抱き着き始めた。
「冥王様、もし生まれた、私達に世話をさせてもらえませんか?」
「すでに冥王様の配下になっているなら、安全ですよね」
「構わないが生まれてくるまでそうしているつもりか……」
話している内に卵にひび割れが起こり始めて、2体の小型犬サイズの飛竜の雛が生まれてきた。
「なんて都合のいい、しかし、飛竜の雛なんて何を食べるんだ?」
すると、生れたばかりの雛はバリバリと自分の卵の殻を食べ始めた。
普通に肉でも与えておけばいいのかな?
雛は近くにいた、リリスに1体がアリスに1体が刷り込みのようなものだろうか、甘えている。
俺は試しに亜空間からビッグボアの干し肉を取り出し与えてみる。
やはり、肉食なのか、モグモグと食べ始めた。
「冥王様、私もあげてみたいです!」
「あっ、私もあげてみたいです!」
と、リリスとアリス。
俺は二人に干し肉を少し、多めに渡した。
2人は嬉しそうに餌を与えている。
この2体の雛はしばらくは亜空間で飼うか冥王の町で飼う事になるだろう。
どちらかと言えば、リリスとアリスが面倒を見ると言っているから冥王の町か。
取り敢えずの目標は達している。
一度、転移魔法で、俺達は冥王の町に転移した。
さっそく、2体の雛は住人達に知り渡り、人気者になっていた。
「ファミル、この町の猟師だけであの雛の餌を賄えそうか?」
「流石に私も飛竜の雛の育て方は知りませんので、何とも言えませんな」
「やはりそうか。仕方ない、しばらくは俺の配下も使って猟をするしかないな。あの2体の雛が自分で餌を取れるようになるまでは」
「それで、冥王様。2体の番の飛竜はどうするおつもりで」
「この町の防衛戦力と使うつもりだ、鞍を作って、衛士数名に飛行訓練をさせてくれ。上空からの見張りは役に立つ」
「畏まりました」
あとは、できるだけ、飛竜部隊を作れれば言う事はないんだが、飛竜はなかなか見つからない。
「俺がいない間に何か変わった事はなかったか?」
「人間の国から数名の冒険者達が入ってきましたが、不死の森を抜けられずに全滅。また魔族側も今、また不死の森の外で出兵の準備をしているようです」
「またか、数はどれぐらいだ?」
「今度は本気の用で数は5000ほどの規模になりそうです」
「だいぶ、数はいるな。全て正規兵か?」
「いえ、推測ですが、大分分が農民たちを徴兵しているものかと思われます」
「わかった、俺もゴーレム部隊とアンデッドを召喚して少しでも数を増やしておこう」
「ミコ、すまないが、町の鍛冶屋の連中集めてフルプレートアーマーを量産してもらえるか?リビングアーマーも作っておきたい」
「はい、では早速行動に移ります」
『冥王様、お知らせしたいことがあります』
人間の国に潜ましていた、リッチからの連絡だ。
『どうした?何か動きがあったか?』
『はっ。それが魔族側の動きがこちらにも届いているようで、人間達も出兵の準備を始めているようです』
『カウス王も無駄な事をしてくれるな。被害がどれだけ出るか分かっているのか』
『それが人間達は、勇者召喚に成功したとかで、かなりの勝算を考えているようです』
『何!? 勇者のアリスはここにいるぞ』
『それが、異世界からの勇者のようです』
『異世界!? そんな世界があるのか!?』
『私も詳細はまだ、つかめておりません』
『わかった、引き続き調査を頼む』
『はっ』
「ファミル、聞いていたな? そのような事は500年前にもあったのか?」
「いえ、私も初耳でございます」
「俺は、一度王都へ向かい確かめてくる」
俺は急いで転移魔法で王都へと移動する。
王都へ着くと、どうも慌ただしい。
やはり、異世界勇者の話はほんとうか?
俺は冒険者ギルドへ行く。
噂を聞いて回ると、やはり、ギルドでも異世界勇者召喚の話しでもちきりだった。
俺は、王城へと向かう。
王の短剣をみせて謁見の間に入る。
「久しいな、グレイ殿。今日はどうしたのだ?」
「はっ、お久しぶりです陛下。今日は勇者の件で参りました」
「おお、そなたの耳にも届いておったか。無事に勇者の召喚は成功した。これで魔族どもより、先にケルベロスを討伐して、その先にある、眠れるものをわが国が保護できる」
「私は、反対したはずです。どれほどの被害がでるか」
「だからこその、勇者ではないか」
「勇者は、この世界の勇者はどうするのですか?」
「見つからんものはしょうがない、すでに勇者は誕生したのだ。グレイ殿の懸念は分かるが、安心していい」
駄目だ、カウス王はもう止まる気がないようだ。
これはいよいよ、冥王の町を守る必要がでてきた。
最悪、亜空間で住人には住んでもらわないと。
「その勇者殿は今どちらに?」
「勇者殿は今、ダンジョンに篭り修行中だ。時期に力をつけて戻ってくるだろう」
せめて勇者を見ておきたがったが、それもかなわないか。
「私からのせめてもの情報です、魔族の数は、5000にも及ぶようです」
「ありがたい情報だ、感謝する。我らも軍備を整えなければな」
「それでは陛下、私はこれで失礼します」
俺は、王城から出て、転移魔法で冥王の町に戻る。
こちらもできるだけの準備をしなければ、ならない。
まずは配下を増やすためにミコ達鍛冶師達が作ったフルプレートアーマーをリビングアーマーにしていく。そして、配下召喚でもスケルトンを召喚、通常のゴーレム部隊も作り出す。
人間相手に俺の黒い配下は使えない。
すでにネクロマンサーとして知られている。
こんなところで、まさか王の許可を取ったことが裏目にでるとは、思わなかった。
充てるとしたら、通常のゴーレム部隊ぐらいだろうか。
それ以外は、魔族にあてて、通常の不死の森にいるアンデッド達を人間の部隊に充てるしかない。
後はできる事としては、魔族側と人間側を上手く衝突させることだ。
「ファミル、不死の森のアンデッド達を誘導して、人間達に充てることは、可能か?」
「はい、可能です」
「ではできるだけ、不死の森のアンデッドを人間達に向かわしてくれ」
「畏まりました。冥王様」
「それとキリンジもゴズとメズを連れて、人間達の方で暴れてくれ。ただし向こうには異世界からきた勇者がいるから、気を付けて欲しい。危なくなったらすぐに亜空間に逃げ込んでてくれ」
「了解しました、グレイ様」
「もし、人間か魔族のどちらかが不死の森を抜けた場合は、全員、亜空間に避難してくれ。町ごと亜空間に収納する」
「「はっ」」
さて、どれくらいの期間で攻めてくるんだ?
こちらもそれまでに戦力を整えないと。
もはやこれは戦争だ。