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4話 ゴブリンの壊滅と野盗の壊滅

 血のむせ返るに臭いで初めて吐いた。

 それまでは、ただただ必死だった。

 野盗とはいえ俺は6歳にして初めて人を殺したのだ。

 戦いの高揚感が消え、過剰なアドレナリンの分泌も終わり、ただの6歳児に戻った、俺にはきつかった。


 自警団の人たちは、平気ななのか、早速、死体漁りをしている。

 俺は何とか立ち上がり、自警団の人達にけが人がいないかを確かめる。

 数人がケガをしていたが、大したことない傷だが一応回復魔法を使う。


 「ライトヒール」


 「おお、ケガが治った。流石マリアさんの血をひいてるな。でも無理はせずに、もういいから村の中に入って休んでおいで。顔色がよくないぞ。ここは俺たちが引き受けるから」


 俺は、その言葉に甘える事にした。

 村の広場の地下室にもう大丈夫な事を伝えに行った、俺はそのまま自分の家で休むことにした。

 今更になって恐怖が込み上げてくる。

 一歩間違えれば死んでいたのは僕だったのかもしれない。

 そう思うと早く父と母に会いたくなって一人家の中で震えていた。


☆★☆


 村を出発したたアルフレッドとマリア達自警団は猟師オットーの道案内のもとにゴブリンの巣に向かっていた。

 森の中を歩いて1時間の距離にゴブリンの巣が見つかったのだ。


 「しかし、こんなに近くにゴブリンの巣ができているなんて、オットーが早めに見つけてくれて助かったよ」


 「きにするな、アルフレッド。これも村の為だ。それに規模もまだ小さいからな」


 「数はどれぐらいいそうなんだ?」


 「だいたい30匹ってとこか。お前さんの息子さんの訓練が役に立つ時がきたな」


 「確かにな、30体でのゴーレム戦闘が此処で役に立つ事を祈るよ」


 「しかし、本当にグレイは連れてこなくて良かったのか、戦わせなくても戦闘の雰囲気だけでも感じさせてやればよかったんじゃないか」


 「馬鹿言うなよ、確かにあいつの実力ならゴブリン程度どうにかなるだろうが、まだ6歳の子供だ。戦闘には早いよ」


 「そうか?あの子は聡明な子だ。お前たちが居れば、無茶はしないと思うぞ。むしろ一人で留守番なんて逆になにかあったときに無茶をしそうだ。父さんと母さんの代わりにってな」


 「ん~。確かにあり得るが、最低限の人間は置いて来た、多分大丈夫だろ、出て来てもはぐれのゴブリンぐらいだろうから、自警団で対処できるさ」


 「まっそれもそうか」


 「2人ともそろそろ着くわよ、無駄口はその辺にしてさっさとかたずけて村に帰りましょ。あなた達が余計な事を言うからなんだかグレイが心配になってきたわ」


 ゴブリン達の巣は天然の洞窟を住処にしていた。


 「オットー出入口はあそこの一つか?」


 「ああ、一つだけだ」


 「よし、じゃあ作戦通りにまずはオットーの弓で先制攻撃だ」


 オットーは弓を引き絞り狙いを定めて、矢を放つ。

 穿たれた矢は真っすぐにゴブリンに命中し、命を落とす。

 それが戦いの合図となった。

 訓練を積んだ自警団はゴブリン達をいとも簡単に切り伏せていく。

 出来立ての巣らしく、まだ、上位種が誕生してなかったのが幸いした。

 

 「さて、一応洞窟の中も確認してみるか」


 とアルフレッド。


 洞窟の中はほぼ1本道になっており、迷うことなく進む。時折生き残りのゴブリンを見つけてはアルフレッドが切り伏せていく。

 中には誰かから奪ったのか、少しの銀貨と銅貨が見つかり、後は粗末な剣などが見つかった。

 一応鍛冶屋のトーマスのお土産としてそれらも全て回収していく。

 冒険者組合にいけば、ゴブリンは常時依頼で常に張り出されているので、多少の金にもなる。

 自警団はゴブリンの右耳を切り取り袋に詰める。

 討伐の証として冒険者組合に持っていくのだ。

 一応財宝があったときのために荷車も持ってきている。ゴブリン達が持っていた武器も使えそうなものは全て回収する。

 鉄は鍛冶屋のトーマスに頼んでまた新しく武具になるか農具に打ち直されることになる。

 こうして一行は、無事にゴブリン退治を済ませて意気揚々と凱旋する。


 村に帰ってくると、どうも様子がおかしかった。


 門番の一人が、

 

 「やっと帰ってきたか、お前たちが出発してから、野盗が現れて、大変だったんだ。グレイのおかげで何とか討伐はできたが、それでも肝が冷えたよ。捕虜も捉えているから、後で尋問に付き合ってくれよ、アルフレッドさん」


 「なんだと!? 野盗が現れたのか。それで息子は無事なのか?」


 「ああ、今は家で休んでるはずだよ。いや、本当に大した子だよ。あの子がいなけりゃ、村が危なかったよ」


 そこには、確かに激しく戦った後の戦闘の痕跡がわかる。

 アルフレッドとマリアは急いで家に帰る。

 家の扉を開けるとすぐに、


 「グレイどこだ、今帰ったぞ!」


 「お帰りなさい、父さん、母さん」


 「野盗が来てお前も戦ったと聞いた、ケガはないのか?」


 「うん、大丈夫」

 

 しかしグレイの顔色は優れないままだ。


 「俺、父さんと母さんの代わりに頑張ったよ、自警団の人も流石2人の息子だって褒めてくれたよ」


 グレイは震えながら父と母に報告した。


 「でも人を俺……。」


 マリアはすぐにグレイを抱きしめる。

 

 「大丈夫よ、もう終わったの。よく頑張ったわね」


 母のぬくもりが張り詰めていた緊張を解いた。

 グレイは泣いた。

 何故こんなに涙が溢れるのか本人にもわからなかった。

 それは、恐怖からなのか初めての殺人による罪悪感からなのか、いくら野盗とはいえ、相手は人間だった。

 アルフレッドもマリアもグレイを叱る気にはならなかった。

 戦闘の後をみると、確かに残していた自警団だけでは厳しかっただろう。

 アルフレッドは2人とも抱きしめて、


 「ああ、よく頑張ったな。流石父さんと母さんの子だ」


 その日村には小さな英雄が誕生した。


 翌日アルフレッドは捕えた捕虜に尋問をすることにした。


 「まず、聞きたい。ゴブリン達の存在を知っていて、この村を狙っていたのか」


 「ああ、その通りだ。作戦は完璧だったのに、あのガキさえいなけりゃ成功してたんだ。くそっ!どうせ俺たちは縛り首だ、なんな早く聞きやがれ」


 アルフレッドはアジトの場所、アジトに残っている人数や武装などを聞き出した。

 2度とこのような事が起こらないように準備を始める。

 幸いにも情報によるとほとんどの、人数が此処で倒されたらしくアジトに残っているのは数人だけらしい。

 すぐに行動しなければ、アジトに残った野盗たちに何かあったろうと気取られる可能性もある。

 アルフレッドはすぐに討伐隊を組織する。

 ゴブリン討伐に続いて連続になるが、ゴブリン達との戦闘でのこちらの損傷は皆無だったため、すぐに」準備が整う。


 「父さん、行くの?」


 「ああ、グレイ行ってくる」


 「じゃあ、僕も連れて行って。足手まといにはならないから」


 アルフレッドは考える。

 一応初陣は済ませているが、まだグレイは6歳の子供だ。

 しかし遅かれ早かれこういう体験はするものだ。

 自分がついていれば、早々危険はないと判断する。


 「分かった、着いてきなさい」


 「アル!グレイはまだ、子供なのよ、盗賊団のアジトには危険すぎるわ」


 とマリアは反対した。


 「だが、置いて行った結果、グレイは見事に村を救った。無茶をさせない為にも俺たちが着いていれば大丈夫さ。グレイ、着いてくるなら、父さんと母さんから離れるな。それとちゃんと言う事を聞くんだぞ」


 「はい、父さん。母さんも心配しないで、決して無茶ははしなしから」


 「わかったわグレイ。決して母さんたちからはぐれないようにするのよ」


 グレイは思った。

 実践経験を積めばそれだけ強くなれると。

 しかも今回は父と母が着いている、あの程度の野盗達に心が怯えていては、いけないと。

 出発はすぐに行われた。

 俺は疲れた体に鞭をうって、ただひたすら歩く。

 弱音を吐けばきっと父と母に村に返されてしまうだろうから。

 生き残るためには、もっと強くならなければ。

 しばらくすると野盗のアジトにたどり着く。

 見張りは2人。

 素早くオットーさんが弓で一人を倒す。

 父もいつの間にか見張りの背後に立っていて素早く見張り排除した。

 

 「よし、グレイ。お前のゴーレム達を中に送りこめ、敵が混乱している間にかたずける」


 俺はゴーレムできるだけ多く生み出す。

 出来たゴーレムは50体。

 しかも大きさも大人サイズになっていた。

 これには、俺も驚いた。

 さっきまでは30体が限界だったのにどういうことだ?

 

 「いつの間にそんなに生み出せるようになったんだ!?」


 「俺にもわからないよ」


 「まぁいい。好都合だ。ゴーレム達を中に突撃させろ」


 「分かった。行けゴーレム達。野盗をやっつけろ!」


 ゴーレム達は野盗のアジトにどんどん踏み込んで行く。

 野盗たちのアジトが騒がしくなってきた。



 「敵襲だー」


 「ゴーレムだと!?何処から湧いてきやがった。」


 50体のゴーレム達は野盗を次々に倒していく。


 「よし、俺たちも後に続くぞ」


 しかし、強化されたゴーレム達の攻撃で野盗たちはすでに半壊の状態になっており、制圧はいとも簡単に終わった。

 

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