39話 洞穴での話し合いと飛竜討伐
リリスとアリスの訓練に、冥王の町の衛士、自警団の訓練。
そして俺達ハーデスの強化にと俺は、忙しい毎日を送っていた。
全員が力を身に着け、冥王の町は今かなりの戦力を有している。
そんな折、グランパレスである、噂が流れていた。
なんでも飛竜の番が見つかったとか。
冒険者ギルドもまだ調査中ではっきりとしたことは、分かっていないみたいだ。
飛竜は航空戦力として、以前から手に入れたかったモンスターだ。
噂をもとに飛竜が現れたという、山脈へと行く事にした。
修行の一環として、リリスとアリスもつれ行く。
初めての遠出で2人が緊張しているのがわかる。
もし、他の冒険者達に見つかった時の為に2人には手の甲の紋章を隠せるグローブを身に着けてもらっている。
「グレイ様、本当に2人を連れて来てよかったんですか?」
「確かに大分強くなりましたがまだ飛竜には早いのでは?」
と、ミコとサーラは言う。
「2人はまだ、自分達より格上のモンスターと戦った事がない。しっかりと相手を見定めて撤退を決めれるかのテストでもあるんだ。それに俺達が付いていれば、大丈夫だろ」
取り敢えずは、野営の練習からだな。
ちょうどいい洞穴をみつけたので、野営の準備をさせよう。
「今日はここで野営をする。2人は準備をするように」
「はい、冥王様」
「はーい」
とリリスとアリス。
「ミコとサーラは2人を見てやってくれ。俺はこの先を少し偵察してくる」
「了解です」
「畏まりました」
と、ミコとサーラ。
俺は単身、先へと進み飛竜の痕跡を探す。
すると、上空を飛ぶ飛竜をみつけた。
俺はとんでいる飛竜の後をつけ、ねぐらを見つける。
確かに番の飛竜がそこにはいた。
すでに卵を産んで交代で温めているようだ。
この距離なら、明日には着くなと思い、俺はそっと気配を消して、その場を立ち去り野営地点に戻る。
野営地点に戻ると、しっかりと野営の準備が終わっており、食事の用意をしていた。
食事は、簡単なスープと硬い黒パンに干し肉だけだ。
「冥王様がいるのになんで、亜空間で休まないんですか?」
「出発前にもこれは実地訓練だって、言ってたじゃないアリス」
「リリスだって、亜空間で休みたいでしょ?」
「それは、そうだけど」
「それにご飯も野営中はこんな質素だなんて思わなかったよ」
「2人ともいつも俺がそばにいるわけじゃないからな。こういう事にもなれておかないと」
「そうだ! 私達も15歳の大人になったら、冥王様のハーデスに入れてもらおうよ!リリス」
「私達が冥王様のパーティーに入るの?アリス」
「そうすれば、いつでも冥王様のそばに居られるし、亜空間で快適な旅ができるよ!」
「動機が不純すぎるよ、アリス」
「そんなこと言って、リリスだって冥王様のそばにいたいでしょ?」
「それはそうだけど、ミコさんとサーラさんは私達がハーデスに入ってもいいんですか?」
話がおかしな方向に流れて行っているが、ハーデスのリーダーは俺だ。
何故、ミコとサーラに聞くんだ?
「2人が仲間に加わってくれれば、心強いわ。だから大歓迎よ。ね、サーラ」
「ええ、ミコの言う通り、私も歓迎するわ」
「やったねリリス、これで私達は準ハーデスのパーティーメンバーよ」
「そうだね、アリス。これからもよろしくお願いします。冥王様」
何故か、俺抜きで将来の2人のパーティ入りが決まってしまった。
魔王と勇者が同じパーティーになるとは、いいのか?
「あ、ああ、よろしくな」
流れに任せて了承してしまった。
「そういえば2人は随分と仲がいいようだが、幼い頃からの付き合いなのか?」
「私達2人とも魔族と人間のハーフなんです。それで、幼い頃から話しが良く合って、2人だけで良く遊んでました」
と、リリス。
「ハーフは珍しいのか?」
「結婚しているカップルは一定数いますけど、魔族と人間の間に子供は生まれにくいんですよ。だから同世代の友達の中では私達だけなんです」
と、アリス
まさか2人が魔族と人間のハーフだとは。
上手くいけば、2人は魔族と人間の架け橋になる。
それとも迫害の対象になるかだな。
「というわけで、準パーティーにもなれましたし、亜空間で休みたいです!」
と、アリス。
「こら、調子に乗るな。今日はここで全員が野宿だ。見張りも交代でするから、そのつもりでいるように。明日には飛竜の討伐が待っている。少しでも体力を温存しておくんだぞ。見張りは、最初にアリスとサーラに任せる。次にミコとリリス。そして最後は俺が見張りを代わる」
「冥王様だけ1人でいいんですか?」
と、リリス。
「俺には配下が使えるからな。問題はない。さあ、休める時に休もう。明日ははやいぞ」
そして、次の日の朝。
「さあ、出発の時間だ。全員起きろよ」
質素な朝食を取り、俺達は飛竜の討伐に向かう。
飛竜の巣に着くと、ちょうど1体だけのようだ。
もはや、今の俺にとっては、飛竜ごとき敵ではない。
静かに近寄り奇襲をかける。
「ダーククラウド」
闇が飛竜を包み込む。
俺は闇に溶け込み飛竜の心臓を一突きで倒して見せた。
「ダークソウル」
で飛竜をアンデッドにして俺の配下に加える。
そして、もう1体が帰って来るのを待つ。
しばらくするともう1体が帰って来た。
「グルルァァァ!」
と咆哮を上げて、こちらに襲い掛かって来た。
「さあ、2人とも準備はいいな、俺達はフォローにまわるが、無理だと思えば即座に変われ!」
「「はい」」
リリスとアリスは二手に分かれて挟撃を始める。
「くらえ、アイスランス!アースニードル!」
リリスがまずは飛竜を牽制する。
その隙にアリスが飛竜に接近し翼を攻撃、敵を飛ばさないようにするためだろう。
剣には切れ味を増す為に風魔法をエンチャントしている。
片翼に傷をつけ、その勢いのまま頭部を狙うが少し間に合わず、片目に浅く傷をつけた。
飛竜は回転し尻尾でアリスを吹き飛ばす。
そして、方向転換してリリスに突進していく。
「トルネード!」
リリスは風魔法で飛竜の突進の軌道を変えよう竜巻を生み出す。
風の刃で傷付きながらも飛竜は突進していくが流石に少し軌道がずれてリリスは直撃はくらわなかったが、それでもダメージを与えられ軽く飛ばされた。
飛竜は片翼に傷があるにも関わらず、飛び上がり、急降下して、リリスをかぎ爪で引き裂こうとしている。
リリスはふらついて防御が間に会わない。
「ミコ!」
「はい!」
ミコがリリスと飛竜の間に入り、飛竜の攻撃を受け止める。
「このよくもリリスを!」
と、吹き飛ばされていた、アリスが復活し飛竜の足の健を切り裂くが踏み込み甘い。
「浅かった!?」
「ぼうっとするな、次が来るぞ!」
飛竜はアリスに標的を変えてえ、そのまま足で踏み潰そうとする。
すかさず、サーラが間に入りガードする。
飛竜は再び空に上がり急旋回して今度はサーラに攻撃を仕掛けたが、受け止められ、そのままサーラは片足の健を斬る。
飛竜はたまらずに転げ落ちる。
「どうだ?まだ2人でやれるか?」
2人は悔しそうに答える。
「残念ながら、今の私達では無理です」
「私も無理だと思います」
と、リリスとアリス。
「相手が格上で撤退を選ぶことも時には重要な判断だ。それでいい。今回は合格だよ。後は任せてもらおうか」
「グルルァァァ」
と飛竜は最後の雄たけびを上げてこちらに噛みつこうとしてくる。
それを避けて、心臓を狙い一突きで倒す。
「ダークソウル」
これで2体目の飛竜を手に入れる事に成功した。