38話 魔王と勇者の訓練 其の2
リリスとアリスの剣技の訓練が終わり、2人のお待ちかねの魔法の訓練が始まった。
「まずは体内にある魔力を感じることから始めようか」
「体の中の魔力を感じる?」
「そんな事、どうやってするの?」
と、リリスとアリス。
「本当は、長い時間をかけて、精神を集中させて自分でみつけるんだが、2人には特別な方法で手っ取り早く覚えてもらうよ」
俺はリリスとアリスの方に手を置き、自分の魔力を流し込む。
「ん、く。何この感じ?」
「は、ん。ほんと何かが引っ張られる」
とリリスとアリス。
「いま俺の魔力を2人に流し込んで、リリスとアリスの魔力を無理やり扱っているとこだ。さあ2人とも掌に意識して今の感じてる魔力を集めてみて、そう言い感じだ。さあ、まずはファイアーボールを使ってみよう」
俺は、2人の魔力が暴走しないように肩に手を置いたまま制御する。
「「ファイアーボール」」
ドン、ドンと2人の手から、ファイアーボールの魔法が放たれた。
俺が制御しているとはいえ、まさか一発で成功するとは。
「今の感覚を忘れないように、それとあまり魔力を込めすぎてもダメだよ」
「魔法が撃てたねアリス」
「うん、魔法が撃てたねリリス」
2人には俺の声が届いてたないみたいで、魔法が使えたことが、よっぽど嬉しかったのだろう、すごいはしゃぎっぷりだった。
その後は、生活に役立つ種火の魔法や飲み水をだす、小さな魔法も習得させた。
まだまだ、危なかしいがこれで2人も魔法が使えるようになった。
「さっ、次は俺の補助なしで使ってみよう、まずは種火の魔法からやってみようか」
「えーさっきのファイアーボールみたいな魔法をつかってみたいよ冥王様」
「うんうん、なんかドカーンって気持ちよかったよ」
とアリスとリリス。
「調子にのらいないの。まずはしっかり、魔力制御ができないと攻撃魔法は危ないんだぞ。まずは種火からやって見なさい」
すると2人は種火の魔法を使う。
アリスは元気よく魔力を込めたのかかなりの火柱がたってしまった。
逆にリリスはアリスを見ていたのか魔力を込めなさ過ぎて、シュボッと音のみで終わった。
「あれ、さっきより難しい」
「ほんとだ、冥王様に触れられた時は簡単にできたのに」
「2人とも魔力制御をしっかり覚えないとちゃんと使えない事が、これでわかったろ?」
それから数日は魔法の魔力制御の練習に励んだ。
数日でリリスとアリスの2人はメキメキと魔力制御を覚えていく。
魔王と勇者の才能はやはりすごい。
2カ月もすれば、魔力制御もほぼ完ぺきになっていた。
そろそろ、実践を積ましてもいいかもしれない。
俺は久しぶりに隠していた、30層のダンジョンに2人を連れてきていた。
定期的に俺の配下達が、間引きしているので、オーバーフローを起こすこともない。
「これがダンジョン」
「なんだか緊張するねリリス」
「二人の実力なら確実に踏破できるダンジョンだ、俺達、ミコとサーラはフォローに回るから、2人で攻略しみなさい」
「いまは、配下達を引き上げさせているから、出てくるモンスターは全ててきだから、油断しないように」
「「はい」」
こうして二人は初めてのダンジョンに挑む。
2人は問題なく、1層から9層までをクリアしていく。
そして、10層の守護者部屋までたどり着く。
「ここは、ゴブリンジェネラルがいるけど、それ以上に取り巻きが多いから、今までの用にいかない。2人のコンビネーションをしっかりと生かすんだよ」
俺達は10層の守護者に挑む。
相変わらず、雑魚の数だけは多い部屋だ。
2人は雑魚相手に無双しているが、中々ゴブリンジェネラルに近づけにいる。
「この、道を開けろ、ファイアーボール」
「アイスランス」
とアリスとリリスは魔法を使い道を切り開かそうとするが中々とたどりつけず、1時間はかかってしまった。
「どうだい、雑魚でも数がいれば、時間がかかるだろう?」
「冥王様少し休憩してもいいですか?」
「リリスに同意。私も疲れました」
「じゃあまずは11層におりて、転移結晶に触れておこうか」
2人はたっぷりと1時間ほど、休憩を挟み、再度ダンジョンに挑む。
途中の雑魚では苦戦はしないが、攻撃が雑になってきている、油断をしている証拠だ。
「攻撃が雑になってきているぞ、いくら雑魚でも油断しない!」
と、俺は檄を飛ばす。
その後は、順調に進み、20層の守護者部屋のゴブリンキング戦になる。
取り巻きはジェネラル級がが5体。
先ほどの10層より敵はすくないが、ここからは敵も連携をとってくる。
2人は上手く連携しているが、ここでも敵に連携を崩されて危ない場面があったので俺達はフォローにまわる。
個人の戦闘自体は問題ないが、2人の連携が崩されたときが今後の課題になりそうだ。
ジェネラル級を倒して、残りはゴブリンキングのみとなった。
2人は連携してゴブリンキングを簡単に倒した。
21層目からはオークがでてくる。
だが2人は難なく敵を倒して行く。
ここまでの戦闘で大分、戦闘能力も上がったようだ。
雑魚でもちゃんと経験値として加算されている。
順調に進み、30層の守護者部屋前までたどり着いた。
このダンジョンの30層の守護者はオークキングだ。
1体しかいないし、2人なら問題なく倒せるだろう。
案の定、2人は難なくオークキングを倒して見せた。
「やった!これでダンジョン制覇だねアリス」
「うん、そうだね、アリス」
2人は嬉しそうにお互いの手を叩いて喜んでいた。
課題は数の暴力に対する戦闘方法だ。
今のままではいずれ痛い目をみる。
広域魔法を2人に教えておこう。
転移魔法で冥王の町に戻り、その日はそのままお休みにして、2人の自由時間にした。
おれは、リッチとワイトを呼び出し、その日の内に広域魔法の何が効果的かを話し合う。
魔法談義をしていると、いつのまにかファミルとキリンジも交じり始めて、リリスとアリスの今後の教育方針について、喋り始めた。
「剣技はそこそこできるようになったが、魔法にもっと力をいれるべきですね。もちろん鍛錬は行いますが」
とキリンジ。
ファミル達アンデッドも同じ意見のようだ。
「町の衛士達や自警団の方はどんな感じなんだ?」
「やはり、後は実戦訓練がひつようでしょうな。今日2人が行ったダンジョンで、修行させる方が効果的でしょう。しばらくは1層から10層を周回させましょう」
と、ファミル。
「10層の敵は弱いが数が多い、今回の2人もそこで時間をくってしまった。大丈夫なのか?」
「すでに衛士達はゴブリンキング並みの強さ。自警団もジェネラル級の強さは持っていますから、こちらも数で勝負すれば、問題ありませんよ。いざという時はグレイ様配下のリッチとワイトを付ければ魔法でなんとかなります」
とキリンジ。
すでにそんなに強くなっていたのか。
それなら確かに、実戦で鍛えた方がより強くなるな。
それからは、1日交代で2人と衛士、自警団の実践訓練が始まった。
衛士、自警団にが訓練のときは、代わりにライカンスロープのガイア達、ダークエルフのアマーリア達に町の警備についてもらう。
俺達ハーデス自身も強くなる為に時間があれば、転移魔法でグランパレスまで行き、100層ダンジョンの51層から100層の周回を繰り返す。
もちろん配下の強化も忘れない。