35話 不死の森 其の2
500年前の冥王の拠点だったとういう不死の森に着いた俺達は驚愕の事実を知る。
なんと、この町に魔王と勇者が生まれていることがわかった。
魔族たちが此処の所騒がしいと言うのは、もしかして、何らかの方法で魔王が誕生したのを知って、魔王を探していたのではないか?
では、人間も勇者を探しているのか?
そんな話しは聞いた事はないが、もしかしたら、人間側も探しているのかも知れない。
これは、秘密にしといた方がいいな。
できたら、2人とも俺の配下に置けば、一番安全だが、受け入れていくれるか。
「2人に会えるか?」
「もちろんです、冥王様」
とファミル。
俺達は2人が居る場所にいどうする。
そこは花畑が広がる美しいばしょだった。
そこで子供たちが仲良く遊んでいた。
「リリス、アリス。こちらにおいで」
とファミルがいうと、子供たちが、
「あーファミル様だ。今日はどうしたの?また屋敷の掃除のお手伝い?」
「いつもありがとうね。今日はリリスとアリスに用があってね。みんなは遊んでなさい」
「はーい」
と、子供たちは遊びに戻って行く。
「私達に何か用ですか?ファミル様?」
と2人の少女が残った。
1人は黒上黒い瞳の女の子。
もう1人は金髪に青い瞳の女の子だ。
「このかたは、次代の冥王様になられるお方だ。2人とも挨拶なさい」
「初めまして、冥王様。私がリリスです」
と黒上の女の子。
「初めまして、冥王様。私がアリスです」
と金髪の女の子。
「初めまして、リリスとアリスだね、2人とも。おれはグレイという。二人は仲がいいのかな」
そう言うと2人は、手を繋ぎ、
「私たちは、親友です。ね、アリス」
「そう、私達は親友だもんね。リリス」
「2人とも手の甲をみせてくるかな?」
「この手のあざのこと?」
とリリス。
2人の手の甲には確かにあざのような、紋章があった。
左手の甲にあざがあるのが、リリス。
魔王だ。
右手の甲にあざがあるのが、アリス。
勇者だ。
2人はお互いを親友だと言う。
この冥王の拠点で何事もなく、過ごすことがこの2人にとっても世界にとってもいいだろう。
「ありがとう、もういいよ。みんなと遊んでおいで」
2人は子供たちの所に戻り遊び始めた。
「ファミル、あの2人は自分達のことを知っているのか?」
「いえ、教えていません。知っているのは、500年を生き延びた極わずかな者たちです」
「そうか。できれば、2人にはこのままここで安全に暮らしてもらいたい」
「ファミルは、先代の冥王に仕えていたのだろう?」
「はい、その通りです」
「不完全な冥王だが、ファミルにも俺の配下になって貰いたい。そうすれば念話が使えるし、いざという時に俺が転移魔法でここまで助けに来れる。それに非戦闘員を俺の亜空間に入れればより安心できる」
「空間魔法まで使えるのですか!? それに念話に亜空間。全員を入れれるほど、広いのですか?」
「いざとなれば、この町ごと、収納はできる。で、どうなんだ?」
「そこまでできるのであれば是非もありません、どうか、私も配下にお加えてください」
「ありがとう、ダークソウル……。これでファミルも俺の配下になった」
俺の闇の力がファミルに入っていく。
「覚醒していないにも関わらず、これほどの力が!? このファミル、必ずや、冥王様のお役に立ってみせます」
「ああ、期待している。だが、今のところは、この町を守ってくれればいい。特にあの2人は人間にも魔族にも渡してはいけない」
「御意にございます、先代からもそう命令されていました」
せっかく平和に暮らしているのだから、それをわざわざ壊す必要はない。
だが防備をもっと固めて置きたいのも事実。
幸いここは、誰もが避けていく不死の森。
番犬のケルベロスも配下にして、強化されている。
あとは、俺がバレないように王をごまかさなければならない。
何もなかったと言うべきか。
「冥王様、何者かがこの不死の森に侵入してきたようです」
「わかるのか?」
「私は、今も昔もここを任せられております。アンデッド以外が侵入すればわかります」
「人間か魔族かわかるか?」
「魔族領からの侵入ですので、おそらく魔族かと思われます」
「突破されそうか?」
「ご安心をここ500年で突破された事は1度もございません。やつらもアンデッドだらけのこの森にはいれば、探索もろくにできないはずです」
「そう願うよ、ケルベロスが突破された場合、町全体を俺の亜空間に収納する」
「どれぐらいの規模で攻めてきているか、分かるか?」
「ええ、だいたいは……。」
「どうした?」
「申し訳ありません。突破される可能性がでてきました。魔族の軍勢は本格的にこの森を探索するつもりのようです。敵の数は1000人規模の軍団です」
「まさかここに魔王がいることを知っているのか?」
「魔族の中にも長命な種族はいるので、もしかして冥王様の拠点に何かあると踏んでいるのかもしれません」
500年前の生き残りか、やっかいだな。
「俺は、すこしでも敵を足止めしてくる。ファミルは、町の人たちを町からだすな、もしくは出ている者がいたらすぐに呼び戻せ」
俺は、ファミルに指示をだすと、魔族たちの方へ急いでむかった。
森の中ではすでに戦闘音が聞こえている。
アンデッド達が有利になるように、魔法を使う。
「ダーククラウド」
魔法を多重展開して闇を大きく作り出す。
そして、俺の配下のアンデッド達をだす。
「一人も通すな」
ただ一言命令を下す。
俺は闇の中、魔族たちに斬りかかる。
今、魔族たちにあの町を発見されれば、リリスは魔王に仕立て上げられ、アリスは殺されるだろう。
まだ、幼いあの子達に、そんな事はさせない。
それに町の住人たちもきっとただではすまない。
人間は殺され、魔族たちも裏切り者として殺されるか、良くて牢獄行きになるかもしれない。
ここはまだ、誰にも知られては、いけない町だ。
「オオオオォォ」
俺は雄たけびを上げて、気合を入れなおす。
できるだけ、数を減らす!
1000人もの魔族の軍勢にこちらは俺の配下のブラック達と野良のアンデッドで森の中は埋め尽くされた状態だ。
敵もこの暗闇の中で早々身動きが取れていない、ましてや連携なんてとれやしない。
そこを突く。
どのぐらい時間がたったのだろう、どのくらい敵を減らせたのか、見当もつかないぐらい、俺は敵を切り伏せた。
ダーククラウドの効力が切れそうになる度に魔法を多重展開してこの森を覆った。
もういいころ合いかと俺は、ダーククラウドを解除する。
そこには、敵の死体が転がっていた。
だがまだ、敵は残っている。
「何!? 人間だと!? どうしてこのような場所にいるのだ!?」
俺はダークスケルトン召喚し、近くにある死体達にダークソウル多重展開してアンデッド作り出して敵を威嚇する。
「死霊術!? 貴様、ネクロマンサーか!?」
「貴様らには、ここで我が配下となってもらう」
いかにも悪役っぽくみせる必要がある。
1人も逃がす気はないが念の為に俺は狂った、ネクロマンサーを演じる。
「ちょうど、モンスターや人間の配下以外にも魔族が欲しかったところだ」
もはや敵の数も少ない。
これで終わらせてやる。
「狂人めが!これだから人間は好かんのだ!」
と、この部隊の指揮官だろう男が俺に言う。
「これより、不死の森の冥王探索を取りやめ、この狂ったネクロマンサーの討伐に切り替える」
「しかし、隊長、命令では冥王の拠点を探す任務です、ここは一旦引いたほうが……」
「黙れ、ここは魔族領にも近い。今奴を打たねばこれから先、我らが守るべき民に被害が及ぶ事は明白である。ここまで来ていると言う事は、人間の国からも追われているからに違いない」
よし、うまく騙されてくれた。