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2話 魔法との出会い

 光から出ると、知らぬ空間にいた。目が眩しい。

 あたりを見渡すが周りがぼやけてよく見えない。

 通り合えず息をしなければ生き苦しくて仕方ない。


 「おぎゃあ。おぎゃあ。」


 と何故だか声が聞こえる、それが自分の声だと気付くのにそう時間はかからなかった。

 暗闇の中で、一度生を受けると言われていたからなのか、僕はこの時確かに誕生した。

 目が見え始めたのはそれから数日してからだ。

 それまでは、全てぼやけてなすがままに世話をされていた。

 周りの言葉もわからなかったが、何故かある日突然彼ら彼女らの言葉を理解した。

 これも冥王としての能力なのだろうか、まだ死んではいないが。

 どうやら僕の名前は、グレイというみたいだ。

 今日も見知らぬ女性がグレイと呼んで、母乳を与えてくれる。

 この女性が、母親なのだろう。

 美しい女性だと思った。

 だが、赤ん坊の今の僕では、食欲を満たすのが最優先事項だ。


 飲み終えると母は、優しく僕を抱き上げて、背中を叩いてくれる。


 「ケプッ」

 

 とゲップをしてしばらく母に揺らされているとすぐに眠気がやって来た。

 俺はこうして、眠りにつく。

 それを何日も繰り返し、1年が過ぎた。


 その頃には、だいぶ、周囲の状況もわかって来ていた。

 父の名前はアルフレッド、母の名前はマリア。

 父は、母からアルと呼ばれている。

 どうやら、我が家は、貧しいなりにも食べて行けるだけの農家の家のようだ。

 兄弟はいない。僕が長男として生を受けた。


 1歳児にもなると、歩き回り始めることができた。

 まだまだ足取りは怪しいが。

 それでも必死に体を動かす。

 早めに運動をすることは、別に悪いことではないだろう。


 「グレイはやんちゃだな、すぐにどこかにいこうとする」


 と父は笑いながら俺を抱き上げる。

 

 「目が離せないから大変なのよこっちは」


 と困ったように言う母。

 

 俺は取り敢えず笑ってごまかす。

 二人は俺の笑顔で機嫌を取り戻す。

 今は、たどたどしいが、何となくパパ、ママと喋ることもできる。

 二人ともパパ、ママと言うだけで顔がにやけている。

 子供好きの両親の間に生まれてよかった。

 

 それから更に月日は流れ、俺は3歳になっていた。

 その頃には、村の異変にも気づいていた。子供が俺しかいないのだ。

 明らかに村人の数も少ない。

 だがそれでもみんなで協力して生きているみたいだった。

 ここは開拓村なのだろうか、男たちは、朝から木の伐採に励み、女たちが畑の面倒を見ている。

 俺も母に交じって畑仕事をただ見ている。


 「母さん、俺も手つだうよ?」


 「ありがと、じゃあグレイには雑草を抜いてもらおうかな」


 「わかった」


 僕は、雑草を抜くことに一生懸命にやってのけた。

 午前中の仕事が終わると、今度は僕は、お昼寝タイムがやってくる。

 昼食をとると、眠くて仕方ない。

 家で僕は目を覚ますと昼も過ぎて、夕方の手前だろうか、まだ日が傾き始めたころだ。

 その時間になると、僕は読み書きの練習のために、薬師のリリア婆さんの所に預けられる。

 これは、自発的に行っていることでもある。

 ある時、転んでケガをしたときに薬師のリリア婆さんが僕に薬草を使って治してくれた時があった。

 その時にリリア婆さんの家に入ったら本が置いてあったので、興味を示したら、それからリリア婆さんが僕の家庭教師になってくれている。

 リリア婆さんの家には薬草の本が多いが、これも生き残るために必要な事だ。


 「グレイは本当に頭がいいねぇ、将来は薬師にでもなるつもりかい?」


 「わかんないよ、ただ必要な知識だと思って」


 「そうかい、そういえば、魔法の本もあったから今度見してあげようか?」


 「魔法なんてあるの? それは何ができるの?」


 「そうさねぇ、村の外には魔獣が出てくることもあるから、そういった危険な魔獣退治に使ったり、薬草を使わないでも傷を治したりできるかねぇ。」


 「俺、それを覚えたい‼ 教えてよ、リリアばあちゃん」


 「おや、グレイは魔法にも興味があるんだね。でも、魔法は才能が無いと使えないんだよ。それに今日はもう遅いから、明日には見せてあげようかね。ほら、もうお帰り」


 魔法を覚えることができたなら更に生き延びる可能性が増える。

 あの闇の中の声の通りの人生なんて送ってやるもんか!

 僕は何としても生き残るんだ!


 次の日は、午前中から母に頼み込んでリリア婆さんのとこに行かしてもらった。


 「今日は朝からきたんだね。よっぽど魔法に興味があるんだねぇ。あたしが、若いころに買った生活魔法ってやつで、魔法使いの初歩の初歩だよ。結局あたしゃあ種火しか覚えられなかったけどね」


 「それでもいいよ!本を読んでもいい?」


 「ああ、構わないよ、分からないことがあれば、聞きなさい」


 魔法にはそれぞれ属性があるみたいで、火、水、土、風の4属性を基本とし、氷、雷、光、闇、の上位の属性が存在する。

 そしてそれ以外は無属性として扱われるらしい。

 つまり属性としては8つあり、それ以外の者は無属性に分類されることになる。

 人間の体には少なからず魔力が存在し、それぞれに適応した、魔法が使えるらしい。

 怪しいのは闇属性が使えそうな気がするが、生活魔法の中には載っていなかった。

 基本的に種火の魔法、飲み水をだす魔法、土属性は凡庸性が高いのか簡単な釜土を作りだしたりできるようだ。

 最後の風に関してはそよ風を吹かすぐらいの魔法だ。

 そよ風が何故生活魔法なのかはわからいが。

 あとは、無属性の中には、亜空間を作り出す魔法もあるみたいで、そこに物をしまっておけるとか。

 これは便利な魔法だが、使えるものは過去に数人いただけらしい。


 「えーと何々、魔法を使う為には自身の中に眠る魔力を呼び覚ますことが大切です」

 

 要はイメージが大切なんだな。

 難しい事が書かれていたので、何となくでいいだろう。


 「リリアばあちゃん、種火の魔法を見せて」


 「ああいいともさ、ほれ」


 と言うと、リリア婆さんの人差し指から火が出てきた、ろうそくの火のような小さなものだった。


 今度は俺が試し見てる、イメージだ、指先に魔力を集めて……。


 「シュポッ」


 と一瞬だけついてすぐに消えた。

 あれ、何が違うんだ?


 「こりゃ驚いた、初めてでそれだけできれば、大したもんだ。グレイには魔法の才能があるのかもしれないね」


 「でもリリアばあちゃんみたいにならなかったよ」


 「最初から上手くは誰もできないものさね、後はひたすら練習だね」


 う~ん、何が違うのだろうか?

 燃えるだけの魔力が足りてないのかもしれない。

 魔力ってどこに眠ってるんだろ?

 頭か、胸か腹かそれとも全身にめぐっているのだろうか?

 それぞれの部位に集中しながら体内の魔力を呼び起こす、起きろ!

 俺の魔力!

 すると体が熱くなってきた。

 よし、今なら行けるだろう。

 

 「種火」


 するとろうそくで灯したかのような明かりが出来上がった。

 

 「やった!できたよ、リリアばあちゃん!」


 「たった2回で成功させるなんてすごいよ、グレイ。これは、この村にも魔法使い様が誕生すのもちかいねぇ」


 俺は調子にのって、水の魔法にも挑戦し、これも成功した。

 この日の内に無属性以外の全ての生活魔法を覚えることができた。


 「1日で覚えるななんて、この子は才能の塊だよ」


 その日、家にリリアばあちゃんがきて、父さんと母さんに今日の出来事を話してくれた。


 「グレイが魔法を使えた!? まだ3歳なのに。聡明な子だとは思っていたが、まさかここまでとは」


 「すごいじゃない、これで将来も安泰ね」


 そして更に月日が流れて、俺は6歳になっていた。

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