1話 目覚め
ふっ、と意識が突然芽生えた。
あれっここはどこだ。
何も思い出せない。
声も出ない。
僕は誰だ。
あたり一面が暗闇になっていて全く分からない。
すると、一人の声が聞こえてきた。
「寂しい思いをしてきた、魂よ、次なる世では配下を作るがいい。そのための力をそなたに授けた。世界を支配するもよし、配下達とゆっくり暮らすのもよいだろう」
なにを言ってるんだ?
寂しい思いをしていた魂?
どういうことだ?
僕は、誰なんだ、そしてあなたは、何者なんだ?
「魂の色は美しいほどに暗黒になっておる。貴様には才能がある。世界を闇にする才能がある」
完璧に悪の親玉みたいな言い方をされている。
というか、声がでないから、一方的にしゃべられても困る。
「さあ、今一度、闇の住人達を復活させ、世界に闇の安寧をもたらせ。冥王としてな」
冥王って何の事だよ?
なんで自分から悪者にならなきゃいけないんだ。
「今のこの世界では、貴様を必要としている。闇の恐怖が必要なのだ。軍勢を作り、闇の住人達を率いて旅に出るのだ」
さっきから何を言ってるんだ、僕が闇の軍勢を率いて旅に出る!?
そんな事なんかできるわけがない。
こいつはきっと邪神かなんかだ。
僕の魂が暗黒に染まってなんかいない。
現に意識があるし、善悪の分別だってついている。
でも、最初に配下と共に暮らすのもいいって言ってたよな。
て事は、配下を作って、共に静かに暮らせば問題はないんじゃないか?
邪神の事は置いといて、好きに生きろと言ってるし、命令に従わなくてもいいのか?
どうも神様っぽいけど、やっぱり邪神の類だよなぁ。
何にも思い出せなし、よくわからんが。
「貴様が本来目覚めるためには、一度、生を受けて、再び死なねばならない。そこから貴様の旅は始まるのだ、こればかりは、避けられん。定めだ。いつどこで何が起こるかわからんが、それまでの生を謳歌せよ。我の最後の贈り物と思え」
おいおい、一度死ぬだって、冗談じゃない、おれは生き抜いてみせる。
せめて、自分の寿命ぐらいは全うしてやるわ!
それに冥王になるなんてまっぴらごめんだ。
そう、思っていると、突然目の前が開き、光が見え始めた。
どうやら、暗闇から僕は、でれるようだ。