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【クリスマス特別編2023】エリナの願望?

特別編という事でエリナ視点での小話を一つ。制服同士の二人が好きなんです(汗

ifという形で読んでください。

メリークリスマス!(*´ω`)ノ


 気が付くとエリナは学園の女子寮へといた。目を瞬きながら状況を確認する。

 確か昨夜はいつも通りアルヴィスと共に寝室で眠っていたはずだ。場所は王太子宮の寝室。だが今エリナがいるのは、見慣れ始めた寝室ではない。結婚する前にいた女子寮の自室だ。一体どういうことだろう。


「私は、一体どうしてここに?」


 戸惑っていると、ノックの音が届く。エリナが許可を出すと部屋の扉が開いた。そこから姿を見せたのはサラだ。学園でもサラは傍に居た。何ら不思議ではない。


「おはようございます、お嬢様」

「え、えぇおはよう」


 違和感のままに返答をすれば、サラが怪訝そうに首を傾げた。サラが「お嬢様」と呼んだ。王太子妃となってからは、「エリナ様」か「妃殿下」と呼んでいたはずだ。癖のためか、最初は「お嬢様」と呼ばれることは何度かあったけれど、今はそれも無くなった。それに、サラの様子からしてそれが当たり前といった風にも見える。一体どういうことなのだ。


「お嬢様、お着替えをされませんと遅れてしまいます」

「えっと……サラ、今日は何か予定があったかしら?」

「お嬢様⁉ どこかご気分でも悪いのですか? まさか、婚約者であるアルヴィス様との予定をお忘れとは……直ぐにでもお医者様に――」

「ちょ、ちょっと待って! 婚約者? アルヴィス様が? ジラルド様ではなくて?」


 もうわけがわからない。出て行こうとするサラの袖を引っ張って留めると、一体どうなっているのか。今の状況を知るために、サラを質問攻めにする。


「落ち着いてくださいませ。何か悪い夢でも見ていたのですか? 例の方とは昨年に婚約が解消されたではありませんか。その折、陛下よりアルヴィス公子様との婚約を薦められて、それを承諾したのはお嬢様ではございませんか?」

「婚約解消……公子様と婚約……アルヴィス様は公子様のままなのね」

「今時点ではというお話だったはずですよ。いずれは王家に戻られると。例の人は再教育もままならないと、お嬢様が仰っていたではありませんか……?」


 サラの言葉をそのまま信じると、つまり何らかの理由があってジラルドとの婚約がなくなり、王命に近い形でアルヴィスと婚約をしているということなのだろうか。しかし、エリナが学園に通っているということはアルヴィスは騎士として王城に務めているはずだ。


「アルヴィス様はお忙しいのではないのかしら……私の都合で」

「お嬢様、公子様も試験が近いので共に勉強をしようということではありませんでしたか? お嬢様だけの都合ではありませんけれど」

「試験? アルヴィス様も?」

「公子様は学年が上ですから、お嬢様の勉強を見ていただくのが正しいことかもしれませんけれど」


 つまりアルヴィスも学園生だということか。まだ状況がよくわからないけれど、とりあえずエリナはサラに従って制服に着替えて朝食を摂ると、待ち合わせ場所だという図書館へと向かった。

 学園の図書館は王城にある書庫に比べて小さいものの、それなりの広さと蔵書数を誇っている。尤も、学ぶ以外に娯楽関係の書物も多々あるらしい。エリナが学園生時代に何度も通った場所だ。


「アルヴィス様」

「時間通りだな、エリナ。おはよう」

「おはようございます」


 図書室の端にあるブースにアルヴィスは座っていた。その手には書物がある。エリナが来るよりずっと前からここにいたという証だ。

 思わずエリナはまじまじとアルヴィスの姿を確認した。エリナの知っているアルヴィスより、少しだけ幼い感じを受ける。制服を身に着けていることが、よりそう感じさせるのだろうか。座っていたアルヴィスが立ち上がり、エリナの傍まで来るとその手を引いた。そしてそのまま個室ブースがある場所まで移動する。

 婚約者同士である以上、個室に二人で入ったところで咎める人はいない。とはいえ、誰かと個室ブースを使うのはエリナにとって初めての経験なのだが。

 勉強を教わりながら、エリナは説明をするアルヴィスの横顔をずっと見つめていた。こんな風に婚約者と過ごす学園生活なんて、想像しこそすれ実現することはなかった。いつも友人と、もしくは一人で勉強をしていた。寂しくなかったと言えば嘘になる。これはもしかすると、エリナの願望が見せている夢なのではないだろうか。いや、きっとそうなのだろう。だって本当ならば同時に学園へ通っていたはずはないのだから。

 するとその視線に気が付いたのか、手を止めたアルヴィスと視線が合う。


「どうかしたのか?」

「あ、いえ……そのちょっと不思議な夢を見たのです。その……」


 まさかこっちが夢だなんてことは言えない。頬杖をついてこちらへ顔を向けたアルヴィス。エリナは見慣れていたはずなのに、ふいに頬が熱くなるのを感じた。


「夢? どんな?」

「えっと」


 微笑みかけながらアルヴィスが問いかけてくる。その表情はエリナの知る好きな顔の一つだ。ここならば誰に聞かれるわけでもない。アルヴィスならば何を言っても信じてくれる。エリナは口を開いた。


「アルヴィス様と結婚して、もうすぐ子どもが生まれてくるという夢です」

「……」

「でもアルヴィス様は無茶や無理ばかりしていて、私は心配でどうしようもなくて……」


 そうしてエリナは隣に座っているアルヴィスの顔に手を伸ばす。傷はない。当たり前だ。では肩はどうなのか。背中には残っているのか。そのまま顔を通り過ぎて、エリナはアルヴィスに抱き着くようにして、更に背中へと手を伸ばした。包帯の感触はないし、怪我をしている様子はない。当たり前だが、背中を見ることは出来ないのでここで確認することはできないのだけれど。 

 少し身体を離してアルヴィスともう一度視線を合わせる。すると、アルヴィスは困ったように笑った。


「エリナが見た俺は、それほどに無鉄砲なことをしていた?」

「はい。いつだってアルヴィス様は、ご自分で動かれてしまうから」

「そうか……悲しませたようならすまない」

「いえ、アルヴィス様が謝ることでは――」


 この夢の中でアルヴィスがやっていることではない。エリナが首を横に振れば、アルヴィスは頬に手を添えてきた。かと思えば、そのまま顔を近づけて来る。やがてアルヴィスの唇がエリナのそれに重なった。唇が離れても、まだ吐息が届く距離にアルヴィスの顔はある。真っ直ぐにエリナを射抜く水色の瞳。その中にエリナが映りこむ。


「エリナ……俺はここにいる。だから、大丈夫だ。俺はずっと傍に居る」

「アルヴィス様……はい」


 目を閉じれば、もう一度唇が重なる。これが夢でもいい。たとえ夢であっても、その言葉は夢じゃない。



*****


「あ……」


 ハッと気が付いた時、エリナは見慣れた寝室にいた。目の前には白いシャツ。どうやら抱きしめられたままだったらしい。アルヴィスはまだ寝入っている。ゆっくりと身体を起こせば、力が入っていない腕がほどけた。見下ろしてみると、アルヴィスの寝顔が良く見える。

 どんな夢を見ていたのかは覚えていないけれど、幸せだったような気もする。


「アルヴィス様、大好きです」


 眠るアルヴィスの頬にキスを贈ると、エリナはもう一度アルヴィスの腕の中へと入りこんだ。


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