6 ボケを提供してくれるカメラ
今日も今日とて部室にて、発芽先輩と花咲先輩が会話してポットでお湯を沸かせている間に僕は部室の中を見て回っていた。端の黒い金庫は見ないようにした。大変だった記憶がよみがえってくる。そんな中で一つの物を見つけた。
「カメラ? これも何か不便なのかな?」
なんとなく手に取ってみる。ごく普通のカメラだ。少なくとも見かけ上は。
「お、いいもの見つけたな。曽倉」
「花咲先輩。これがいいもの?」
カメラを見ていたら花咲先輩がこちらに声をかけてきた。なお、ポットからは離れていない。
「そうか、曽倉がいるから、もっと簡単にツーショットが撮れるのか。よし」
「ちょっとー欲望が漏れてますよ。よし、じゃないです」
「あのカメラには自動機能付いてないからねー」
「また微妙に不便な」
花咲先輩は相変わらず発芽先輩が絡むとダメになるみたいだ。で、やっぱりこのカメラも微妙に不便だ。まあでもいいかな、そう思いながらポットを挟んで会話する二人をパシャリ。
……思いっきりボケた。
いやいや、僕ってそんなに写真撮るの下手だったかな? そう思いながら二枚目行きますねーとごまかしつつパシャリ。
……やっぱりボケた。
「……ックックック」
「なんで笑ってるんですか、花咲先輩。やっぱり何か別の不便があるんですね! このカメラ!」
「そのカメラは一定確率でピンボケするカメラだよ!」
「発芽先輩いぃぃ! それはもはや不良品ですよ!」
「いや、アタシがしたときは一発で成功したからな。曽倉、お前持ってるよ」
「嬉しくないです!」
そんなカメラだったのか……これは確かに不便だ。想像以上に不便だ。悔しいのでしたり顔の花咲先輩と発芽先輩を撮ってみる。
「あ、今度はうまく撮れた」
「そりゃあそうだよ。三連続でボケることは無いようにしてるからね」
「そうなんですか?」
「うん。面白い話題になればいいけれど、何度もボケるようならストレスになるかなって思って」
「そういうところで、愛ちゃんのいい子さが現れるよな」
花咲先輩の言うとおりである。なんだかんだ、発芽先輩は人への嫌がらせのためではなく純粋に不便を楽しむために作っているみたいだからなぁ。
きっとこのカメラも、効率を求めて手ブレ補正とか自動機能を付けようと思えば付けれるんじゃないかな? でも、そうしない。それはこうやって何度も失敗することで会話になるし、自動機能がなければ別の人に頼むというコミュニケーションのもとになる。そうやって不便を楽しむことがすごいなって思う。
目の前で笑ってる発芽先輩を見てそうだったらいいなと思う。
それとは別で、いいようにネタにされっぱなしというのは癪である。花咲先輩にもやってもらおう。
「花咲先輩もせっかくなので撮ってみますか」
「それはアタシへの挑戦か? いいぞ。受けてたとう」
「あ、なら。私と後輩君のツーショットで!」
「発芽先輩!?」
そう言ってこちらに寄ってくる発芽先輩。ちょっと待ってください、何でくっつくんですか! ポットの間でお湯を沸かす構図でいいはずですよね!
発芽先輩がこういうところで距離が近いのはなんでなんだろう。無防備すぎて不安になるよ。
なお、花咲先輩は一回ボケてしまったみたいで、撮り直していた。自分だけではなかったみたいで安心した。
このカメラも新入部員とかがいればびっくりするものだよなぁ……あっ!
奴の事を忘れていた……花咲先輩の話を聞いて不安に思ったある懸念。わざわざ遠回りしてまで発芽先輩とかかわりを持とうとしたやつ。軽井 則義。奴がただのチャラ男ではなく、発芽先輩の能力を狙って来ていたとしたら?
花咲先輩に相談してみるか……。
なんか不穏ですが、シリアスにはなりません
それは置いといて、こんなカメラ欲しくないですか?