0 不便の発明家の過去
番外編です。本編の裏話とかを書いていきます。
書きたいように書いていく予定です。数は少ないけどあとちょっとだけよろしくお願いします。
私は発芽愛。普通じゃない女子高生ってことになるのかな? 発明が趣味……というより天才的な発明家という事になる。まあ、今ではおかしなものばかり作るようになってみんな愛想つかして去っていったみたいだけど。
でも、昔はそうじゃなかったんだ。褒めてもらいたくて、認められているようで……便利な物ばかり作ってきた。
そんな生活に疲れてしまったんだろうか、幼い私は小さな家出をしたんだ。今では家出というより迷子扱いになってるけど。その時の話、その時から不便を楽しむ心の余裕が出来たんだ。
あの頃の私は半分くらい死んでいたと言っても過言じゃなかったから、なんとなく気が付いていたのかもしれない、私じゃなくて私の発明品しか見られてないことに。
そんな私の思い出話。あいまいなところがあるけど、最後まで聞いてくれると嬉しいかな?
もう何も思いつかない、そう思いながら外に出かけて……幼かった私はそのまま逃げだした。逃げ場は公園だ。遊具がある公園があって、そのぞうさんの遊具の中に隠れようと最初から決めていた。
逃げ回るより隠れた方が見つかりにくいだろう、そう効率的に考えたに過ぎない。子供っぽくはないと思うけど効率的に考えて世の中の無駄を指摘して発明品にしていた私だ。こういう思考になるのも仕方がなかったのかもしれない。
「ひとり、かぁ」
無駄と思いながらもそんな独り言が漏れる。ああ、こんなことしてたらこの場所がばれてしまう。運動能力で劣っている私はなるべく無駄を避けて逃げないといけないのに……
そんなことを幼い私が考えているときだった。
「ねえ! そんなところで何してるの?」
ばれた! そう思って上を向いた私の目に映ったのはそのときの私と同じくらいに幼い男の子だった。
まだ、私は探されてないのかな? それともバレてないだけ? そう思いながらその男の子に問いかける。
「きみは、だれ?」
「かい! っていうんだ! きみは?」
「えっと、はつめ。はつめ あい」
「ふーん。あいちゃんか」
そう言いながら遊具の中に降りてくる少年。無駄に声が大きくて、少しうるさいけれど、久しぶりに名前を呼ばれた、そんな風に思った。
「こんなところでなにしてるの?」
「かくれてる、きみはなんでこっちにきたの?」
「ぼくはなんとなく! かくれんぼかな?」
「……」
あまりにも馬鹿らしい無駄に呆れて、
「あいちゃんはさみしくないの?」
「なんで?」
「ひとりぼっちだから」
「……」
よく分からない理屈に戸惑って、
「ひとりならいっしょにいるくらいできるよ!」
「……ありがとう」
「うん! どういたしまして!」
子供らしい笑顔にいつの間にかほだされてしまった。
よく考えれば同年代の子供らしい子供にあったのはそれが初めてだったのかもしれない。だからこそ子供特有の雰囲気ですぐに仲良くなれたのかもしれない。
それから少し自分の話をした。便利になるような発明をしてる事。周りに不便ばかりあるように見える事、発明ばかり期待されてる事……
なんでかこの男の子なら聞いてくれるんじゃないかって、吐き出すようにわめいてた。そんな記憶だけがある。
「うーん。よくわからない」
聞いた後でその子が言ったのはそんな年相応の言葉だった。もっと違うことを言ってたのかもしれない。そもそも幼いころのことなんだから詳細を覚えている方がおかしい。
だけど、その後に言ってくれた言葉だけはよく覚えている。
「でも、あいちゃんがつらいならべんりってよくないものなのかも」
「えっ?」
「べんりのはんたいってなんだろ?」
その時は本当に何を言ってるのかわからなかったなぁ。便利が良くないものなんて急に言い出すんだから。
「ふ、ふべん、かな?」
「よし! それじゃあ、ふべんをはつめいしようよ! そしたらたのしくなれるかも!」
今の私を作るそのきっかけの言葉だった。
子供の嫌なことの反対をしようなんて言う今思えばバカみたいな発想。それでも楽しそうだと思ったんだ。
「きょうからあいちゃんはふべんのはつめいかだ!」
「……うん!」
気が付けば泣きながらうなずいてた。
これが、私が不便の発明家になった訳。その男の子と再会して一目惚れするなんて、その地域から引っ越した私には到底予測できなかったんだ。




