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4/30(金)『青い葉は未だ春の風を吹かせてる』

 入学してすぐの事だった。僕は運命の人に出会った。

 桜の木の下にいる彼女はとても綺麗で僕なんかが近寄ってもいい人間じゃない事を直ぐ様理解した。

 それでも僕は

 「すす、好きです。僕と付き合ってください」

 桜の木の下で告白をした。

 「うん...、いいよ」

 その時、奇跡が起きた。

◇◇◇◇

4月30日金曜日

 「おはよう、青葉(あおば)さん」

 学校の玄関口にて私に声を掛けてきた男子がいた。

 彼の名前は新谷(しんたに)優斗(ゆうと)。身長は私より高い程度で弱気な感じの男の子だ。

 「おはよう、新谷君」

 「青葉さん。今日、僕と一緒に...帰らない?」

 「え?」

 「あの...、その嫌ならいいんだ

 でも、最近、事件とか多いからその...」

 「いいよ。一緒に帰ろ」

 「いいの?」

 「約束だよ」

 彼の下心は丸見えだった。それでも私を気にかけてくれる事は嬉しかった。

 それが青春という物だと思った。人と人との繋がり、好きだと思った相手とこうして繋がっている今の現状を私は好ましく思っている。

 弱気ではあるものの優しさのある彼と別れ互いに別々の教室に入る。お互いに一年生ではあるが、クラスは別々だ。

 教室に入って、真っ先に

 「よう、立木(たちき)

 と聞こえてくる筈の声は今日は聞けなかった。

 私の幼馴染みは未だに私の下の名前を呼んでくれない。酷い時なんかはお前呼ばわりだ。

 結局、彼は学校には来なかった。

 一時限目が始まって教科書を開く。教科書を開きながら思う。

 お見舞い...。

 ちょうど隣の家なんだから、行ってみようかな。

 私は気になっていた。担任の教員によると彼は風邪で休んでいるらしい。

 お見舞いなんてお節介かもしれないけど、私としては気になってしまう。

 「青葉、今日は何か落ち着きがないけどどうかしたの?」

 「ううん、何でもない」

 高校に進学して私にも新しい友達が出来た。だから、今は互いに顔を合わせたり、会話したりするのは少ない。

 言葉を交わすのは朝の挨拶程度。

 いや、小学校を卒業する頃には互いに別々に遊んでたっけ?

 隣の家同士、たまに顔を合わせる事はあるけど...、今は何だか素っ気ない態度を取ってしまう。

 「彼氏と上手くいってなかったりする?」

 「ううん。別にそんな事ないよ」

 新谷君との仲は悪くはない...と思う。

 彼とはよく顔を合わせたり、昼食は一緒に取ったりする。

 何気ない話題に花を咲かせたりする。

 「そう?

 青葉、今日なんか落ち着きがないんだよねぇ

 何て言うか、必要不可欠な物が今日は無くて少し困惑してる感じ」

 「何、それ

 そんな事ないよ」

 「今日の青葉は不調だよ、絶対に

 だから無理はしないように」

 「はいはい」

 「立木。ちょっとこの書類、運ぶの手伝ってくれないか?」

 先生からのオーダーが入った。

 「分かりました」

 誰かの手伝いをするのは好きだ。困っている人に手を差し伸ばすのも好きだ。

 だからか、知らないけれど体が思わず動いてしまう。

 「ちょっと」

 行こうとすると、首根っこを掴むように背後から服を引っ張られた。

 「あの~、青葉さーん。人の話、聞いてた?」

 「聞いてたけど?」

 「先生~、立木さん

 ちょっと体調悪いみたいなんで、私がその書類運ぶの手伝います」

 「ん?そうか? 

 悪いな、鈴木」

 そう言って彼女はさっさと先生の下へと行ってしまった。

 彼女の名前は鈴木涼子。クラスで一番、仲の良いクラスメイトだ。

 涼子は明るい性格で何かと私を気にかけてくれる友人だ。

 昼休憩、屋上で私は彼の家に電話をかけた。彼の携帯電話の番号は持っていない為、かける事は出来ない。

 「もしもし」

 「もしかして、青葉ちゃん?」

 聞こえてきたのは彼の母親の声だった。

 「はい、そうです」

 「そう......、久し振りね」

 彼の母親の声を聞くのは本当に久し振りだった。もう何年も聞いてない。

 それ程に彼と彼の家族とは疎遠になっていた。

 「はい、久し振りです

 あの......」

 「あの子なら、大丈夫よ......。大丈夫だから」

 まるで私の言いたい事を知っているかのように先回りした発言だった。それと同時に何かを隠しているような感じもした。

 「それならいいんですが...」

 「あの子、ちょっとぶっきらぼうな所があるけど学校でちゃんとやっていけそう?」

 彼の母親は話題を変えるように私へと質問をした。

 「友達は少ないみたいだけど、ちゃんと授業を受けてるみたいだし、悪い印象はないかな」

 「そう、それならいいんだけど......

 心配させて、ごめんなさいね

 息子の事、よろしくね

 その...私、忙しいから」

 「すみません。急に電話してしまって」

 「ううん、いいの。また何かあったら電話してね」

 とこの電話は切れてしまった。

 昔まではよく合わせていた顔は疎遠になったけれど、顔はほぼ毎日合わせていた。

 彼の顔を見ないと落ち着かないなんて事は今までなかった。今までだって風邪で休んでしまったという事ぐらいはあった。

 だけど、こういう事なんてなかった。

 私はどうしてしまったのだろうか。

 彼を振ってしまったから?

 「青葉さん?」

 声を掛けてきたのは新谷君だった。

 「新谷君、いらっしゃい」

 「うん

 待たせちゃった?」

 「ううん、待ってないよ」

 「大丈夫?」

 「...?

 大丈夫だけど...?」

 「真剣な顔して、電話してたから」

 「...あれは何でもないの。ちょっと、友達が風邪で休んじゃって」

 「そうなんだ

 友達って中学とかの?」

 「うん、まぁそうなんだけど」

 「何か気になる事がある?」

 「ううん、やっぱり大丈夫

 明日からゴールデンウィークなんだし、心配はいらないと思う」

 そう、明日からゴールデンウィークだ。それなら彼だって体を休めれると思う。

 「気になるんだったら行ってみたら?

 行きづらいのなら、僕もついていくよ?」

 と新谷君はそう言うけれど、

 「ううん、大丈夫

 それに今日は...」

 一緒に帰るという事はちょっとしたデートのような物。

 だから、新谷君に気を使わせるというのも少し違う。

 それに来ない方がいい。あんな事があった後なのだから、そのせいで彼は来てないのかもしれない。それなら、それで私が行くのも違うような気がする。

 考えなしで行って、余計に彼を傷付けるかもしれない。

 彼は何でもないように振る舞っていたけれど、それでもあの背中が忘れられない。

◇◇◇◇

 新たな契約者とその契約された悪魔に出会した後、俺達は本拠である交番に戻っていた。

 「そうか

 それは厄介だな」

 金澤さんはその報告を北上さんと樋山さんへ、済ませる。

 「五十嵐静治。それが本名かどうかなんて分かりませんが、彼以外にもこの町に潜んでる考えた方がいいですね」

 「まぁ、無事に帰ってきてくれて良かった」

 「.........北上さん、教えてもらってもいいですか?」

 「急にどうしたんだ?斎藤君」

 「俺、お荷物みたいなんで何か役に立ちたいですよ」

 「まぁ、そりゃ...そうだな

 だがな、危ない事は君にはさせてやれないぞ

 君は一応、一般市民なんだからな」

 「それは別にいいんです

 俺は目的は...赤の他人の為じゃなくて、アイツの為なんで」

 「斎藤君、君は何もしなくていい

 君は自ら危険な事に首を突っ込まなくていいのよ」

 と金澤さんは言う。

 「別に危険な事に首を突っ込もうなんて気はないですよ。死ぬなんて真っ平ごめんなんで

 俺が聞きたいのは『(イーグル)』が殺した人物とその情報ですよ

 それとも相手が次、誰を殺すかなんて分かっているですか?分かっているんだったら、それならそれでいいですよ

 だけど、もしもアイツが殺されたんだったら俺はアンタらを絶対に許さない」

 自然と殺意を含んで自身の口から言葉を放つ。

 「何だ、そういう事か」

 北上さんから軽い返事が返ってくる。

 「確かに俺にはどういう法則で殺人に及んでるのかは分からない

 樋山さん、どう思う」

 「確かに一ヶ月おきと被害者の全員の名前に色が入ってる程度で、どういう法則で殺人に及んでいるのか私には分かりません」

 「じゃあ、金澤。お前はどうだ?」

 「私も色が入った名前程度しか分かりません......」

 「だそうだ

 俺は教えても構わないと思うけど、どう思う」

 「私は一般人である斎藤君に教えるのは反対です

 彼が何かの間違いを犯す可能性だってあるかもしれない

 彼の人生を態々無下にする必要はないと思います」

 と金澤さんはそう答える。

 確かにそうだ。だけれども、俺は何としてもその犯罪者を取っ捕まえなければならない。

 アイツが殺されないとしてもだ。

 「私は賛成です」

 「樋山さん!」

 意外な返答に金澤さんは声を上げてしまう。

 「金澤さん、頑なに彼を否定してては間違いを起こすかもしれない

 だから、私はちゃんとした対応が必要だと思うんだ

 教える事に関して、賛成だけどそれは最低限の情報だけ

 斎藤君が知りたいと思う情報が教えれる物なら教えたらいいし、駄目な物なら教えない

 それで斎藤君が納得がいくのなら、私はそれでいいと思う」

 「成る程な...

 俺は樋山さんの意見に賛成する」

 「先輩......」

 「金澤

 お前が斎藤君の事を心配する気持ちも分かるが、今は斎藤君の気持ちを尊重させてあげた方がいい

 彼だって契約者の一人なんだしな」

 「分かりました。ですが、教えれる事は最低限の事だけですよ」

 「それで斎藤君、君は何から知りたい」

 「そうですね...。今回、殺された被害者の名前......、それが駄目なら被害者の名前に入っている色を教えてほしい」

 「そうだな。被害者の名前は教えてあげれない。これはマスコミにも教えてない情報だからな

 殺された被害者の名前の共通点はさっきも話した通り、色だ

 最初に殺されたのは黄色の順から黒、白、赤だ

 今までに殺された被害者はこの四人

 他にも聞きたい事はあるか?」

 流石に色だけじゃ分からない。この四つの色の共通点はまだ俺には分からない。

 それでも相手が色を選んで殺人に及んでいる。それは相手の気紛れか、それとも何らかの法則で殺人ゲームを楽しんでいるのか。どちらにしてもたちが悪いのは間違いない。

 「それじゃあ、被害者が殺された時間を教えてください」

 「黄色は7:00頃、黒は0:00頃、白は21:00頃、赤は18:00頃だよ」

 と今度は樋山さんが答えてくれた。

 色と時刻が何らかの関係があるかもしれないと考えたけれど、俺みたいな素人でよく分からなかった。

 もしかしたら、時間は関係ないのかもしれない。

 「被害者が殺害された場所とかは教えてもらっていいですか?」

 「それは難しいな......」

 「そうですか......」

 「どうだ?斎藤君

 分かりそうか?」

 「いいえ、全然分からないです」

 何一つ、分からない。

 そう思い、ふと被害者の殺害された時刻を確認する為に時計を見る。

 時計の数字に色を当てはめる。

 うーん?何か違和感があるような、ないような...。

 「因みに相手の武器は銃...、スナイパーですよね?」

 「そうね......、相手の武器はスナイパーよ」

 「どの方角で射殺されたか分かりますか」

 「何の関係があるの?」

 「法則があるんだったら、関係がありますよ」

 「そう......、分かったわ

 黄色は頭頂部を撃たれて死亡

 黒は額を撃たれて死亡

 白は左頭部を撃たれて死亡

 赤は右頭部を撃たれて死亡

 どの方角で彼が射撃したのかは調べてみないと分からないわ」

 「資料はこっちにはありませんからね」

 資料がないか。それじゃあ、推理しようがないぞ。

 「それなら、知り合いに掛け合ってやるよ。それぐらいなら教えてくれるだろ」

 北上さんが携帯電話を取り出し、外へと出た。

 そう言えば、時刻で方角とかを表したりする事もあるよな。それに干支で時間や方角を表したりもする。

 そう考えるのなら、12:00の方角は北で、9:00の方角は西、6:00の方角は南だ。

 だけど、7:00はよく分からない。

 それでも方角的に残っているのは3:00の東の方角だ。

 「7:00を除いて、時計と方角を合わせてみると......」

 四神(しじん)......。

 ただ何となく、思い出した。

 12:00の方向は子の刻で北は玄武。9:00の方向は酉の刻で西は白虎。6:00の方向は午の刻で南は朱雀。そして、最後に3:00の方向は卯の刻で東の青龍。

 じゃあ、次に狙われる色は

 「緑だ」

 「何か共通点でもあった?」

 金澤は俺の発言に反応した。

 「見付けましたよ

 『鷹』が殺人に及ぶ時間と方角、そして、名前に入っている色は共通点があります

 それには中国の四神が関係している」

 「四神?」

 「そうです。四神ですよ

 名前ぐらいは聞いた事はあるんじゃないですか?

 北を守護する玄武、西を守護する白虎、南を守護する朱雀、東を守護する青龍

 これらの神獣は東西南北を守護されているとされています

 そして、それら神獣の名前には色が入っている」

 「確か、玄武の玄は黒だったよな...

 それじゃあ、白虎は白で朱雀は赤、青龍は青......

 確かに方角と照らし合わせれるし、それに時刻とかにも照らし合わせようと思えば、しっかり一致させれる...」

 と樋山さんは納得したのか、口に出して照らし合わせていく。

 「斎藤君。それじゃあ、君はどの時刻に誰が狙われているのか分かってるの?」

 「まぁ...

 おそらく、東からの方角から狙いを定められ、3:00か15:00の時刻に射殺される

 狙われる名前は緑が入った名前の人物。もしくは青が入った名前の人物

 流石に日にちは分かんないですけど......」

 「私には四神がどうのとか、東どうだかとか、そういうのは分からない

 だけど、ちゃんと根拠があるのよね?」

 金澤の問いに俺は頷く。

 そして、確実に狙われる人間が俺の身近に一人いる。それはすこぶるまずい事であり、決してあってはいけない事だ。

 「ああ...。金澤さん、まだ殺人予告はまだ来てないのか...?」

 「ええ、まだ来てないわ」

 「そんじゃあ、殺人予告が来る前に」

 「そうね...」

 「どの方角で被害者が射殺されたのか分かったぞ」

 そう言って北上さんが戻ってきた。

 その北上さんの報告を聞いて、俺の推理も説明した。

 「成る程な。確かにその推理は面白いぐらい当てはまるが

 最初に殺された黄色は当てはまってないぞ」

 「最初に殺されたのは見せしめみたいなものですよ

 これは悪戯とかじゃなくて、ちゃんと殺しにきてるんだぞっていう

 それに一応、その黄色にもちゃんと意味がありますよ

 黄色を指しているのは黄龍。四神の真ん中に据えられる四神の長

 だから、時刻なんて関係なかった。それに射殺の方角だって真上から行われた

 そう考えれば辻褄が合うんじゃないですか?」

 「......はぁ、俺には考え付かない事をよく思い付くな

 そういう風にでしか思えなくなってきたぞ」

 「そんな事より、お願いがあります

 俺にとって大切な人を」

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