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4/29(木) 昭和の日『刃と弾丸。そして、殺し』

4月29日木曜日、昭和の日(祝日)

 翌日の祝日、木曜日の朝。時刻は7:30

 母親が真っ青の顔で静かにこう言った。

 「忍、母さんと一緒に警察署まで行こう」

 真っ青で真顔でそう言われた。

 それは怒った時の母親の顔よりも、別の意味で迫力のある物だったと思う。

 警察署に着いて、着いた後も母親とは口を利かず、冷たい空気の中を行動した。

 「えっと、斎藤綾子さんですね」

 「はい」

 警察の人の質問に対して、母親は静かにそう答えた。

 「それでそちらが息子さんの斎藤忍君」

 「はい、そうです」

 その質問に対しても母親が返答する。

 「あの......、息子が何かやらかしてしまったんでしょうか?」

 警察署での事情聴衆はお互いに初めての事であり、母親自身、不安の渦中にいるのだ。

 心配するのは親として当たり前の事だと言える。

 「やらかした...というのは違いますよ

 まぁ、確かにやらかしたというのでならばそうなんでしょうけど

 彼、忍君は巻き込まれた。彼自身は被害者なんですよ」

 警察は落ち着いた様子で母親の質問に対して返答する。

 「巻き込まれた?忍が被害者?」

 何かをやらかしたんじゃないのかという母親の不安は警察の意外な返答に困惑へと変わってしまった。

 「忍君。私は昨日の事について話を聞きたいんだ」

 俺の顔を見ながら、相手はそう言った。

 「昨日の事っていうのはどういう状況での事ですか?」

 おそらく、あの時の事だという事は検討が付いている。

 それでも一応、聞いておく事にした。

 「そうだね、昨日の事というより昨日の帰りの電車を待ってた時間に起きた事を話してほしい」

 やはりあの時の事だった。

 「あれは俺にも何が何だか分かりません」

 「構わないよ。私はそれを知っておきたい。今後の為にも」

 「分かりました

 俺はあの時、一人のメイド服の格好をした女性に殺されかけました」

 「殺され...かけた?」

 俺の言葉を聞いて母親は驚きを隠せず、口から言葉が飛び出した。

 「三つ編みのおさげに眼鏡をかけたメイド服を着た女性に機関銃?みたいのを向けられた」

 「それでも君は生きている。それはどうしてかな?」

 「それは彼女が身を呈して、守って...くれたからだと思います」

 「その彼女というのは?」

 「分かりません。彼女もメイド服を着ていたし、消えてしまったから」

 「そうか......」

 「あの......、これは」

 母親自身、何を話しているのか分からず、思わず口を挟む。

 「お母さん、私からは胡散臭いオカルト染みた事しか言えません

 まずはそれを証明する為に息子さんの協力を必要とします

 それとこれから起きる事に対して覚悟を持って受け止めて下さい」

 「............」

 母親は返答せず、ただ警察を見ているだけだった。

 「忍君

 彼女を呼び出す方法を教えよう」

 「呼び出す...方法?」

 「ああ、彼女を呼び出す方法だ

 君も彼女ともう一度出会えば思い出す。彼女を買った事を」

 「彼女を買った......」

 何だろう、『買った』という言葉に何だか妙な違和感を感じる。

 それがどうしてか分からないが、右手の人差し指が妙に騒いでいるような気がした。

 「たった一言、『現れろ』。そう心の底からそう命ずればその彼女は現れる」

 俺は宗教の信者ではない。神様という存在を絶対いるとは信じていないし、こういうオカルト染みた物なんて胡散臭くて信じられない。

 だが、今の俺はこの話に関しては少し信用してしまいそうだ。

 少なからず、この目で見たあれは非現実的ではあるが起こってしまった事実なのだ。

 だから、俺は

 「あらわ」

 れろ、と最後まで言い切る前にその彼女は姿を現した。

 髪型はミディアムで左目に眼帯をして、左腕と右足は黒い機械仕掛けの義肢でシンプルなメイド服を着用した少女が俺の横に出現した。

 「......」

 絶句。まだ呼び出していないのにも関わらず、彼女は出現してしまった。

 それと同時に俺は思い出した。この彼女の姿は覚えている。俺が9万円でメイドとして買ったのだ。

 「夢じゃ...なかった?」

 呆然と彼女を見る。正直、驚きを隠せずにいた。

 だが、すぐに正気に戻る。彼女はあの眼鏡のメイドから命を救ってくれた。

 あの時、何故、この事を思い出せなかったのか分からない。

 「あなたは...誰?

 さっきまでここにいなかったわよね...?」

 急に現れた彼女に対して、母親は怯えてしまっている。

 この現状を知らないのだから、正常な反応だ。

 突然、現れた者は恐怖でしかない。

 それが自身の理解の外の者であれば尚更だ。

 「お母さん、それと忍君、落ち着いて話を聞いて下さい

 彼女は悪魔です」

 警察の口から出た言葉がそれだ。

 夢の中であの男もそう言っていた。

 彼女は元人間の悪魔で主食は魂。

 「あく...ま?」

 母親は困惑の色を隠せず、呆然と警察の顔を見ていた。

 この現状がまるで嘘のようで、未だ夢の中だと思いたいような現状なのだろう。

 だが、これは現実で彼女自身、この場に現在存在する。

 「忍君、思い出したかい?」

 警官が俺に尋ねる。それに対して俺は頷いた。

 「俺は彼女を9万円で買いました」

 正直に答える。これは嘘ではなく、紛れもない真実だ。

 「夢の中で俺は彼女を購入した

 夢だから、関係ないって思ってたけど......

 まさか、夢が夢じゃなかったなんて考えもしなかった」

 「まぁ、彼女が悪魔かどうかなんて事は問題じゃない。問題なのはそこに彼女がいて、忍君は彼女にとって従って奉仕すべき存在になってしまっている

 彼女の魂は縛られている。だから、忍君に対して害を成す事はない

 そして、一番の問題は忍君、君だ」

 「俺?」

 俺の何が問題なのか、それが何なのか分からない。

 寧ろ、警察の口から悪魔という言葉が出る自体おかしな話だ。それでどうしてそんな話を知っているのか。

 これは俺の推測でしかないが、そういう関係者が警察の中にいる。そう考えれば、こういう事が起こったとしても対処が出来るし、俺自身も納得がいく。  

 「君は彼女に対しての絶対的な命令特権を持っている

 彼女を購入する時に彼女を隷属するという形で契約してしまっている

 念じるように彼女に対して命令を下せば、彼女は何でも言う事を聞く

 メイドというよりは奴隷に近い

 それで君も見ただろう。彼女と彼女の戦いを」

 俺は頷きで返答を返す。

 「君は絶対的な命令を下せる

 それは犯罪を引き起こす危険性を持っている

 見た感じ君が犯罪を犯すような人間には見えない。だけど、そういう可能性を持ってしまっている

 だから、君の身柄はこっちで預かる」

 「預かるって...、忍はまだ何もしてないんですよね......。何もしてないのに」

 警官の言葉に母親は俺よりも早く反応した。

 「私の息子はまだ犯罪に手を染めていません。それなのに身柄を拘束するなんて納得いきません」

 母親は警官一人に対して、自身の意見を堂々と述べる。

 「お母さんが言う事もごもっともです

 ですが、人が死ぬ可能性が否定出来ない今、忍君は私達警察が預かるべきです

 それに忍君だけじゃないです。悪魔を購入したという男性は他にもいます

 この一年で犯罪が増えてきている。その大抵の犯罪を起こしているのはおそらくは同一人物で悪魔を購入している人間だとこちらは推測しています

 あなたの息子さんだって、犯罪に巻き込まれるかもしれないんですよ

 だからこそ、息子さんの身柄はこっちで預かります」

 ズドドドドドドド

 この部屋の外で激しい音がした。それは聞き覚えるのある銃声だった。

 この銃声音は不安しか駆り立てられない。

 「.........」

 もしかすると、物好きな誰かが機関銃でも持ち込んでいて、どこかの誰かが誤発させてしまっているのかもしれない。

 いや......、それはそれで問題だし、いかに警察だとはいえ、法的にそんな物持ってていいのだろうか。

 ここは日本だ。平和ボケをしているこの国でそういう物があるとは思えない。

 「...斎藤さん、二人はここにいて下さい

 決してここを動かないで下さい」

 さっきまで話をしていた警察はそう静かに俺たちへ向かって指示を出した。

 「あの...」

 母親が声を掛けようとしたが、手に拳銃を持って部屋の扉の前まで向かった。

 やはり、外で何かが起こっているのだろう。

 扉の横に立ち、構えたその時だった。

 その扉の前で

 ズドドドドドドド

 ととんでもない銃声が鳴り響いた。それと同時に鉄の扉が変形するも穴が開かない。どうやら、この扉に対して銃弾を撃ったらしい。

 「あー、マジウザい」

 そう言って、ガンガンと扉を蹴る。

 声は女だった。この声は知っている。知っている以上、扉を蹴っている張本人は分かってしまう。

 おそらく、彼女なのだろう。

 「お前さぁー、馬鹿なの」

 「ご主人様、ひっどーい

 こんな可愛い女の子に言う事~?」

 などと男女の話し声が聞こえた。どうやら、相手側もご主人様同伴で攻め込んできているみたいだ。

 「なら、さっさと焼き溶かせよ

 そっちの方が早いだろ?」

 「あ、そっか」

 扉は鉄で出来ている。高温の炎で焼けばどうなるかなんて目に見えている。

 そう考えて一番やばいのは扉の近くで身構えている警官だ。

 そう思っていると、扉は赤くなり、一気に溶かされ、奴等が入ってきた。

 「あっれ~、少年君のメイドちゃん、まだ死んでなかったんだ~

 悪運いいんだぁ~」

 現れたのは悪意に満ちた満面の笑みを浮かべる三つ編みの眼鏡のメイドと金髪にピアスをした柄の悪い男性だった。

 「何だよ、お前、ちゃんと止めを刺してなかったのかよ

 じゃあ、今度はちゃんと殺せよ」

 「アイアイサー」

 「その前にそこの警官を」

 と男が言い切る前に彼女は動き出した。

 狙いは金髪の男だったようで、いつの間にか握っていた刀で斬りかかる。

 が、しかし、

 「な~に、人のご主人様に手ぇ~を出してる訳ぇ」

 その刀は届かず、眼鏡メイドは彼女の刀をナイフで受け止めた。

 「へぇ、早いな

 ねぇ、君、そこの男なんか裏切ってさ

 こっちに来なよ。そうすれば、最高に楽しい事して、気持ちいい事して、有意義に過ごせちゃえるぜ」

 「あー......」

 彼女の口から出た声はその一言ではあるものの、肯定なのか否定なのか定かではなかった。

 バン

 一つの銃声が鳴ったと途端に彼女は後ろに飛んだ。

 撃ったのは警官ではあるが当たってはないようだ。

 「あっぶねぇなぁ。死んだら、どうしてくれるんだよ」

 と苛立った感じで男は悪態を吐くようにそう言った。

 「やっぱ、邪魔くれだわ。殺せ」

 と言った瞬間に眼鏡メイドの手にはナイフではなく機関銃がいつの間にか持ち変わっていた。

 その機関銃がその警官の方に向いた瞬間に彼女はまたもや突撃する。

 その動きは昨日、見たような物凄いスピードで目にも止まらぬ早さで金髪の男に襲い掛かる。

 それと同時に機関銃特有の激しい銃撃音が聞こえた。

 命中したのは警官ではなく、敵に襲い掛かった彼女だった。

 機関銃から連射される弾丸が彼女へ命中し、蜂の巣の状態。それでも彼女は倒れず、ただひたすらに弾丸を受けて、ただそこに立っていた。

 機関銃の銃声が鳴り止んだ後、彼女は足を止めていた。

 「ピュ~、タフだね~

 ご主人様、殺せると思う?コイツ」

 「無理

 でもさぁー、コイツ仲間に入れたら、俺ら最強じゃね?」

 チャリン

 何かが落ちる音がした。おそらく、それは体内に撃ち込まれた弾丸を排出している音だろう。

 「あー......」

 体の中に埋まっている弾丸が排出し終える前に彼女は動き出した。

 握っている刀を目の前に立っている金髪の男に向かって斬りかかる。

 しかしなから、眼鏡のメイドに遮られる。

 ナイフで受け止められるが、即座に刀を翻し、今度は彼女の顔面に向かって突きを繰り出した。

 その突きを捌き、どうにか直撃を免れたと思った瞬間に

 バン

 という銃声が鳴り響いた。撃ったのは警官ではなく、彼女だった。

 敵の眼鏡メイドに額を命中し

 「え?」

 突如の事に反応が出来ず、死ぬ間際に拍子抜けのような声が出てしまった。

 そして、悪魔である彼女は後ろへと倒れて動かない。

 動かなくなった彼女は黄金の光の粒となり、空中に舞うように消失してしまった。

 「おい......」

 そんな現状で男は呆然と立ち尽くしていた。

 その男を彼女は見て、近寄る。義肢ではない右手を前に出し、手を差し伸べているように見える。

 「......俺と組みたいか?いいぜ、役立たずはお役御免。今日から俺とコンビだ

 最初の仕事として───」

 しかしながら、彼女は男の言葉なんて聞いてなかった。彼女が手を伸ばしたのは男の胸で、触れているのは相手の胸である。

 「おい......、何を」

 男は戸惑っている。彼女が自身の言う事を聞かない事に。

 「!?

 待てよ。俺はまだ死にたくない。だから、殺さな」

 いでくれと言い切る前に

 「あがっ」

 大きく空気を吸うように苦しむように床へと倒れた。

 髪は一気に白くなり、顔は青白くなっていた。

 彼女は空気に同化するかのように、透明となり、姿を消した。

 「先輩!?」

 それと同時にこの部屋に遅れて入ってきた者がいた。

 「大丈夫ですか!!」

 服装からして警察の人間なのは見てとれる。

 「無事だ。そっちは...」

 「すみません、私以外誰も生き残っていません...

 私、何も出来なくて」

 「全滅...」

 その言葉が自身の頭にすんなりと入ってこなかった。だけれども、あの機関銃が頭の中に浮かび上がった。そうして、ようやくその言葉を理解した。

 「何が...」

 と言いかけて、口を紡ぐ、そんな事を今更分かっている結果を聞いても現状は変わらない。

 人が死んだ。殺された。悪意を持ったソイツに

 だけど、それは俺には関係ない事だ。誰が死んだって俺には関係ない。

 「全滅...?」

 母親はそれを聞いて、ペタリと床へと座り込んでしまった。そして、呆然としている。

 「悪魔一体で......これか

 クソッ、人間じゃ太刀打ち出来ないのか!?

 真澄、この場を頼む、俺は本部連絡する」

 「はい...」

 そう言って男の警察は部屋から出ていってしまった。

 「お姉さん」

 気紛れに話し掛ける。彼女は暗い顔をしている。おそらく、職場の仲間が死にゆく様を見てしまったのだろう。

 「よく生き残れたよな」

 「それは...」

 思わず、そんな言葉が出てしまったが、そんな事よりだ。気になる事が一つ、出来てしまった。

 「それよりさ、俺みたいなのがこの地域(ココ)にいたりする?」

 「......」

 いるのか...。

 「じゃあ、まだ被害出たりする訳か...」

 ふと、一人の顔が浮かんだ。

 「アイツ」

 隣の家に住んでいる幼馴染みの顔。

 学校じゃ優等生で清楚というイメージがピッタリなアイツに誰かの手が及ぶ。そんな可能性だってあり得る。

 「チッ...」

 そう思うと思わず、舌打ちをしてしまった。

 見ず知らずの誰かが死ぬのは俺には関係ない。だけど、アイツが死ぬなんて事は絶対に駄目だ。

 俺に何が出来る?

 俺に出来る事は......ある。アイツを従わせるぐらい出来る。

 「来い」

 そう言った瞬間に彼女は姿を現した。

 急な出来事に女警官は俺に拳銃を向けた。

 それに対して、俺は頭を下げた。何を言えばいいかなんて分からなかった。

 「何を...」

 その様子に彼女は困惑しているようだった。

 「俺は俺の為に殺したい」

 「......」

 「赤の他人が死んだって俺には関係ない。だけど、死なせたくない奴がいる」

 「だからって、頭を下げる必要なんてないんじゃないの?」

 「じゃあ、俺はどうしたらいい?アンタら警察を信用出来る自信なんて俺にはない」

 俺は頭を上げて目の前の警官にそう言った。

 「私達が何の為にいると思っているの?」

 「それでも、俺はアンタらを信用出来ない

 それに絶対なんてあり得ない」

 絶対に市民を守れるなんて事、絶対になんてあり得ない。この町を守るにしても誰が被害を被って死ぬ可能性はある。

 それがアイツの場合だってある。

 「目には目を、歯には歯を。

 悪魔には悪魔を

 俺を雇えよ。俺には何も出来ないけど

 だけど、コイツがいる

 コイツなら同類を殺れる」

 俺は目の前にいる女性警官を睨み付けるようにして主張する。俺の横に立っている彼女はあの眼鏡メイドを倒してしまったのだ。

 彼女ならその悪魔とやらに抵抗が出来る。

 「はぁ...。無理よ、そんなの

 君は子供で一般市民なんだよ。だから、君を雇うなんて出来ないよ

 それに......あんな化け物なんかを相手にしてたら、君だって死んじゃうよ

 それと変な気を起こさないで、本当に君を殺さないといけなくなるから」

 「何だよ...、何も出来なくて仲間を見殺しにしたクセに」

 「...!?

 君に何が分かるの?

 相手は人間じゃないんだよ。人を簡単に殺せる相手なんてどうやったって太刀打ち出来ないよ」

 ヤベ...、地雷踏んづけた。だけど、引くに引けない。そんな気がした。

 「じゃあ、俺を雇えよ。無能警官!

 町の皆を守るのがアンタら警察の仕事なんじゃないのか?

 ただ見てるだけ、指を咥えながら人が死ぬのを待つだけなのかよ

 俺はそんなの御免だね!!俺には大切な人がいる。失恋したけど、それでも理不尽にアイツが殺されるなんて納得いく訳ないだろ

 だから、俺を雇え。雇えよ。それが駄目なら勝手に動く。アンタらなんかに身柄なんて拘束されてたまるか!!」

 「はぁ...」

 呆れたように彼女はため息を吐いた。

 「君が言ってる事はただの我が儘

 もしかしたら、君のせいで人が死ぬかもしれない。そうなった時に君は責任を取れるの?」

 「取れない...」

 だからと言って諦めるという選択肢なんて俺にはない。

 「だけど、俺は」

 「分かった...。それなら、君の同行を許そう。無茶して一般人の少年が死にましたなんて洒落にもなんないからな」

 「先輩!!」

 「こういうタイプは押さえ付けるだけ無駄だ

 彼にだって守りたい物がある。それだけの大義名分があるんだったら、押さえ付けたら逆に暴走する

 バカとアホウに効かせる薬ないが、処方箋ぐらいはあるだろ」

 なんか酷い事を言われた。

 「ですが......」

 「それに忍君はただの一般人じゃない

 危険を晒してしまうのは忍びないが、それでも彼が危険な相手に走ってしまうのは見過ごせない。それなら、彼と彼の悪魔の手を借りたっていいと俺は思う

 ただし、彼に手伝ってもらうとしても、危険じゃない最低限の事だけ

 この町にまだ一組潜んでる。だから、それを始末するまでの共同戦線

 それで納得してくれ」

 「............分かりました。先輩がそう言うなら...」

 真澄と呼ばれている女警官は渋々納得するが、腑に落ちないみたいだ。

 「忍君もそれでいいだろ?」

 「ソイツをどうこう出来るのなら...」

 俺の目的は彼女に危害が及ぶ相手をどうにかする事である。だから、警察と手を組めるのならそれに越した事はない。

 「そういう訳なんだけど、お母さんはどうですか?」

 「.........」

 それに対して、母親は答えない。というより、さっきから何も言葉を発してない。

 見てみると呆然としているようだった。

 「母さん?」

 母親に声をかける。

 「......何...かしら?」

 呆然としていた母親がようやく反応する。

 どうやら、話は聞いてなかったようだ。

 「お母さん、忍君は私達の方で預からしてもらいます」

 「ですが...」

 「お母さんも見たでしょう?相手は人間じゃない

 それなら、あなたの息子さんは私達と一緒にいた方が安全だ

 この町で一番狙われやすいのは忍君なんです

 忍君は私達で守り抜きます。それにここに潜んでいる犯罪者も」

 「分かりました...」

 母親はさっきの会話を全く聞いてなかった。この話は嘘である。しかしながら、さっきの出来事のせいで母親はこの話を受け入れてしまった。

 これでいい。自身の為に、自身の正義の為に俺は戦う。理由が自己中心的であったとしても、俺は相手を殺す。

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