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色んな意味で待たせ過ぎだわ!

 

 22日後、わたしの所に口上を述べに来た従騎士トビ何とかが、笑顔を見せながらわたしの下に膝をついた。ふふん、結局出来なかったのかしらね? 22日もかかるだなんて笑わせるわね。それにしても、22日? それはなんだったかしらね。


「さて、メル皇女。何故俺があなたに笑顔を見せているのか分かるかい?」


「考える必要は無いわね。単に笑いたくて仕方が無かったのでしょう? それはそうよね。わたくしに近付けるだけで嬉しすぎて、笑顔も自然に出てしまうものですもの。笑顔如きに問い詰める悪趣味はわたくしには無いわ」


「俺はキミの言う通りにやり通した。約束を守ってもらう為に俺はここに来た。もっとも、キミは覚えても居ないだろうがな」


「何かしら? 従騎士に約束?」


 気のせいかしら、この従騎士の肌が脂まみれになっているようにも見えるわ。一体どれだけの料理を堪能して来たというのかしらね。


「キミの言う通り、22種類のスープを22度、22人分を飲み干してきたぞ! キミのおかげで22歳の料理人は腕を磨くことが出来たと喜んでいた。そして俺も皇女の為に尽くす従騎士としての役目を果たせたことは大いに満足している。約束通りに褒美を頂くとしようか」


「22? スープと料理人……? あ、あなた、まさか全てを飲み干して来たっていうの? そ、そんなのは何の証拠にもならないわ。第一、わたくしは見ていないのですもの。従騎士の言うことを信じる義理なんてなくってよ?」


「いや、証拠ならここに連れて来ている」


「は?」


 何を言い出すかと思えば、証拠を連れて来ているですって? スープの摂りすぎで脳みそが脂まみれにでもなったのかしら。


 しかし、従騎士トビの言葉通り、22歳の料理人と、22種類のメニューを事細かに記している書記官までもが、わたしの前に姿を見せた。従騎士だけでは無く、皇国に関わる人間までもが証拠となる記しをわたしに見せて来た。これを認めなければ、いずれ陛下の耳に入ってしまう恐れがあったわ。


「いいわ、従騎士以外は下がりなさい」


「認めてくれたようだな。キミの言う22人分のスープ飲み干しには欠点があってね」


「な、何かしら?」


「22時間以内でとは言われなかった。だから、こちらもあえて22日間かけて作らせ、飲み干したというわけだ。そうだろ? メル」


「なっ!? あ、あなた何て意地悪いのかしら……」


 迂闊すぎたわ。確かに22歳の料理人に22種類のスープ、メニュー、味を全て飲み干してみなさいよなんてことを言った覚えはあるのだけれど、時間までは指定しなかったわ。あぁ、なんてこと。


「……いいわ、従騎士トビ。あなた、明日はわたくしを自由にお使いなさい!」


「御意に」


 ふふ、従騎士その2ごときと街を歩くことくらい、わけないわ。わたしもたまには皇女らしいことをしてあげなければ、従騎士も泣いてしまうはずですもの。退屈すぎる日々を彩る努力をして欲しいものだわ。

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