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何度でも作り直せばいいわ!

 

 どうして料理って作る人のさじ加減で変わるのかしらね。宮廷料理人だからって、皇女の口に合うと思ったら大間違い。嫌になるわ。こうも似たような味付けで変わり映えの無い料理を出して来るなんて、頭おかしいんじゃないの?


「駄目ね、作り直し!」


「は、はい……今すぐに!」


「今度も似た味付けだったら、そこの従騎士その2が料理人を斬るらしいわ。斬られたくなかったら……」


「ひっっ!」


 侍女の焦りようったらてんでおかしいわね。別にあなたを斬るわけでもないのに。バカね。大バカだわ。


「メル……私の剣は人を無闇矢鱈むたみやたらに斬るものでもないんだ。何故、嘘をつく?」


「あら、従騎士その2の誰だったかしら?」


「私は皇女の名を忘れることなど許されないのに、何故君はそうなんだ? 私は、トビ・サイウェルって確か君が幼き頃に紹介をしたはずなんだけどね……」


「いちいち覚えてないわ。従騎士ごときの名なんて、その辺の石ころと同じだわ」


「――っ」


「あら? 何かしら、その腐ったバナナの様な残念な顔は。何か不服でも?」


 陛下の命令に背くことの無い、つまらない石ころたち。彼らこそ、毎日出る料理の様に変わり映えしない顔ぶれ。だからこそ日替わりで従騎士を変わらせているのに、反応が全て同じだなんてつまらないにもほどがありすぎるわ。


「メル……子供の頃はすごく可愛かったのに、どうしてこんなに育ちの悪い娘に育ってしまったんだ。その性格と態度を出している限り、君は覚えてないだろうな」


「覚えるに値しないわね。忘れるってことは所詮、そんな程度の存在ってことでもあるの。あなたがわたくしをどの程度覚えているかだなんて知った事ではなくってよ? 今のわたくしがあなたを覚えないんですもの。だから石ころって言ったのよ。フフフッ、貴方ごときにわたくしの言葉を聞かせてあげるのは50年くらい早すぎたかしらね」


「50年か。それならそれで構わない。メル……君は私が必ず、良き皇女として甦らせて差し上げる」


「わたくし、死んだ覚えなど無いのだけれど? 皇女なんてそんな大層なモノでも立場でもないの。従騎士ごときがせいぜい従うだけのモノよ。それを理解したうえでの発言なら、その2のあなたは相当な変人ね」


 それにしても料理が出てくるのが遅すぎるわ。まさかまた逃げ出したとでもいうのかしら。また腕利きの料理人を雇うはめになるのかしらね。全く、皇女を何だと思っているのかしら。


「その2! 今すぐに料理人を斬りつけて来なさい!」


「断るよ。その代わり、腕のいい料理人を連れて来る。それでいいかな? メル」


「どうぞご勝手に。わたくしが食べる前に、あなたが全ての料理を毒味するのなら召し上がってもよくってよ? 全て、ですわよ? もっとも、あなたが口をつけた料理なんかをわたくしの口に運ぶことなんてありえないのだけれど」


「ふ、その強気な態度はずっとは続けられないはずだ。メルはイイ子だってことは私だけが知っているからね。まぁ、いいさ。腕のいい料理人を君の前に連れて来て見せよう」


「せいぜい努力することね」


 どこかに王御用達の料理人はいないものかしらね。それともやはり宮廷ごときでは作りたくないのかしら。あぁ、つまらない。つまらない日が続いていくのね。

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