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プロローグ


「メル・リルーゼ皇女! お待ちください。陛下のお言葉を守れませぬと、我ら従騎士は皇女を無闇に外に出せなくなります。どうか、我らのお言葉をお聞き入れくださいませ!」


「ふんっ、誰があんな堅物の言うことなんて聞くもんですか! あなたたちも所詮は陛下、陛下……動く駒じゃない。出征ばかりして、宮廷を留守にしている奴を陛下だなんて呼ぶ必要なんて無いわ」


 皇帝陛下の娘にして容姿端麗の高潔な令嬢。誰もがその姿に羨み、歩くだけで思わず振り返ってしまう程のオーラを感じずにはいられない。そんな私のことを勝手に広めているのは、宮廷の連中。実際はそんなにいいものでもない。


 好きで皇女になったわけじゃない。産声を上げて、物事が分かるようになってきて初めて、私の親は皇帝陛下だということが分かった。はっきり言って、自由さとは程遠い教育の毎日と礼儀作法と、食事のメニューから何から何まで、父親である皇帝陛下が指図をして宮廷連中にやらせているにすぎない。


 幼い頃はそれでも良かった。けれど、15を過ぎたあたりから婚約者を決めるとか、挙式はいつ挙げるだとか、ますます不自由さを与えられ続けている。こういう生活はうんざり。


 だからこそ、宮廷外に飛び出しては自然を満喫したり、その辺の兵士にちょっかいを出しまくっていたのに、陛下に直に命じられている従騎士たちが、ウザいくらいに説教を繰り出して来る。


 そんな日々を続けていたせいか、父は直属の従騎士たちを適当にあてがってきた。宮廷を留守にしておきながら、私を常に監視下にするつもりらしい。いいわ、そのねじ曲がった娘愛をさらに曲がり続けさせてやるんだから! わたしはわたしの意志で物事を決めてやるわ。皇帝陛下だろうと何だろうと知った事か!


 2年後――


「リルーゼ皇女。あんたに客人だ」


「はぁ? 客ですって? 向こうからわたくしのすぐ手前まで来るのが、当たり前なのではなくて?」


「性格悪すぎだろ……なんでこうなった」


「そこのひねくれ従騎士! 聞こえてるんですけど? とにかく、客からわたくしの元へ来させなさいよ」


「へいへい、お気に召すままに~」


 17となったわたしには、小生意気な従騎士の男たちが5人ほど就いていた。そのうち2人は泣いて里へ帰ってしまったけれど。それでも3人がしつこく残った……それも相当な無礼者だ。


 サーリルア宮で一年のほとんどを過ごすようになってから、わたしには日替わりで従騎士がつくようになった。わたしを皇女と思わずに接して来る無礼すぎる従騎士その1の、ドニ・ライナード。コイツが一番ウザくて失礼な奴。


「連れてきましたけど? ウザくてすんませんね」


「もういいわ、帰ってもらって」


「は?」


「あんたが勝手に連れてきたんじゃない! わたくしは呼んでないもの。早く帰らせなさい!」


「な、なんつう性悪女だ……くそぅ」


「フフッ、悔しかったらわたくしを平伏せてみることね。平凡な従騎士その1さん?」


「言ったな? 皇女さん、あんたのその性格から何から何まで、俺が変えてやるよ。出征から帰られるまでに、皇女を正しき姿に戻してやらあ! 覚悟しとけよ?」


「面白いことを言うのね。そうなるように祈ってあげるわ」


 皇女に付き従う従騎士になんか、心を開いてやるものですか。そんな日が来ることをせいぜい楽しみに待ち続けてやるわ。

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