表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/22

メリーはどこに

 公介は内部の者の犯行と確信していた。

 五千万円もの大金、奥様はメリーのために惜しみもなく出す。そのことを犯人は知っているのだ。でなければ、いくら百万円以上の価値があるとはいえ、犬なんて誘拐するはずがない。

――どんな方法で?

 内部の者なら、監視カメラのことは知っているはずだ。おそらくカメラの目をさけ、塀を越してメリーを外に連れ出したのだろう。

 だが、塀の外は道路で人通りがある。

 所長の言うようにハシゴを使えば、だれかに見られて怪しまれてしまうだろう。ヘタをすれば、たちまち警察に通報されるとうこともある。

――そうか!

 ある盲点に気づいて、公介ははじけるように立ち上がった。

「メリーは家の中に!」

「……なに。メリーがいただと?」

 所長が目をさます。

「家の中を探してみましょう。だれも連れ出してないのなら、ここのどこかに隠されてるはずです」

「ワシもさっきから、そうじゃないかと考えておったんだ」

「メリーのさらわれた時間、家にいた者はマサヨさんとリョウコさん。マサヨさんはその時間、奥様と一緒でした。すると残るはリョウコさん」

「公介、今すぐリョウコを連れてこい。しめあげて白状させてやる」

 所長が鼻の穴を広げていきまく。

「お待ちになって。先にメリーを……」

 まずメリーを探すことを、奥様が提案する。

「わかりました。リョウコのヤツは、そのあとでも遅くはないですからな」

 所長はリョウコを犯人と決めつけている。とにかく思いついた者が犯人となるのだ。

 二人は屋敷の中をくまなく探してまわった。むろん召し使いの部屋にも入った。

 しかし、メリーの姿はどこにもなかった。

 召し使いたちも、みなが平然としていた。もしメリーを隠していたのなら、顔色のひとつも変えるとしたものだ。

 二人は成果なく奥様の部屋にもどった。

「残念ながら、メリーはおりませんでした」

 所長の報告に、

「そうでしたか」

 奥様は深いため息をもらした。

 それから散歩をしてくると言い残し、ひとり庭に出たのだった。

「オマエの言うことはまったくあてにならんな。骨折り損のくたびれもうけってのはこのことだ」

 所長がイヤミをタラタラと言う。

 で、言ったあげくソファーに深々もたれると、そのまま目を閉じた。

 さっそく眠るのだ。

 公介はいちから考え直すことにした。

 メリーは、やはり外に連れ出されたのだ。

 では、どうやって?

――そうだ!

 内部の者が外部の者に手を貸す。内と外で協力し合えば、犯行は可能になるのではなかろうか。

――手を貸した者が内部にいて……。

 まずメリーを塀の外に投げ出す。それを外部の者が受け取る。

――いや、待てよ。

 それには内と外で、互いに連絡が取り合うことが必要だ。高い塀をはさんで……。

――うーん、どうやって?

 さっきから、どうにも気が散ってしょうがない。

 なぜか考えに集中できない。

 グゥオー、グゥオー。

 猛獣の叫び声がする。

 そこには、大いびきをかいている所長がいたのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ