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04 ゲームスタート

■チュートリアルステージ


■10:40




「このゲームを極めたぁ? 誰もプレイしたことのないゲームですよぉ!」


「シッ。もっと小さい声で」


 周囲は息を潜めている状況だ。騒げばまた誰かが殺されるかもしれない、それが今度は自分かもしれない、という恐怖が人々の基地を塞いでいる。


「〈キルデス・オンライン〉は別のゲームを流用して作られている」


「そのゲームってぇいうのは……」


「SEVEN SEAS ONLINE〈セブンシーズ・オンライン〉だ」


「あっ」


 ここまで言ってシオンも気がついたのだろう。


 〈セブンシーズ・オンライン〉通称SSOは20年も前に正式サービスを終了した(ヘッド)(マウント)(ディスプレイ)型VRMMORPGで、フルダイブ版SSOに移行できたこともあり、フルダイブ型VRMMO黎明期、最初に遊ばれたゲームの一つと言われる。サービス終了の原因はフルダイブ機への同時多発ハッキングにより、フルダイブ版SSOに移行した約1万人のプレイヤーが殺し合いを強制されたからだ。


 HMD版SSOプレイヤーはHMDを頭から外してしまえば何てことはない。ところが、フルダイブ版SSOプレイヤーだけはゲームの死が実際の死につながっていた。HMD版SSOプレイヤーは進んで殺し合いに参加し、あまつさえSSOプレイヤー人口が増えたほど。


 このSSOデスゲーム化事件はたった数日で幕を下ろすが、死者数は2人。1人はPKだった。ゲーム内の殺人で初の逮捕者を出した実例として、フルダイブ型VRMMOの発展を著しく阻害した事件の一つとして記憶されている。


「ハクもぉ、殺し合いに参加していたの?」


「断じて参加していない。私はSSOを愛していた。最高のゲームだ。HMD版プレイヤーとして、SSOを愛する者として、フルダイブ版プレイヤーを守るために戦った。そのせいだろうな、プレイヤーランキングがトップになっていた」


 ゲームが終了した日。


 私はランキング1位だった。


「あれぇ? SSOってあたしが生まれる前だよぉ?」


 私はシオンの頭に、ぽん、と手を乗せた。


「気にするな」


 モニター顔から戻ったピンク猫キルキルがルールの説明を続ける。


「〈キルデス・オンライン〉は7階層全てで生き残っていたソイツが勝ちキル〜」


 ……階層なんていうシステムはSSOになかったような気がする。


 一旦、SSOから離れて考えることにした。


「ゲーム参加者の人数が規定数以下になるとおおおお、次のステージへ行ける階段が現れるキル〜。ア、最初の規定数は、555キル」


 いきなり1人なるまで戦う、というわけではないようだ。


「くれぐれもNG行動をしないようにキル〜」


 NG行動? なんだそれは。


「ゲェェェェムの説明を終わるキル〜。最後にミンナミンナ、キルキルから、プレゼントおおおおキル〜」


 待て。もう説明終わりだと?


 キルキルの前に、箱の付いたベルトが出現する。


 落ちてきたそれを慌てて拾うと、【カードホルダー】と表示された。


 周囲を見渡す。


 シオンも同じアイテムをプレゼントされたようだ。


「キルキルキル〜、それじゃ! 〈キルデス・オンライン〉スタートおおおお!」


 素っ頓狂な掛け声と共に足元が、ずぶり、と沈んだ。


「なっ」


 低い段差を踏み外したような中途半端な落下感。


 身体を支えようと足に力を入れるほど深みに嵌っていく。


 水が膝のあたりまで迫っていた。


「ハク!」


 シオンが私に手を伸ばした。


「シオン!」


 私は必死に彼女の手を掴もうともがいたが、彼女は腰まで水に浸かっている。


 あと少し、あと少しなのに。


「ああ、くそっ……」


 その手は届きそうになかった。


「ハク! 生きて……!」


 顔が沈む寸前、私はシオンと目を合わせた。


 口にしなくても分かる。


 私も生き残るのだ、このふざけたデスゲームを。


 そうして私は水の中に引きずり込まれていく。意識が薄れていく中、キルキルのピンク色をした気味の悪い顔が私を見下ろして笑っているように見えた。


 絶対にお前の思い通りにはさせない。


 私は胸の中に、静かに炎を灯した。

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