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01 首を吊って死ぬか、ゲームの世界で死ぬか
フルダイブ型VRMMOが浸透した現代。
10年も前なら考えられなかったことだが、ゲームの中で学校に通ったりコンサートに行ったりできるようになった。
某国はその先端VR技術で経済大国1位に返り咲く。
代償として現実とゲームの区別が付かない人がたくさん現れたらしい。
そこで、政府は現実で殺人を犯した人間を、ゲームの世界で殺し合わせる前代未聞のフルダイブ型VRMMO『KILL DEATH ONLINE〈キルデス・オンライン〉』を稼働する。
「政府も国民も、誰一人として、現実とゲームの区別が付いていない」
私は政府から派遣された説明員に悪態をついた。
拘置所のよく知らない一室。外は寒々しいほどに冬。
看守長が安っぽい机を叩く。虚しい音がした。
「誰が口を利けと言った。お前は判を押すか、押さないか。それだけだ」
机の上の誓約書。
読んでスグに分かった。
首を吊って死ぬか、ゲームの世界で死ぬか。
どちらかを選べと言うのだ。考えるまでもない。
私は鮮血色の拇印を押した。