7.初めての共同作業
二十層のボスは”キングスケルトン”
カラーツのダンジョンは基本的に十層毎に敵の系統が決まっている。
一から十層はスライム系、十一から二十層はスケルトン系、という風にだ。
「まあスケルトンなら楽勝だな」
「……よく燃える」
不死属性のアンデッドは火と光属性が弱点となっている。
火属性の魔法使いであるリディアにとって、この階層は絶好の狩場であった。
「さくっと倒して二十一層に行くぞ!」
俺は己が脚力に任せて地面を蹴り上げる。
基本的に魔法は使えない設定にしているので、風魔法によるブーストは行っていない。
だがバーバとの地獄の修行に耐え切った俺は、元々各ステータスが平均冒険者より上回っている。
特に「魔法は体力が基本」というバーバの謎理論によりひたすら走り込みをしたため、敏捷値は他のステータスに比べて一段高くなっていたのだった。
それに加えて今はリディア仕込みの剣技がある。
そんな俺が前衛で敵を引きつけるタンク役をし、後方からリディアが魔法で援護をする――というのが俺たちの基本スタイルであった。
「カタカタカタカタ」
キングスケルトンが歯を震わせ、眼球のない窪んだ眼を光らせて迎撃する。
スケルトンの上位種であるキングスケルトンは左右合わせて六本の腕を持ち、それぞれの腕に武器を構えて俺の攻撃を薙ぎ払っていく。
俺の剣スキルは「C」と中級レベルとなっているが所詮は中級であり、キングスケルトンの応手をかいくぐって致命打を与えるまでには至っていない。
そもそも剣スキルC程度でキングスケルトンと互角に打ち合っていること自体が異常な事なのだが――
現状俺とキングスケルトンは互角。
しかし徐々に形勢は俺の方へと傾いていく。
なぜなら俺はぼっちではない。
絶え間ない火球がダンジョン内を照らし続ける。
俺がキングスケルトンの攻撃を捌いている間に後方からリアの魔法が自由に暴れ、キングスケルトンへ少なくないダメージを与えていくのだった。
ほどなくして耐え切れなくなったのだろう、
「ォォォォォォ……」
キングスケルトンが断末魔の叫びを上げて崩れ落ちるのだった。
「割と楽勝だったな」
「……よく燃えた」
キングスケルトンの魔石が地面に落ち乾いた高い音を上げる。
それと同時に赤色で宝石などの装飾が散りばめられた豪華な宝箱が眼前に出現していた。
このダンジョンでは魔物を倒すと魔石だけでなく、稀に宝箱もドロップすることがある。
通常はただの木製の宝箱であり、それでも宝箱の出現率自体が低いためかそれなりに質の高い装備品やアイテムが入っていることが多い。
豪華な装飾の宝箱ともなればさらに中身に期待できるだろう。
「ちょっと楽しみだな」
「……早く開ける」
俺は期待を込めて宝箱の蓋に手をかける。
そして開いた宝箱の中には――期待された宝具の類は欠片もなく、ただひたすらに闇が広がっているのみであった。
「は?」
俺が驚いて固まっていた一瞬で、宝箱から白い煙のようなものが勢いよく噴き出していく。
周囲が白いガスに包まれ、まるで霧の中にいるかのような状況となる。
三分程経過しただろうか、噴き出した煙の勢いが失われていく。
そして薄れてきた視界の先にはいつの間にか巨大なシルエットが出現し、煙の消失と同時に徐々にその輪郭が鮮明なものになってくる。
「グオオオオォォォォ!」
俺達の目の前には先ほどまで存在しなかった、二つ首の巨大なドラゴンが出現していたのだった。
――ダンジョンのトラップの一つである「反魂」。
倒したモンスターより遥かに格上のモンスターを呼び寄せる、ダンジョンの中でも最上位に危険なトラップの一つである。
「なんなんだよ一体!」
俺は悪態をつきながら、ドラゴンが不意に繰り出してきた尾による一撃を避ける。
数多の魔物の中でも最高クラスの能力を持つ竜種。
突如目の前に現れた想定外の脅威により、リュウジは久しく味わうことのなかった混乱状態に陥っていたのであった。
(そうだ、リアは?)
混乱から立ち直り、冷静になったところでパートナーの存在に注意が向く。
どうやらリアも何らかの手段で尾の一撃をかわし切り、無傷で回避できていたようだった。
「グギャアァァァァァ!」
ほっとしたのも束の間俺とリディア二人に向け、双頭の竜の口から強力なブレスが放たれる。
ブレスも魔法の一種である。
バーバとの模擬戦を経て、俺は放たれた魔法の威力を直感的に判断できるようになっていた。
(俺なら耐え切れるがリアはおそらく――仕方がないか)
考えている時間はない。
ブレスが到達するまでの時間は刹那――
俺は魔力を全身に巡らせる。
そしてその魔力をイメージにより変質させ、それは眩い光となって顕現するのであった。
――雷化
この世界に存在する魔法は火、水、風、土、光。
その理を覆す、名をつけるなら「雷魔法」。
音速を遥かに超えた光速の力を身に纏い、最大速度でリディアの元へ向かう。
そして迫りくるブレスを光の盾で打消し、後ろにいるリディアへと声を掛けようと振り返る。
「大丈夫か、リ……ア?」
振り返ったその先には誰もいない。
俺は状況が理解できず、口を開いたままポケーっとした間抜けな顔を晒していた。
そしてふと本来俺に向かって放たれていたブレスが止んでいることに気付く。
そちらに視線をやると、元々俺が立っていた場所には――
ぽかーんと口を開けたリディアが立っていたのであった。




