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もし普通(仮)の高校生が異世界で魔法を極めたら  作者: ぎるばあと
第一章 序・異世界ライフ
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3.冒険者ギルド

  

 「うーん、どうしたものかな」

 

 龍二の眼前で、豪華な馬車が盗賊と思しき集団の襲撃を受けている。

 

 師匠と共に修行して三年――その間師匠から絶えず聞かされてきた言葉が


 「あまり人前で魔法を使うんじゃないよ」

 

 というものだった。


 基本的にこの国の人間は魔法を一系統しか使えないらしい。

 

 二系統も扱えれば相当な使い手として重宝されるらしく、火・水・風・土・光と五系統も使える俺は有能を通り越して異質ということだ。


 まあ五系統とは限らないのだが。

 

 正直面倒事に巻き込まれたくないからスルーしよう――


 そう考えこっそりとやり過ごそうとした俺の耳に


 「誰か・・・助けて」

 

 という少女の声が聞こえてくる。

 

 おそらくは馬車内での小さな呟きであっただろうその声だが、風魔法で聴力を強化している俺の耳にははっきり届いてしまったのだった。


 (さすがにやり過ごしたら寝覚めが悪そうだな)


 仕方ない、こっそり助けるか――


 俺は遠距離から隠蔽魔法をかけた光の矢を放つ。

 

 正しく光速で放たれた魔力の塊に打ち抜かれた盗賊から「うがっ」「げはっ」「ばかな・・・」「あべしっ」という叫声が上がったが、無視して打ち続ける。

 

 そして全ての盗賊が倒れたことを確認した俺は、風魔法でブーストした俊足を生かしてその場を後にしたのだった。


 「ようやく着いたな」

 

 アインス国の西端に存在するサガの街。

 俺は今、そのサガの街に入るための、入場門入口に立っていた。

 

 「兄さん、街の通行証は持っているかい?」

 

 中に入ろうとした俺に、褐色の肌をした気さくな兵士が声をかけてくる。

 

 「いや、俺は森の中で育ってね。そういったものは所持していない。通行証がないと入れないのか?」

 「通行証がなくても入ることはできる。ただその場合、身分を証明するものが必要となるな。まあ森の中で育ったお前さんはそれも難しいか……。一応この街では冒険者ギルドに登録し、後日そのギルド証を見せてくれたら入場OKという特例措置を取っているが、どうする?」

 「ああ、それしか方法がないなら仕方ないな。後でギルド証を持ってくるよ」


 門番の兵士はギルドまでの道、登録の仕方を懇切丁寧に教えてくれた。

 俺は教えられた道を辿り、ギルドの扉を開ける。

 

 「はじめまして。冒険者の登録でよろしいでしょうか?」

 

 扉を開けたその先では受付のお姉さんが愛想の良さそうな笑みを携え、俺を出迎えてくれたのだった。

 

 「ああ、登録をお願いしたい」

 「畏まりました。それでは……」

 

 そういって名前、出身、年齢などを確認される。

 

 出身である森については以前バーバに聞いたが「名もなき森」としか答えてくれなかったため、その通りに答えておいた。


 「最後になりますが、ご職業は何で登録されますか?」

 

 お姉さんの最後の問いかけに俺は即答する。


 「剣士で」


 こうして俺の冒険者登録は終了したのだった。


 数刻後にギルド証を発行してもらい、冒険者としての説明を受ける。

 

 ギルド証の裏面には――


  サガギルド

  剣士 リュウジ

  ランク:F


 とシンプルな記載が為されていた。

 

 お姉さんの説明によるとランクは依頼をこなす度に上昇し、頂点はSランクらしい。

 

 ランクという単語が俺のやり込み魂に火を点ける。

 

 (当面の目標はSランクだな)

 

 俺は今後の方針を決定し、その成就の為の第一歩としてギルドの依頼掲示板を見る。

 

 基本的にソロの場合は自分のランクの一つ上のランクの依頼しか受けられないとのことなので、Eランクの依頼を物色する。

 俺は受注可能な依頼の中でも報酬の良いものを受領して、ギルドを後にしたのだった。


 

 ◆◆◆


 そして俺は今――素手でスライムと殴り合っている。

 

 俺が受けたのはスライム討伐という依頼。

 

 ちなみに現在の俺のステータスは


 人族:轟 龍二

 HP:120/120

 MP:4096/4096

 腕力:D

 敏捷:B

 体力:C

 知力:S

 運 :C

 

 スキル

 火魔法 S

 水魔法 S

 風魔法 S

 土魔法 S

 光魔法 S

 鑑定  S

 不屈  S

 素質

 ???

  

 と、こうなっている。

 

 三年間のやり込みとバーバのハードな訓練の成果によって、魔法はカンストしてしまった。

 カンストといっても、”表記上”はという意味である。

 

 バーバも俺と同じく魔法はSランクであるが、その出力差は二、三倍ではきかないだろう。

 Sランクより上は言わば青天井であり、そこには明確な格差が存在するのであった。

 

 そして俺の現在に至る経緯であるが、師匠のバーバが突然姿を消したことに加えとりあえず表記上は魔法がカンストしたので、次は物理職を極めようと森を出て来たのである。

 

 そんな訳で俺が次に目指すのは最強の剣士だった。

 

 ただ能力的にはこの三年間で著しく向上したものの、金銭の類は一切所持していなかったため剣が購入できず、仕方なしに素手での戦闘と相成っているのである。

 

 「いやー、こんなにスライムが強いとは」

 

 リュウジは以前であればスライムの上位種であるキングスライムすら、魔法で一瞬のうちに蒸発させていた。

 

 剣の修行のため魔法を使わないという「縛りプレイ」を己に課しているリュウジにとって、何分もかかるスライムとの戦闘は面倒ながらも新鮮味があったのであった。

 

 ちなみに現在リュウジが戦闘を行っているのは、サガの街にあるカラーツというダンジョンである。

 

 アインス国では各地にダンジョンが存在し、そのダンジョン内では定期的に魔物がポップしている。

 

 そしてダンジョン内の魔物が増えすぎると、ダンジョンから魔物が溢れ出て周辺の街を襲うようになるため、魔物の数を調整する名目でギルドからダンジョンの魔物の討伐依頼が出ているのである。


 魔物が溢れ出るこの現象は”モンスターハザード”と呼称されているが、その災害という名に恥じず、過去に甚大な被害をもたらしてきた。


 その為魔物の間引きはその街で生活する冒険者の半ば義務のようなものであり、万が一モンスターハザードが発生した場合は、半強制的にその街のギルドに所属する冒険者がその対応に当たることになっているのであった。

 

 また魔物を倒すと、その仕組は解明されていないが魔物が消滅して魔石に変わるため、それをもって魔物討伐の証明と認定されている。


 


 長い格闘の末、最低討伐数である五体のスライムを討伐したリュウジは、スライムの魔石を拾い上げてギルドへと戻る。

 

 「スライム五体の討伐ですね。魔石を確認いたします」

 

 ギルド受付のお姉さんがスマイルで迎えてくれた。

 

 「魔石ですが換金しますか?そのままお持ち帰りいただくことも可能ですが」

 「いや、換金で。現金が欲しいので」

 「畏まりました。スライム五体討伐の報酬が二千ペルカ、五体分の魔石が五千ペルカで合わせて七千ペルカです。お確かめください」

 

 ペルカはアインス国のお金の単位である。

 

 1ペルカ=1円と、ほぼ日本と同じレートとなっているためわかりやすい。

 

 (しかし数分の戦闘で七千円と考えればボロ儲けだな……)

 

 リュウジは望外の成果にホクホク顔で、ギルドを後にするのであった。

 

 

 

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