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第53話 テストと反省、そして恋人繋ぎ

 こんにちは。小説ロス系小説家、風井明日香です。

 最近自分の好きな小説が、なろうでもリアルでも全然更新されなくてですね。

 更新通知を見て悲しみ、書店に行って絶望の毎日です。

 その影響か最近執筆速度が増加。嬉しいことなのか悲しいことなのか……。


 愛美さんの恋人役としてカップル限定メニューを食べに行った日から約一週間後。

 今日から、いよいよ高校最初のテストが始まる。愛美さんとの勉強会の成果が試される場だ。


 愛美さんと二人きりの勉強会を始めて二週間。この期間、毎日欠かさず勉強をしてきた。

 あるときは先生として愛美さんに教えたり、またあるときは愛美先生に教えてもらったり。


 お互いに補い合いながら頑張ってきた二週間。これを無駄にしないため、俺のやる気はこれ以上ないくらい高まっていた。


「いよいよだねっ。浩介くん」


「うん。色々教えてくれた愛美さんのためにも頑張らなきゃね」


「私もっ。絶対いい点数取る!」


 朝のSHRが始まる前、愛美さんとそんな話をする。

 愛美さんも俺と同じ意気込みのようで、胸の前に両手で握りこぶしを作っている。


「やる気満々だな、お二人さんは」


 前に座っていた真人がそう呟く。

 いつもアホっぽく振る舞ってるこの変態は、意外にも頭が良い。

 毎回、めちゃくちゃ勉強をしてる素振りもないのにまあまあな高得点を取っていく。高スペックな変態である。


「これまで頑張ってきたからね。やる気もでるよ」


「うんっ」


「お熱いことでなによりだな」


 お熱い? 熱中して勉強てきな意味かな。あの熱血テニスの人みたいな。

 もっと熱くなれ……これ以上はいけない気がする。やめとこう。


「はーい、ショート始めるわよ。席に着きなさーい」


 教室の扉が開き、香苗先生が入ってくる。


「じゃあ頑張ろうね。浩介くんっ」


「うん。愛美さんも」


 手を振り合って、愛美さんは自分の席に戻っていく。

 それを見ていた真人が聞いてくる。


「お前ら日に日に仲良くなってくな」


「え、そう?」


「そうだよ。ったく、俺は進展がなくて立ち往生してるっつーのにお前らはどんどん──」


「松下! いつまでしゃべってるの! あなた日直でしょう!」


「スタンダップ!!」


 後ろを向いてペラペラ喋っていた真人に香苗先生から怒号が飛ぶ。

 その瞬間、跳び跳ねるように立ちながら英語で起立を求める真人。クラスの面々はクスクス笑いながらも立ち上がる。


「レッツスタートイングリッシュ!」


「松下! あなた遅刻にするわよ!」


「気をつけれーい」


 真人がバカなことをやる中、俺はこのあと始まるテストへの闘志を沸々(ふつふつ)とたぎらせていた。


 * * *


 今日の科目の中には、数学と国語がある。愛美さんと俺の、それぞれ一番苦手な教科だ。

 数学は一時限目、国語は二時限目にある。


 まずは数学。高校最初のテストなだけあり、めちゃくちゃ難しかったり特段新しいこともない。

 しかし、油断は大敵。当然中学生の頃よりレベルは上がっている。凡ミスがないように気をつけなければ。


 一時限目がスタート。焦らずに落ち着いて問題に取りかかる。

 やはり、とてつもなく難しい問題はない。だが、少し引っかけ問題のようなイジワルなものがチラホラある。


 俺は多少数学は好きで出来るほうだから、そういうところまで気づけるようになってきた。まあ、まんまと引っ掛かるときも多々あるけど。

 でも、愛美さんはどうだろうか。勉強会の時、気をつけてとは何度も言っていたがやはり不安だ。


 そんなこんなで一時限目は終了。愛美さんの様子を見ると「ふぅ」と一つ息をついていた。

 あの様子だと、全く出来なかったわけでもないだろう。あとは引っかけ問題がどうかだけ。


 次の国語。簡単な漢字の読み書き問題の後、文章の読み取り問題に入る。

 うーん、やっぱりサクサクとはいかない。ちょっと詰まってしまう。


 でも心配ない。この二週間、俺は何をしてきたんだ。愛美さんとの勉強会だ。

 そう、愛美さんが教えてくれた時のことを鮮明に思い出せばこんな問題ごとき──


『だから、浩介くんが良ければ……手、繋がない?』


『えへへ。やっぱり私、手を繋ぐのなんか好きだな』


『明日、私の恋人になってくれませんか?!』


 ………。

 全然思い出せないいいいいいいいいい!?


 いや思い出せてるよ? 鮮明に一字一句間違えずに思い出せてる自信はあるよ?

 でもなんでかな! 勉強を教えられてるシーンが見当たらないんですけど!!


 ど、どうしようこれ。他のシーンの印象が強すぎて大事な記憶が全部吹っ飛んでるんですが。

 いやでも、とりあえずやるしかない!



 ……結局、最後まで頭の中をかわいい愛美さんがちらつきながらテストを受ける羽目になった。


 * * *


 その日の放課後。勉強をしたいと香苗先生に頼み、倉庫を開けてもらった。

 普通テスト期間中は委員会や部活は休みなのだが、俺と愛美さんだけ特別だ。


 まあ、テスト勉強のために図書館を使いたいという生徒が多いため、図書館は自由開放している。

 そのついでだと香苗先生が(こころよ)く倉庫を開けてくれたのだ。


 勉強とは言ったものの、今日愛美さんとやるつもりなのは反省会みたいなもの。

 まだすべてのテストが終わったわけではないが、とりあえず今日やった教科を振り返る目的だ。


 いつものように机に二人で並んで座る。最初は向かい合って勉強していたけど、最近は横に並んでやっている。

 もちろん勉強を教え合うためにそうしているのだが、本当の理由は別にある。


「手、繋ご?」


「うん」


 席に座るなりそう聞いてくる愛美さん。

 俺は特に何か気にする様子もなく答え、差し出された愛美さんの手を握る。


 そう、もう一つの本当の理由は手を繋ぐためである。

 もう一度言うが、手を繋ぐためである。


 最近、倉庫で勉強をする時は絶対と言っていいほど手を繋ぐことを欠かさない。

 日常になってしまえば最初のようなすごい緊張はなくなってしまうが、改めて考えてみてもとんでもないことだと思う。


 だって、恋人でもないこんなにかわいい眼鏡っ娘とほぼ毎日手を繋いで勉強してるんですよ?

 何回頬をつねったことか。毎回痛いし跡も残ってしまうのだが、確かめずにはいられない。


「~~♪」


 手を繋いで嬉しそうに微笑む愛美さん。

 この笑顔を見てしまったら当然手繋ぎを断ることなどできない。まあ見なくても断るなんてことは絶対ないだろうけど。

 こんなに幸せなことを断るわけがない。幸せ有頂天ですよ。


「愛美さん、数学どうだった?」


「ん~。まあまあ……かな? 全く分からないっていう問題はなかったよ。浩介くんは? 国語どうだった?」


「俺もまあまあ、かな。解答欄は埋めれたって感じ」


 手を繋ぐという毎回恒例の前準備を済ませたあと、愛美さんと今日の振り返りをする。

 結局最後までかわいい愛美さんが頭をちらついている状況で解いていたけど、なんとか出来た。

 めちゃくちゃ自信があるわけでもないけど、頭の中の愛美さんが励みになって集中力は最後まで切れなかった。


「私、数学のとき浩介くんのことすごい思い出してたよ。でも、頑張って教えてくれたときのことを思いだそうとするんだけど、他の記憶ばっかり出てきちゃって大変だったの」


「え、愛美さんも? 俺も実はそうだったんだよね。なんか他の印象強い記憶がどんどん溢れてきちゃって」


「ふふっ、私もそんな感じ~」


 相も変わらず似た者同士の俺と愛美さん。

 そのあとも、あの問題がーだのあそこは難しかったーだのテストの話を続けた。


 そうこう話して、そろそろテストの話題も尽き世間話が混じり始めたとき、愛美さんが少しお花を摘みに離席。

 しばらくして戻ってきて、もう一度手を繋ごうとしたときに愛美さんが口を開く。


「そういえばね、浩介くん。この前ネットで見かけて気になったことがあったの」


「気になったこと?」


「うん。手を繋ぐことに関する記事でね。普通に繋ぐよりも指を絡めて繋ぐ、恋人繋ぎ……だったかな。そっちのほうがなんかいいよーって書いてあってね」


「こ、恋人繋ぎ……。う、うん。それで?」


「私、その繋ぎ方知らなくて。だからその……浩介くん、やってみない?」


 め、愛美さん、恋人繋ぎ知らなかったのか。

 あのカップルがよくやる伝説の繋ぎ方、恋人繋ぎ。


 普通に手を握り合うのではなく、指をお互いに絡め合い繋ぐあれである。

 ……もう、考えるまでもなくドキドキマックスになる未来が見える。

 おかしいな、恋人役は先週やりきった気がするんだけど。まだ終わってなかったのかしら。


「だ、だめ……?」


「いっいや、愛美さんが望むなら俺はなんだってするから」


「そ、そうなの?」


「うん。俺が出来ることならやりたい」


「そ、そっか。 (な、なんだって) (、する……)


「え?」


「な、なんでもないっ。じ、じゃあ……」


「う、うん」


 互いに少しずつ手を伸ばし手を重ねる。そして、一つ一つの指を順番に絡めていく。

 最後の指を絡めたあと、もう一度手を握りなおす。


 指を絡め合うため腕も密着して距離もいつもより近くなる。普通に繋ぐよりも相手の手を包み込んでる感覚が大きい。


 それが何に影響するかと言えば、自分の心臓である。

 さっきから胸の鼓動がすごい荒く波打っている。

 手を繋ぐことにはもう慣れたと思っていたのだが、恋人繋ぎは尋常ではない強者だった。


 愛美さんも知らないと言っていたわりに、すんごい真っ赤になってる。

 り、理解してくれたか愛美さん。恋人繋ぎは相当すごいものなんだよ。俺も今知ったけど。


「そ、そのっ。ドキドキ……するね」


「せ、せやなっ」


 し、しまった。焦りのあまり返答がおかしな口調に!

 愛美さんも愛美さんだよ! ドキドキするなんて言われたら余計に意識しちゃうじゃないですか! 色々!


「私、好きだよ」


「へ……?」


「こうやって、浩介くんと手を繋ぐの」


「あ、あぁ、うん。俺も好きだよ」


「……ほんと?」


「うん。嫌だったらこんなことしない」


「そ、そっか。じゃあ、もうちょっと……こうしてていい?」


「もちろん」


 恋人繋ぎをしたまま、再び愛美さんと駄弁り始める。

 すごい幸せの中、胸の奥だけが何かに締め付けられるように痛い。愛美さんとの時間が重なるほど痛みは増していく。


 薄々自分でも気づき始めていること。

 もう、無理に隠して自分を誤魔化すのもやめたほうがいい……よね。




 やっぱり俺、愛美さんのこと──

 もう一度言うよ? 浩介くんそこ代われ。(真顔)


 毎週日曜0時更新中! 次話≫6月3日

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