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第32話 触れる左手、占う手相

 こんにちは。スポーツ系小説家、風井明日香です。

 先日、友人数名と一緒に某レジャー施設、R〇UND1に行って来ました。

 スポ〇チャなるもので遊んだのですが、満喫しすぎて足が死にました。立てませーん。


「浩介くん、見てこれ! 手相占いの本だって!」


 ある日の放課後。

 いつものように本の整理をしていると、愛美さんが段ボール箱の中から一冊の本を取りだし、俺に話しかけてきた。


「手相占い……?」


「そう、手相占い! 浩介くんは手相とか詳しい?」


「いやー、全然知らないかなあ……」


 手相かあ。

 手のひらのどっかの線が長いと寿命がどうとか、そんな小学生の頃聞いた、ぼやっとしたことしか知らない。

 つまりは何も知りません。えへ。


「私も全然分かんないんだけど、なんか気になっちゃった」


 そう言う愛美さんが持つ本の題名は『手相占い ~今日から君もハンドマスター~』とある。

 なんだハンドマスターって。あの大乱闘するゲームの、でかくて白い手の間違いだろうか……。


 俺が、タイトルでしょーもないことを考えていると、愛美さんが本を開いて中を読み始める。


「ふむふむ、手相はその人の性格や人生を表す……」


 愛美さんは結構占いに関心があるのか、興味津々といった様子で本を読み進めている。


 俺は占いなどにあまり興味がなく、正直信じていない。

 やるとしても神社のおみくじくらいだろうか。


「手相で分かる相性占い……!」


 少し声を出しながら読んでいた愛美さんの口から、なにやら気になる単語が聞こえてきた。


 相性占い……。占いの中でも、特に学生の人気が高いものの一つではないだろうか。

 周りでも、友達同士や恋人同士で占っているのをよく見かける。


「こ、浩介くん。ち、ちょっと手、見せてくれない……?」


 そわそわした様子の愛美さんが、そんなことを聞いてくる。

 まあ十中八九、手相占いのことだろう。かなり熱心に読んでいたし、特に断る理由もない。


「はい」


 そう言って愛美さんのほうへ手を差し出す。

 何も考えずに左手を差し出したが、大丈夫だろうか。何か左右で意味が違ったりとかしないだろうか。


 少し心配していたが、何も言わずに俺の手と本を見比べてる愛美さんの様子を見るに、大丈夫そうだ。


「す、少し待ってね……?」


 そう言って次は自分の手相を熱心に見始める。やはり、俺と愛美さんの相性を占うらしい。

 そしてもう一度こちらを振り返る。


 ──その時、事件は起きた。



「ち、ちょっと、触るね?」


「!?」


 その言葉が、俺の頭で理解されるより早く、愛美さんの手が俺の手に触れる。

 愛美さんはすぐに両手で俺の手を包み込み、真剣な眼差しで手相を見る。


 愛美さんの手は、柔らかくてぬくもりがあって、包み込まれてるということに対しての幸福感が半端じゃない。

 生まれ変わったら左手になりたい。


 てか俺、手汗出てないかな……? さっきからずっと愛美さんに触られてるし、必然的に距離も近くなってるしで心臓バクバクなんですけど。

 絶対手汗すごいことになってるって! やばいって!


 俺が緊張やら喜びやらで挙動不審の極みを発動させる中、愛美さんはひたすら俺の左手とにらめっこ。


 早く終わってほしいけど、まだ終わらないでほしい!

 心臓が持ちそうにないし早く終わってほしいけど、もうちょっと愛美さんの手に包まれてたいからまだ終わらないでほしい!

 後者の理由が変態に聞こえたのは気のせい……だね!


「あ、ありがと……」


 俺の思考回路がそろそろ限界に近づいてきた時、愛美さんがお礼を言いつつ手を放す。


 残された俺の手には、ほんのりと彼女のぬくもりが残っている。

 さっきまで包まれていたその場所に空気があたることで余計に意識してしまう。


 手相鑑定が終わったとみられる愛美さんに、結果を聞こうと彼女のほうへ視線を向ける。

 しかし、鑑定者の張本人である愛美さんは、手相占いの本を顔面に押し付け、俯いてしまっていた。


 な、何があったんだ……。


「め、愛美さん? 結果はどうだったの……?」


 手を触られた一件のせいでなんとなく落ち着かない俺は、愛美さんを急かすような口ぶりで聞いてしまう。


 愛美さんは、顔に押し付けた占いの本から眼鏡と瞳だけを覗かせ、


「な、ないしょ……」


「えっ」


 予想していなかった言葉に、思わず声が出る。

 う、嘘でしょう? 愛美さんや。そんな反応されたら逆に気になるんですけど?

 というか、ここまで引っ張って、ないしょはないっしょー! ……はい、おもしろーい。


「俺、結果すごく気になるんだけど……。駄目……?」


 だめ押しでもう一度尋ねてみる。

 それを聞いた愛美さんは、少し考えてからゆっくりと占いの本を下ろし、


「わ、私と浩介くんの相性は……」


 あ、相性は……?

 俺は、固唾を飲んで愛美さんの言葉を待つ。

 愛美さんは今一度占いの本に目を向けたあと、頬をほんのり染め、


(う、) (運命の人、) (レベルの、) (相性……っ)


「えっ……?」


 今、愛美さんなんて言ったんだ?

 結構しっかり聞いていたと思うのだが、きちんと聞き取ることが出来なかった。


 運命とか聞こえた気がしたけど、気のせいだよね……?


「ごめん、愛美さん。もう一度言ってくれない?」


 俺がそう聞くと、先程にも増して頬を染め、少し何かと葛藤したのちに、


「あ、相性ばっちり……だよっ」


「そ、そっか」


 愛美さんの言動がちょっとぎこちない感じだったのが気がかりだが、相性ばっちりか……。



 ……普段は占いなんて信じないけど、今日くらいは信じてみてもいいかもしれない。

 ないしょなのぉぉおお!


 毎週日曜0時更新中! 次話≫1月7日

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