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第30話 浩介くんと愛美さん

 こんにちは。オセロ系小説家、風井明日香です。

 最近始めたプログラムにて現在オセロゲームを作っております。

 もう本当に大変です。独学プログラムに限界が来てますね。バグ? デバッグ? いえ、知らない子ですね(白目)


「じゃあ、行ってくる」


「ああ、じゃあな」


 とある日の放課後。いつも通り、真人に見送られながら教室を出ることから俺、杉浦浩介の放課後は始まる。


 放課後、図書委員の手伝いをするようになってから、毎日がすごく充実している気がする。

 何の影響かは言うまでもないだろう。


「あっ、杉浦くん」


 教室を出てしばらく廊下を歩いたところで、壁に背中を預け文庫本を読んでいる眼鏡をかけた少女が目に入った。

 その眼鏡少女は、俺に気づくと本を閉じ、笑顔で俺の名前を呼ぶ。俺も続いて名前を呼ぶ。


「おまたせ、佐倉さん」


「ううん。私もついさっき来たとこだから」


 何一つ嫌味のない笑顔でそう言ってくる彼女。

 彼女の名前は佐倉愛美。愛に美しいで、めぐみと読む可愛らしい名前は、本当に彼女そのものを表していると言っていいだろう。


 そして、何を隠そうこの佐倉さんこそ、最近の俺の毎日が充実している主な要因なのだ。


 もちろん、俺が眼鏡っ娘コンプレックスなのが主に影響している。

 しかし、単純に趣味が合うというのも日々の充実に関わっている。


「じゃあ行こっか」


「うんっ」


 佐倉さんが、毎度ながらの思わずドキッとするようなかわいい笑顔で、返してくれる。そして、二人並んで図書館へ歩き始める。


 毎日の至福のひとときが、今日も始まる。


 * * *


 図書館の倉庫に到着し、いつものように本の仕分けを開始する。

 最初と比べればだいぶ本も片付いてきた。あんなに山積みだった段ボール箱たちも、今では残すところ二、三箱ほどとなっている。


 達成感はもちろんあるが、同時に寂しさも感じる。

 元々俺がお手伝いに呼ばれた理由は、人手が足りなかったからだ。この本たちの整理まで、人をまわす余裕がなかったらしい。


 しかし、最近では先輩たちの部活の勧誘も、だいぶ落ち着いてきた。加えて、見ての通り本も結構片付いている。


 そう、おそらくあと一週間も経たないうちに、先輩たちが戻るか本が片付くかで、俺のお手伝いが必要なくなってしまう。

 そうなれば当然佐倉さんと会える時間は少なくなってしまい、これまでのようにゆっくり話すようなことも出来なくなるだろう。


「どうしたの? 杉浦くん」


 今後のことを考えて、ちょっと憂鬱になっていると、佐倉さんが心配そうに声をかけてきた。

 しまった……。そこまで顔に出ていたとは。


「あ、いや、なんでもないよ。ちょっと考え事してて」


 ……まあ、別に今すぐなんてことはないだろうし、とりあえずは今ある佐倉さんとの時間を楽しく過ごそう。


「そっか。何かあったらなんでも言ってね。出来る限り協力するから」


 笑顔でそう言ってくる佐倉さん。圧倒的天使──ッ!


「うん。ありがと、佐倉さん。そのときは遠慮なく相談させてもらおうかな」


「うんっ。ばんばん頼ってね」


 眩しいほどの笑顔でうなずく佐倉さん。

 相談、か……。



「(佐倉さんとの時間が減りそうで寂しいんだけど、どうすればいいかな……?)」



 ……なんて言えたら苦労しないよなぁ。というか、言ったところで引かれるだけだよね。うん。


「そういえばさ、杉浦くん」


「ん?」


 佐倉さんが一冊の本を段ボール箱に入れながら話しかけてくる。

 少し時間をあけたのちに佐倉さんはちょっと照れた様子で、


「その……私たちの名前の呼び方って名字だよね……?」


「え。う、うん。そうだね」


 予想していなかった唐突な問いかけに動揺しながらも、なんとか返答する。


 佐倉さんはさっき以上に頬を染めて、必死に次の言葉を口にしようとしている。

 こ、このパターンは、もしかして……。



「えっと、その……そろそろ名前で読んでも、いいのかな……って」



「────」


 ……これは夢か何かでしょうか。


 佐倉さんは真っ赤に頬を染め、しきりに指を動かしてなんとも落ち着かない様子。

 同じく俺も動揺を隠せず挙動不審になり、言葉が出なくなってしまう。


 しかし、時間が経つにつれてみるみる佐倉さんの頬が染まっていき、ついには顔を手で覆ってしまう。

 ちょっと経ってから、手の隙間に顔を覗かせた佐倉さんは、


「や、やっぱり、変かな……」


「っ! 全然、変じゃない! 名前呼び、俺もしたい!」


「ほっ、ほんと……?」


「うん!」


 佐倉さんが落ち込んだ様子で力なく言ってくるので、少々カタコトになりつつも俺の意思を伝える。

 今の俺の言葉でいつもの笑顔が戻った佐倉さんは、ちょっと頬を染めたまま、



「じ、じゃあ……。こ、浩介……くん?」



「────」


 ……コレハ夢カ何カデショウカ?


 あまりの破壊力にまたもや固まってしまう。

 いやちょっとさすがに破壊力高すぎませんか。一発KOでしたよ?


「ど、どうかな……? こ、浩介くん」


「い、いいと思います……」


 怒涛の二連続攻撃にある意味瀕死になりつつ、応える。なんか敬語になってますけど。


 俺の呼び方が決まれば、必然的に次は佐倉さんの呼び方についてなわけで……。

 少し期待した様子でこちらを見つめてくる佐倉さん。

 妙な緊張感があるなぁ……。


「え、えっと……。め、愛美……さん?」


「………」


 一瞬嬉しそうな顔をするも、すぐに何か考え始めてしまう。

 あ、あれ。何か変なことを言ってしまっただろうか。


「あ、その。嫌だった……?」


「ううん、そんなことは全然ないんだけど……」


 何か気にさわることがあったのかとも思ったが、そういう訳でもないらしい。

 すると、佐倉さんが少し恥ずかしそうに、



「その……呼び捨てでも、いいんだよ……?」



「────」


 ……イズディスアドリーム?


 え、あの、今さらだけどちょっと頬つねっていいですか? さすがに展開が夢のようすぎて、にわかには信じがたいんですが。

 せーっの。うん、痛い。

 夢ではないらしい。夢じゃないなら、言ってもいいよね? 大丈夫だよね?



「め、愛美……」



「───っ!」


 あああああああ恥ずかしいよおおおおん。

 佐倉さん自分で言っときながらめっちゃ照れてるじゃん! こんなんじゃ会話出来ないよ!


「愛美……さん。……で勘弁してくれないかな?」


「う、うん……」


 なんとも言えない空気のまま、呼び名が決定。

 佐倉さん………じゃない。愛美さんは、いまだほのかに頬を染めている。

 俺もまだ緊張が抜けずに、ちょっと耳が熱い。


「じ、じゃあ本整理再開しよっか。愛美さん……」


「う、うん。浩介くん……」




 愛美さんとの距離が、また少し縮まった気がする。

 女子の名前呼び捨てとか、はっはっは。爆ぜろ。


 毎週日曜0時更新中! 次話≫12月24日 クリスマスイブですね。爆ぜろ。 

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