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第26話 たまには屋上で

 こんにちは。映画系小説家、風井明日香です。

 先日、とある映画を見に行ってきました。本当に好きな作品だったので、映画館の売店にて五千円分くらいの買い物をしました。我が出費に一片の悔いなし……。


 ぴょんぴょん。


 朝。学校に登校し、教室に入り真人と他愛もない会話を交わすいつも通りの日常。


 そして、そろそろSHRの始まりを告げるチャイムが鳴ろうかとする時、ポケットの中の携帯が小刻みに震える。

 携帯を取り出し画面を確認すると一件のメールが届いていて、母さんからのようだ。


『もー、浩介今日お弁当忘れていったでしょう? 私もう仕事行かないといけないから、今日のお昼は購買か何かで済ませちゃって。お金は後で渡すから(*´ω`*) ※浩介のお弁当はママがおいしく頂きます♪』


「………」


「どうした浩介。そんな元カノがヤンキーと一緒にバイク乗ってたのを見たような顔して」


「なにその分かりにくい表現」


 バカなことを言ってくる真人を適当にあしらいながら携帯を閉じる。


 うーん……。親からのメールって、みんなこんな感じなのだろうか。親というより、完全に彼女みたいな内容になってますがな。

 顔文字をつけるならまだしも、最後にテレビでよく見るテロップっぽいのを入れるとは、俺の母さんお茶目すぎないかな。


 別にそんな母さんが嫌いな訳ではないし、むしろ普通かそれ以上家族として母さんのことは愛している。

 しかし、こんなかわいいメールを他人に見られたら誤解待ったなしになる気がする。


 試しに真人に見せてみようか。


「真人、こいつを見てよ。こいつをどう思う?」


 そう聞きつつ携帯の画面を、真人の顔の前に持っていく。

 真人はしばらくメールを読むと、すごく神妙な顔をしながら、


「すごく……かわいいです」


「そうじゃない」


 あながち間違ってはいないかもしれないが、違う、そうじゃない。


「たしかにそれもそうだけど、伝えたいのはそこじゃない。だれからのメールか見た?」


「ん? 『母さん』からだろ? それがどうかしたか?」


「えっ……」


 母さんからのメールだと知っててさっきの感想なのか。うん、もうなんか、真人に聞いたのが間違いだったかもしれない。


「てか浩介、今日飯忘れてきたのか?」


「うん、そうらしいね」


 そう答えつつ鞄の中を探してみるが、当然弁当箱は発見出来なかった。

 やってしまった。まさか、よりにもよって弁当を忘れてしまうとは。


 学校には購買もあるし、母さんがその分のお金は出してくれるらしいし昼飯を食べる分には問題ない。

 しかし、せっかく作ってもらった弁当を忘れるというのは、母さんにすごく申し訳ない。


「じゃあ今日は浩介も購買か?」


「そうだね。真人にご一緒させてもらうよ」


「りょーかい」


 真人はいつも購買で昼食を買ってくる。そして真人が購買から帰ってきたら、教室でいただきますとなる。

 俺はまだ購買には行ったことがないので、ここは真人に先導してもらい、昼食を手に入れるしかないかな。


 * * *


「ひどい目に遭った……」


 時刻は正午過ぎ。購買がある場所から少し離れた場所で、心身共に疲れきった俺は、壁に寄り掛かり意気消沈していた。


「ふはは。まだまだよのう、浩介さんよ」


「なんでそんなに平然といられるんですか、真人さんよ」


 俺と真人の手には数個のパンが乗っている。当然のことながら昼飯のためのパンである。

 そして、このパンをついさっき購買で、無事購入したのだが……。いや、うん。無事ではないね。心も体もずたぼろです。



 四限が終了した後、少し焦り気味のような雰囲気の真人に連れられ購買に行くと……。


 そこは戦場だった。


 そう、紛れもない戦場。昼飯を買い求める生徒で、そこは戦場と化していたのだ。

 正直、ここまで購買が人気だとは思わなかった。

 なんとなく、そこそこの人数の生徒が一列に並んで、一人一人購買のおばちゃんに挨拶しながら買っていく光景を予想していたのだが、現実は全く違うものだった。


 購買のパンにも人気のパンと不人気のパンがあるらしく、その個数にも限りがあるらしい。

 その結果、みんなして人気のパンをいち早く購入しようとし、購買の前で見事に大惨事昼飯大戦が勃発してしまっているのだ。


 真人は購買に到着するやいなや、あまりの人の多さに唖然とする俺を横目にその戦場に躊躇なく突撃していった。

 暫時固まってしまっていた俺も、なんとなく嫌な予感がして、真人に続くように戦地の中へ飛び込んだ。


 敵の軍勢の中を掻き分けながら前へ足を進める。何度か足を踏まれながらも、進軍を続けると、わずかな隙間から購買のおばちゃんが確認出来た。

 なんとかその隙間から顔とお金を持った手を突きだし注文のパンを頼むと、おばちゃんの早業によってお金とパンがすりかわっていた。


 そのまま流されるままに外へ押し出され、同じくパンを手にした真人が立つ横で、俺は崩れるように壁にもたれ掛かるのであった。



「よし、じゃあ昼飯食いに行きますか」


「了解……」


 相変わらず余裕な様子の真人。瀕死の体をなんとか動かし購買を後にする。


「そうだ浩介。たまには屋上で昼飯食わねえか?」


 購買から少し離れたとこまで来たとき、真人から奇妙な提案を受けた。


「屋上で? 別にかまわないけど、なんで屋上?」


「まあまあ、思い立ったがなんとやらってやつだよ。とにかく行こうぜ」


「う、うん」


 言われるがままに、真人と屋上へ向かう。


 うちの高校の屋上は常に開放されていて、昼休みはもちろん、放課後も開放されているため、吹奏楽部や演劇部の発声練習にも使われているらしい。

 昼休みの場合、天気のいい日であれば太陽の日を浴びながら昼食を食べられる。そのため、昼飯を取るためのスポットとしても有能と言えるだろう。


 階段を上りきり屋上に出る扉の前へやって来る。そして、先に扉を開けて出ていった真人に続き、俺も屋上へ出る。


 屋上は、思っていたよりも広く、正直結構感動している。

 屋上の床はレンガ作りになっていて、端はすべて高めの柵で囲われている。

 所々にベンチや木が植えてあり、結構な数の生徒がすでに昼飯を取りながら友達との会話に花を咲かせていた。


「真人、どのへんで食べる?」


「こっちだな」


 迷うことなく即答し、左のほうに歩いていく真人。

 何か穴場的な場所でもあるのだろうか。というか、いつの間にそんなに屋上の常連になったんだ。

 毎日昼飯は俺と教室で食べてるし、屋上に行く機会なんてそうそうないと思うのだが──


「杉浦くん……?」


「へ?」


 行動が読めない真人のことを考えながら歩いていると、不意に聞き慣れたとある女子の声が耳に入る。

 反射的に顔を上げ、歩いていた方向を見ると、


「佐倉さん……?」




 そこには、ベンチに座り弁当箱を持ちながら、驚いた様子でこちらに顔を向ける佐倉さんと長谷川さんがいた。

 リアルの都合により先週の投稿が出来ませんでした。今週から、また毎週投稿に戻ります。申し訳ありませんでした。


 毎週日曜0時更新中! 次話≫11月26日

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