第23話 佐倉さんの不安
こんにちは。赤石系小説家、風井明日香です。
最近、というかだいぶ昔から、マ〇クラにて、レッドストーンの回路を作るのが趣味だったりします。
でも、友達に回路いじりの楽しみを理解してくれる人がいなくて、とても悲しいです。ぐすん。
真人と長谷川さんが注文しに行ってしまい、テーブルには俺と佐倉さんが残された。
必然的に二人きりの状況になってしまった訳だが、最近佐倉さんと二人きりになることが多いせいか、あまり緊張しなくなった。
そういえば、去り際に真人がウインクしていったが、何を伝えたかったのだろうか? ただ単に、からかいたかっただけだろうか。真人といい、長谷川さんといい、今日はなんだか思考が読めない。
特に長谷川さん。まあ、長谷川さんに会ったのは今日が初めてではあるのだが、それにしてもだ。
フードコートに来るまでは比較的クールな感じで、真人に対しても基本冷たい対応だった。
しかし、誰がテーブルに残るかという話になったとたんガラッと雰囲気が変わった。真人への対応も、塩対応どころか、海水対応レベルになってた。
なんというか、クールキャラがいきなりドSキャラになった!みたいな。
まあ、海水対応される真人にしてみればたまったもんじゃない……かもしれないけど、まあ真人だしいっか。うん。
「何かあったのかな、椿……」
正面に座る佐倉さんが不安混じりに呟く。
中学校からの付き合いの親友からしても、初めて見る一面だったのだろうか。
「佐倉さんも初めてだったの? その……あんな感じの長谷川さんを見るのは」
「うん。あんなに積極的な椿は初めて見た……かな」
やはり佐倉さんも、思うところがあったらしい。
うーん……。中学校でずっと一緒にいた佐倉さんが見たことがないとなると、これまでたまたまあの一面を見ることがなかったという説は薄くなるだろう。
となると、なにかしらの原因があって、これまで見たことがなかった一面が引きずり出された可能性が一番濃厚だろうか。
原因……。今日あったことと言えば………真人? 真人の変態さが長谷川さんのまだ見ぬ可能性を開化させた──。みたいなパターンか? いや、なんだその超展開。真人が変態ってことしか伝わってこないよ。
他の要因……。最近あったことでいくなら、俺と佐倉さんのこととか? しかし、俺と佐倉さんのせいで長谷川さんの態度が変わるというのもおかしな話だ。
「佐倉さんと長谷川さんは、中学校に入ってすぐに出会ったの?」
先程からずっと考え込んでいて、不安そうな様子の佐倉さんを元気付けようと、少し話題をそらす。
「うん。入学式の時に初めて話して、たまたま帰り道が同じ方向だったから、一緒に帰ったの。それから、毎日一緒に帰るようになって、気付いたら学校でもいつも一緒になってて。もう、それからずっと友達。だから、椿のことは全部知ってる、つもりだったんだけど……」
「やっぱりちょっと不安?」
「うん……。別にちょっと雰囲気が変わったとしても、椿は椿だし、それは理解してる。けど、その椿に私がうまく対応出来るかがちょっと不安で……。椿に変に思われたら嫌だし……」
なるほど。これは、佐倉さんらしい悩みかもしれない。
長谷川さんが変わったことに対してではなく、それに対する自分の態度への不安。すなわち、その態度を見た長谷川さんが、不快に思ってしまうのではないかという不安。
あくまで長谷川さんのことを考えた、思いやりに長けた佐倉さんだからこその悩みだろう。
でも、本当に長谷川さんの気持ちを考えると、大した問題ではないと思う。
「俺は、佐倉さんがどんな態度を取ろうと、全く問題ないと思うよ?」
「どうして……?」
佐倉さんがおずおずと聞いてくる。
俺は、明るく優しく、それでいて丁寧な口調で佐倉さんに話しかける。
「佐倉さんは長谷川さんがどんな態度でどんな雰囲気でも構わないんだよね?」
「うん、椿は椿だもん。当然だよ」
「だったらさ、長谷川さんも佐倉さんに対して同じ考えを持ってるんじゃないかな?」
「同じ考え……?」
「うん。長谷川さんも、佐倉さんの雰囲気や態度が変わったとしても、いつも通り佐倉さんとして見てくれるんじゃないかなって。そうだとしたら、長谷川さんに対して佐倉さんがどんな態度を取ろうと、なんの問題もないと思う」
「ぁ……」
佐倉さんが何かに気付いたかのように、小さく声を漏らす。
佐倉さんと長谷川さんの友情は、話を聞く限りでは決してどちらかの一方通行のものではないだろう。二人ともがお互いを分かり合ってるからこそ、ここまでずっと一緒にいたはず。
であれば、そんな些細なことで関係がギクシャクしたり、友情が崩壊したりなんてことは、まずあり得ないだろう。
「そ、そっか。そうだよね。椿もそう思ってくれてるよね」
「うん、きっと大丈夫だよ。二人の関係がそんなことで壊れるなんてあるわけないよ」
自信を持った声で、佐倉さんに伝える。
佐倉さんは、不安が無くなり、嬉しさに満ちた顔で、
「ありがと、杉浦くん! おかげですごく元気出た!」
「ど、どういたしまして」
満面の笑みでお礼を言ってくる佐倉さんがあまりにも可愛すぎて思わず視線を逸らしてしまう。
すると、視線の端に見慣れた二人の姿が。その二人は俺たちのほうに軽く手を振りつつテーブルのほうに歩いてくる。
「おかえり、真人」
「おう」
真人は、俺に軽く相槌を打つと、俺の隣に着席する。そして、その正面に長谷川さんが座る。
すっかり悩みが無くなった佐倉さんは、長谷川さんに、なんの臆面もなく「どんなご飯にしたの?」「さっきどんな服買ったの?」などと、盛んに話しかけていた。
佐倉さんの不安が解決したようで何よりだ。やっぱり仲良く話しているのを見ていると、ほっこりして安心感を覚える。
ふと、横を見ると、
「むふふ、百合というのもなかなか良いもんですな……」
……君はちょっと黙ってようか。
百合かあ。ゆる〇りくらいのレベルまでですかねえ。
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