第13話 嫌がらせはトイレの中で
こんにちは。徒然系小説家、風井明日香です。
最近、徒然チル〇レンにドハマりしてます。ちなみに高野ちゃんと上根ちゃんが好きです。特に高野ちゃんのかわいさはマジで異常。神。
それではどうぞ。
「眼鏡っ娘の中で特にかわいいのは佐倉さんだよなって話をしてたんだよ」
「ふぇ?」
そうそう、俺たちさっきまでそういう話をしてたんだよ、うん。
……いや、まんまじゃん! 何が『俺に任せろ』だよ! 事実告げただけじゃん!
佐倉さんは何を言われたのか理解できずにおろおろしていて、当の真人は「やりきった……」といった感じの満足気な顔でイスに座ってる。
いや、何もやりきってないよ。どちらかと言うとやらかしてるよ。
「ど、どういうこと?」
いまだに理解が追い付いていない佐倉さんが、真人に説明を求める。
それを受けた真人は、妙にキモいキザった感じで説明する。
「簡単なことさ。眼鏡っ娘が大好きな浩介は、超絶眼鏡っ娘美少女の佐倉さんにぞっこんLOV──」
「アホかああああああああ!!」
「ふぇっ!? 杉浦くん!?」
とんでもないことを口走り始めた真人の言葉を、全力の叫びでかきけす。真横にいた佐倉さんはもちろん、クラスの大半が驚きの目で見てくる。
真人のやつ何言い出してんだ。もし今の最後まで言わせてたらガチ目に引かれるやつだよ─…。てか最後まで聞かれてなくても、眼鏡っ娘大好きって時点で引かれそう。
ため息まじりに佐倉さんの顔を伺う。
佐倉さんはほんのり頬を染め、ちらちらと俺のほうを見つつ、目が合うとふいっと顔をそむけて恥ずかしそうに下を向いて……って! 何そのまんざらでも無さそうな反応は! かわいいよ!
佐倉さんはいまだに動揺した様子だったが、どうしても確かめておきたきのか再度聞いてくる。
「け、結局どういうことなの? 杉浦くん」
「え、えぇっと……」
思わず口ごもる。どう説明すればいいんだろう……。
そのまま説明したら変態だし、でも他に言い訳も見つからないし、というかあんまり適当なことも言いたくないし……。
さっきの一件があるので、あまり頼りたくはないが、一応真人のほうを見る。
真人は、俺と佐倉さんを交互に見つつ、によによと昨日の春咲先輩のような顔を……。よし、今度あいつには泣いて嫌がることをしてやろう。具体的には、あいつがトイレの個室に入ったときに無言で扉をノックし続けよう。
しょうがない、正直に自分で説明しよう。
「え、えっとね、とりあえずは真人が言ってた通りなんだけど……」
佐倉さんは、少し頬を染めまま静かに俺の言葉を待つ。
「お、俺さ。変だと思うんだけど、眼鏡をかけた女の子がタイプなんだ……」
「う、うん……」
佐倉さんの頬がさっきより赤くなった気がする。
「そ、それで、このクラスの眼鏡っ娘だったら佐倉さんがかわいいよねって話をしてたんだ……」
「そそ、そうなんだ……」
目に見えて佐倉さんの頬が赤く染まる。これがアニメなら頭から湯気が出てるレベルで赤い。
というか眼鏡っ娘が好きで、佐倉さんが一番かわいいと思うとか、これほぼ告白じゃない?
告白じゃないなら、これ下手したらナンパじゃん。本格的に変態なやつじゃん。
とりあえず何か言って誤魔化さないと…。
「べ、別に変な意味じゃないから! やましいこととかはないから!」
いや変な意味じゃないならなんだよ! やましいことじゃなかったらなんなんだよ!
あまりの適当な誤魔化し方に自分でツっこむ。これじゃあ何の誤魔化しにもなってないじゃん。余計にややこしくなりそうなレベル……。
「そ、そうだよね! 変な意味じゃないよね! う、うん、大丈夫大丈夫……」
誤魔化せたああああああああ!
いや、なんか誤魔化せたんですけど! でもまあ、佐倉さんが変な意味じゃないって言うんだから変な意味じゃないんだよ! うん! 知らないけど!
しかし、当然そんなことで安心できるはずもなく。また佐倉さんも完全に納得がいってる訳でもなく。
俺、どきどき。
佐倉さん、どきどき。
真人、にやにや。
おい。誰だ最後にやにやしてたやつ。
もう一度確認すると、俺らのやり取りが面白かったのか、明後日のほうを向いて肩を震わせている。
よし、あいつには今度もう一つ嫌がらせをしよう。具体的には、あいつが用を足してるときに、後ろからずっと体を揺さぶってやろう。
……俺トイレでの嫌がらせ好きだなあ。
真人は置いといて、このままでは気まずい雰囲気のままだ。な、何か話題話題……。
「杉浦くん!」
「はい!」
必死で話題を探していると、突然佐倉さんから話しかけられた。思わず先生に当てられたときのような声で返事してしまった。
「あ、えっと。その、あの……」
佐倉さんはなかなか言い出せずにいて、時間が経つにつれて頬が染まっていく。
「そ、その、杉浦くんはさ……」
佐倉さんの声は、教室の喧騒に掻き消されそうなほどの小ささだったが、俺は一文一句聞き逃さないように耳を傾ける。
佐倉さんはたっぷり時間をおくと、「ふぅ」と息を吐き、
「ごめん、やっぱりなんでもないや。もうすぐSHR始まるし席戻るね。じゃあまた放課後ね!」
そう言って、いつものエンジェルスマイルでひらひらと手を振りながら自分の机に戻っていく佐倉さん。俺は呆気にとられつつ、手を振り返す。
何を聞こうとしてたんだろう……。
視線を戻すと、真人がいまだに肩を震わせて笑っている。
「……………」
俺は無言で真人の机に置いてあった炭酸ジュースを奪い、
「ん? 浩介さん? 何してるんですか? それ俺のジュースなんですけど? ついでに言うとそれ炭酸なんですけど? なんでそんなに振ってるんですか? 浩介さん聞いてます? いや、ほんとにそれ以上振られるとやばいんですけど。あの、謝るんで返してもらえません? 浩介さん? こ、こ、浩介様ー!」
真人の悲鳴が飛んでくる中、俺はSHRが始まるまで真人の炭酸ジュースを無言で振り続けた。
どうでもいいけど、学校でトイレの個室入るって、妙な抵抗感ありません?