表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/62

第12話 病的な変態

 こんにちは。水風船系小説家、風井明日香です。

 先日、友人たちと水風船で遊ぶ機会がありました。投げ合う時間より、作る時間とゴミ拾いの時間のほうが圧倒的に長かったです、はい。


 それではどうぞ。


「俺、やっぱり眼鏡っ娘って最高だと思うんだ」


「この新発売のグミうめえな」


 朝。SHRが始まるまでの空き時間。

 俺が真剣な眼差しを向ける先にいる真人は、満足そうに新発売らしいグミをもぐもぐしている。


「俺、やっぱり眼鏡っ娘って最高だと思うんだ」


「お、こっちの新発売のジュースもなかなかだな」


 横に置いてあった炭酸のジュースも飲み始める。そしてもう一度グミを口に放り込みうめえうめえ言ってる。


「そんなにおいしいの?」


「おう、うめえぞ。一個食うか?」


「いいの? ありがと! ……ほんとだ! おいしいね、これ!」


「だろ? てか眼鏡っ娘のくだりは諦めるんかい」


「真人! こっちのジュースもおいしいね!」


「聞けよ! てか勝手に俺のジュース飲むなよ!」


 真人が俺の持ってたグミとジュースを乱暴にひったくる。あ、今絶対炭酸抜けた。

 どうでもいいけど、大半の炭酸ジュースって炭酸が抜けるとすんごい微妙な味になると思う。

 特にクカコーラ、お前は駄目だ。あれはただの砂糖水だ。


「ん? なんだっけ? クカコーラは炭酸が抜けるとすんごい微妙になるって話だっけ?」


「なんの話だよ! いや分かるけど!」


「あと四ツ矢サイダーも結構微妙になっちゃうんだよね」


「ああ、分かる分かる。ただの甘い水だよな……ってうるせえよ!」


 ついに真人がキレる。この勝負、俺の勝ちかな。なんの勝負かは知らないけど。


「眼鏡っ娘だよ! 眼鏡っ娘! その話だったんじゃねえのかよ!」


「あれー? 真人くん、そんなに俺の眼鏡っ娘の話聞きたかったのー? しょうがないなーわがままな真人くんのためにたっぷり話してごめんなさい謝るのでその拳を下ろしてください」


 拳を握り、ゆっくりと上に挙げ始めた真人に対して、机に手をつき椅子に座ったまま土下座のような何かを決行する。

 真人は黙って拳を下げてくれる。そしてため息まじりに、


「いつからだっけな、お前が眼鏡っ娘病になったのは……」


「人の異性の好みを病気扱いするのやめない?」


「お前の場合は立派な病気だよ。もう病気を通り越えて変態レベル」


「ひどい!」


 誰が変態だ、誰が。ほんの少し眼鏡っ娘への愛が病的に変態レベルなだけじゃないか。どこが変態だと言うんだ、まったく。


「しょうがないじゃん。好きなものは好きなんだから」


「妙に格好いいと思ったのは俺だけか」


「俺が格好いいんじゃないんだよ。眼鏡っ娘がかわいすぎるんだよ……」


「誰だお前」


 真人くん辛辣ぅ。真人が冷たすぎて俺凍死しそう。そんな俺の様子を見かねたのか、真人がフォローのようなものを入れてくれる。


「まあでも、たしかにお前が言う眼鏡っ娘も、かわいいとは思うよ」


「でしょ!」


「なんせ俺らのクラスには、それを証明してくれる眼鏡っ娘美少女がいるからな」


「そうだね……」


 二人して視線をとある机のほうへ向ける。残念ながらまだその美少女は登校してきていなかったが、机だけを眺める。

 視線を戻し、一つ呼吸をいれてから俺が呟く。


「やっぱ眼鏡っ娘は最高だよ…」


「ああ、もう否定はしないよ」


 真人も少しは眼鏡っ娘の良さが分かってきてくれたらしい。俺はそのまま眼鏡っ娘について語ろうと、


「その中でも、特に佐倉さんは……」


「私がどうかしたの?」


「ひゅぇっひゃい!?」


 したところで、突如背後から聞き覚えのある、かわいい声が掛けられる。

 あまりの驚きで、自分も聞いたことのないような声が出た。なんだ『ひゅぇっひゃい』って。謎すぎるだろ。


 そんな心臓バックバクの俺に対して、佐倉さんはいつものほんわかスマイルで、


「おはよっ、杉浦くん」


 かわいい。あとついでに言うとすれば、かわいい。


「お、おはよう佐倉さん…」


 しかし、俺のほんわかムードもそこまで。それ以上の感情が溢れてくる。

 いや、どうしよう。聞かれちゃたか? どこから聞かれてた? 最悪『特に佐倉さん』からぐらいならワンチャン…


「ところで、さっきは何の話してたの? 眼鏡っ娘がどうとか言ってたけど」


 ワンチャンなかったあああああああ!!!

 どうしよう、これは取り返しのつかないことをしてしまったか? 俺の変態性癖がバレてしまったのか?


「えぇっと、それは……なんというか……」


 口ごもる俺に、佐倉さんが首を傾げる。

 どこかに助けはないかとキョロキョロしていると、目の前の真人がアイコンタクトをしてくる。


『ぱちぱち(俺に任せろ)』


『ぱちぱちっ(ま、真人……!)』


 俺のアイコンタクトを受けた真人がゆっくりと口を開く。


「えっとな、佐倉さん。それについては俺から説明するよ」


 佐倉さんは、いきなり説明し始めた真人に少し戸惑いながらも、黙って真人の言葉を待ち、


「実は、さっきまで浩介はな……」


 俺も、どんな誤魔化し方をしても大丈夫なように身構え、黙って真人の言葉を待つ。

 そして──


「眼鏡っ娘の中で特にかわいいのは佐倉さんだよなって話をしてたんだよ」




「ふぇ?」

 杉浦くん、変態って認めてるじゃないですかやだー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ