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プロローグ
『春』
それは、寒い冬が終わり暖かい空気に包まれ、心も身体もぽかぽかしてくるかのような季節。
そして春は、始まりの季節でもある。
例えば入学式。
体の大きさに合ってないランドセルを担ぎ、親に連れられ行く小学校。
新しい生活が始まる中学校や高校。
やはりどれを取っても期待で胸が膨らみ浮かれてしまう季節だろう。
かく言う俺も、新しく始まる高校生活に期待で胸を膨らませていた。
そして胸が膨らみきるとき、それは今なのかもしれない。
高校に入学してから一ヶ月とちょっと。
春が過ぎ、梅雨の季節が迫ってきているある日。日も傾き西の空が茜色に染まり始めた、そんな時間。
俺の前には俯いて自分の足を見つめる少女。
その少女は何かを振り払うかのように首を振り、真っ直ぐに俺を見つめてきた。
そして──
「好きです。私と付き合ってくださいっ……!」
俺、杉浦浩介は人生初の告白を受けた。