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早速ボッチ

春休みの最後の日。


俺こと佐原蓮は休みにも関わらず学校へと向かっていた。

自転車で駅まで向かい、電車で一本。

僅か20分程で着く海辺の高校だ、我ながら良いところだと思う。

というか、俺がこの偏差値高めの進学校に受かること自体が奇跡に近いものであった。

受験には超絶スーパー苦労したのだがそれはまたの機会に話そう。


さて、何故俺が長い長い春休みにも関わらず学校へと向かっていたかというと、どうやらこの学校では生徒会で春休み中に相談会を開いているらしい。

そして今日が春休み最後の日であり、そして相談会最終日でもあるというわけだ。

高校に希望を抱いて入学した俺だが、やはり不安なものは不安だ。

悩みはここでブチまけた方が良いだろう、と考えたわけだ。

何より不安を抱えたまんまじゃモヤモヤするしね。

過去のトラウマもあるし…


乗降口に入り上履きを脱ぎ、廊下に上がるとそこにはポスターがあった、生徒会室はどうやら左手にあるらしい。

左に廊下を曲がるとすぐに生徒会室が見えた。

ドアの前に立ち一呼吸置き、ノックをする、慎重に。


「失礼します」

「おっ、新入生かい?入って入って〜」


失礼かもしれないが、部屋の中から聞こえたのは随分と間の抜けた女性の声であった。

これがフワフワ系ってヤツなのか?

意を決して部屋に入る。


「失礼します、新入生の佐原蓮と申します!」

「随分とお堅いね〜、私は棚が原高等学校生徒会長、

長屋花香二年生、よろしくね!」


俺の眼の前に立った長屋花香と名乗るその女性は、誰もが認めるであろう黒髪ロングの美少女であった。

つーかやばい、凄い良い匂いする。


「ほらどうしたの?座って座ってー」

「あっ、はい失礼します」


言われるままパイプ椅子に座らされる、どうやら俺以外は相談会に来ていないようだった。

それが緊張を更に加速させた。

まぁ春休み最終日という事もあり他の生徒は来ていないのだろうが。


「君は新入生相談会に来たんだよね?」

「はい、まだ色々と不安があって…すみません…」

「いやいや〜スミマセンだなんて、こちらこそ誰一人として相談会に来る人がいないから暇してたところだよ」


俺の予想は当たっていたようだ。


「まさかこの一週間誰も来ないとはね…」

「えっ」


どうやら俺の予想をはるかに超えていたのようだ、

悩みあるやつ少なすぎじゃない?


「さて、早速だけど本題に入ろうか、ズバリ君の悩みとは何なんだい?真田誠くん!」

「いや俺の名前は佐原です!っていうか一文字もあってませんよ!さっき言ったばかりじゃないですか!」


ついツッコミを入れてしまった。


「あははナイスツッコミ!、分かってるよ、君の名前は佐原蓮、今のは君のコミュ力と物怖じしない勇気をチェックしただけさ」

「マジですか」

「マジです」


やばい、この会長やり手である

会長のスキルなのか俺の緊張はいつの間にかほぐれていた。


「まぁ取り敢えず今ので君には特に問題はないっていうのが分かったよ、さて、今度こそ本題だ。君の悩みとは何だい?佐原蓮くん」


それから何時間経っただろう、俺は時間も忘れて自分の悩みを吐露し続けた。

中学時代の友人が誰もこの学校に居ないこと、勉強についていけるか分からない、イジメは有るのか?等

ことイジメに関しては聞きまくった。


そのたびに長屋花香は懇切丁寧に俺の質問に答えてくれた。

自分も高校に入った時は友達がいなかった事、勉強に不安があった事、イジメられるんじゃ無いかと怖くなった事。

そんな自分の経験を織り交ぜて答えてくれた。

その答えは俺に勇気を与えてくれる暖かいものばかりだった。


「うわっもう下校時刻だよ!」


会長の言葉でふと俺は我に帰る。

既に時刻は午後六時を回っていた、部活に所属しているであろう帰り行く生徒達の姿が窓から見えた。

というか相談に来たのが一時だからあれから五時間も経っていたのか…

何という会長のトークスキル…


「ちょっと、加藤君!早くしないと乗降口しまっちゃうよ⁉︎」

「すいません!ちょっと待って下さい!今行きますから!というか僕の名前佐原ですから!」


それからしばらく走ってギリギリの所で学校からの脱出に成功した。


「佐原君、明日からの君の学校生活が充実した物になるよう祈っておくよ!頑張ってね!」


じゃあ私こっちだからそう言って会長は校門を出てからすぐ俺と別れたがこの一言が頭から離れなかった。

長屋花香はどこまでも美しい


「長屋花香は美しすぎる」


この一言に尽きた。

そういや今更だが会長以外の生徒会メンバー見なかったな。



翌朝、昨日とは違う風景に圧倒されながらも俺は学校へと向かっていた。

昨日までは空いていた電車は満員になっていた。


さて、しばらく歩くと乗降口にクラス表が貼られていた。

だが中学時代からの友人がこの学校に居ない俺には特に関係の無いものだった。

自分が三組だという事だけを確認し、同級生の喧騒を後に乗降口を上がった。


一年三組の教室は二階にあり幸運にもすぐに見つかった。



そして俺は今日から始まる青春高校生活に希望を抱いてその扉を開けた。


クラスの中は既にクラスメイト達の喧騒に溢れていた

クラスは幸運にも海の見える綺麗な教室だった。

取り敢えずは座席表を確認して自分の席へと向かう。

到着、と同時に後ろの席の奴が話しかけてきた。


「おっ俺の前の席お前か?前後同士よろしくな!」

「ああ、よろしく!」

「ちなみにお前の名前は何て言うんだ?」

「ああ、俺は佐原蓮、お前は?」

「俺は富田慎也、よろしくな佐原君」

「おう、よろしく富田」


良かった、どうやら富田はコミュ力高めの面白い奴みたいだ、人当たりも良くそのおかげで俺たちは打ち解ける事が出来た、高校初の友人である


「それにしてもうちのクラスは美人揃いだな」

「そうみたいだな」

「知ってるか?あのグループの女子、中学時代から告白されまくってるけど全部断ったって噂だぜ?」

「あの容姿じゃ告られまくるのも分かるな、超美人だ」


確かにその女子はクラスメイトの女子の中で一番美人だと思う、あの調子なら高校でも告白ラッシュを迎えるだろう。

まぁそれも、俺には無縁な話だが。

だがあの顔、どこかで見覚えがあった気がする。


「おい」

「何だトミー」

「早速俺のあだ名を作ったなコイツ…」

「で、何だよ」

「あの女子さっきから俺たちの事見てるんだけど」

「へ?」


柄にも無い間抜けな声が出てしまった。

それもそのはず、クラスで一番の美人が俺たちの事を見てるわけがないだろう。

どうやらトミーの頭は初登校20分程でイカれちまったらしい。(アメリカ風)


「あの…」

「おい!佐原⁉︎」

「何だよ、っておぅえ⁉︎」

「あのー佐原君だよね?佐原蓮」

「確かに俺は佐原蓮だけど…お前は?」

「おい佐原、お前の知り合いなのか⁉︎」


うるせぇぞトミー…

それ以上叫ぶと口を縫い合わすぞ!

お前のせいでクラスの男子が騒ぎ始めてんだよ!

大体何でコイツは俺の名前を知ってるんだ?


「真逆峯、覚えてる?小学校一緒だったよね?」

「真逆…峯…?」


こいつ…あの時の…!

だが、容姿が全然違うじゃ無いか!


「お前は…真逆峯なのか…!」

「うん、中学校の頃は仲良かっ「嘘をつくな!」

「おいおい佐原、そんな大声出さなくても…」

「お前は黙ってろ!」

「ねぇ佐原君、私変なこと言ったかな?」

「ああ言ったよ、言ったさ!お前は俺と仲良くなんてしてない!」


むしろお前は俺をイジメていた主犯じゃないか!

と言いかけて、我に帰る。


クラスメイト全員から向けられた敵意の目、

あの時と同じ、忘れる事も無い中学二年生の頃の話

真逆は…真逆峯は、俺を陥れた張本人だった。

結局、俺はあの時から何も学んでいなかったようだ。



噂というのは面白い物で俺がクラスの美人(クソ女)

に対して声を荒げ(ここまでわかる)

更に手を上げた(は?)という尾ひれまで付いてしまった。

そんなこんなであの騒動から一週間、俺は絶賛ボッチライフを悠々自適に送っていた。

いやーボッチも良いもんだぜ?何より友達が居ないから変な気を使う必要も無いし、遊びに行く金も自分の趣味に回せるし…

やっぱり寂しいねボッチって…

何よりやる事が全く無い、イジメられてはいないけど完全にハブられてるし…

トミーと話したいよ、俺は

何だか中学時代を思い出すなぁ。



中学二年生の俺はごくごく一般的な普通の生徒だったと思う、いじめられる事もなくクラスの中心とまではいかないが、そこそこの位置に就いていたように思う。

そして忘れる事も無い中二の夏休み明け、俺たちのクラスに転校生が来る事になった。

クラスメイト達は新しい仲間の来訪に胸を湧かせていた、そしてクラスの扉は開かれた。


担任の紹介と共に入ってきたのは黒髪のメガネ女子

名前を真逆峯といった、容姿は地味に思えたがよくよく見ると整った綺麗な顔立ちをしていた。

真逆は自己紹介に一言


「皆さんと仲良くなりたいです。」


そう言って自分の席へと向かった、それが俺の隣の席だった、俺はいわゆる隣が居ない席だったので真逆が自分の隣の席に座った時はワクワクしていたと思う。

他愛の無い話をしながら、次第に俺と真逆は仲良くなっていった。


事件が起きたのは12月の冬休み前の事だった。

真逆は転校してからもあまりクラスに溶け込んでいなかった。

そしてクラスの中心人物が真逆をイジメている事が発覚した、俺の中学校はイジメに敏感な学校ですぐにクラス会が開かれた。


クラス会で真逆は担任に様々な事を聞かれた、だがその全てに答えなかった。

ただ一つ、犯人は誰だという言葉を除いて…


「私をイジメていたのは…佐原君です」


それからの事はあまり覚えていない、嫌な思い出だから自ら抹消したのかもしれない。

だが、記憶に残っている事はある、それから俺はいじめられていたという事だ。

それから俺は真逆を恨んで恨んで恨んで恨んで恨んで恨んで恨んで恨んで恨んで恨んで恨んで恨んで恨んで恨んで恨んで恨み尽くした。

仲の良かった友人に裏切られ陥れられた、それを俺は許す事が出来なかった。

程なくして真逆は親の事情で他校に転校した。

三年になった俺は何とか汚名を挽回する事ができた。

だが、それでも真逆の事は忘れられない。

今でも疑問に思っている、

真逆は何故俺を陥れたのだろうか?



俺はそんな思い出を振り返りながらトイレへと向かっていた、午前の授業は終わり、今は昼休みだ。

俺の手には弁当箱があった。

いわゆる便所飯というやつだ、ここ五日間ずっとやっている。

最初こそ汚いと思っていたが慣れてくるとむしろ快適に感じた。

これもまたボッチの風情よな。

そんな下らない事を考えながら歩いていると後ろから不意に手を引っ張られた。


「うぉっ⁉︎」

「佐原君だよね?」


聞き覚えのある声、これは紛れもなく


「ほらほら、最近トイレでご飯食べてるんだってね、折角なら生徒会室で食べようよ!」

「会長…」


紛れもなく会長だった、しかも昼飯に誘われた。

高校で初めて、誘われた。

だが


「いえ、迷惑をかける訳にはいきません、僕は一人で食べるつもりだったんで気なんて使わなくて良いですよ」

「気なんて使ってないよ、ただ私も一人だったから」

「えっ?」

「まぁ良いから来てよ来てよ」


それに今日は生徒会会議を開く予定だったしね。

そう言って会長はすごい力で俺の手を握ったまま歩き始めた。


「ちょ、ちょっと⁉︎」

「ほら!シャキシャキ歩く!」


結局会長に連れられるまま、俺は生徒会室に来ていた。


前に来たようにパイプ椅子に座らされ、俺と会長は向かい合っていた。


「いやー佐原君女の子に手を上げるだなんて…」

「その噂は嘘ですよ」

「知ってるよ、私は佐原君はそんな事しないって知ってるもん」


会長、あなたのその自信は何処から来るんですか…?

もし暴力を振るう事ができたら振るっていましたよ。



「…」

「…」


何か変な空気がひろがってきちゃったな…

何か話すネタは…


「そういえば」

「何?どうしたの佐原君」

「いえ、何で今日生徒会会議なのに会長以外に人が来てないのかなーと思いまして、生徒会って会計とか書記とかいるじゃ無「いないよ」

「えっ?」

「だーかーらー、居ないんだってば!」

「じゃあ生徒会って会長以外に誰も「いないの!」


会長妙に食い気味だな…

一人だけの生徒会ってそれもう会じゃないんじゃ…

そんな事は思っても口には出せなかった。

つーかこの会長俺がいなかったら一人で生徒会会議を開こうとしてたんじゃ…

やはり口には出せなかった。


「それにしても、生徒会を一人で運営するなんて可能なんですか?」

「全然可能だよ、少しばかり大変だけどね」


会長は微笑みながらそう言った。

多分この人にとっては一人で運営するなんて造作も無い事なんだろう、きっと。


「と思ってたらさー…これがもう大変で大変で…」

「ええ…」


前言撤回、失礼かもしれないが、どうやらこの会長は後先を考え無い馬鹿らしい。


「まぁそりゃそうですよね、頑張って下さい会長」

「君も頑張るんだよ!」

「えっ」

「単刀直入に言おう、君を生徒会副会長兼書記兼会計兼雑用に推薦しよう!」

「嫌です」

「何で⁉︎」

「いや!だってどう考えてもおかしいでしょう⁉︎突然生徒会に入れだなんて⁉︎」

「全然おかしく無いよ!寧ろまともだよ!」

「いや一人で生徒会やってるし十分会長はおかしいですって!」

「それは言わない約束でしょ⁉︎」


いやいや、まさかとは思っていたが生徒会に推薦されるとは…

絶対やりたくねぇ…


「ねぇー頼むよー」

「嫌です!絶対に嫌です!」

「何で嫌なの!」

「えっそれは…」


そういや何で嫌なんだろうか、それは分かってる…

ただ面倒くさいだけだ!


「いやー僕部活に入ってるんでちょっと…」

「嘘つき!知ってるんだよ君が帰宅部だって事!」

「な、何故知っている⁉︎」


思わずしたくも無い言い訳をしてしまった…

というかこの会長は諜報もできるというのか…!

恐ろしい子!


「とにかく君は生徒会に入るべき人材なんだって!」

「会長こそ何で僕をそんなにしつこく誘ってくるんですか!他の人でもいいでしょ!」

「君は私の性に合ってるんだよ!それに寂しいよ!」

「寂しいって…それはあなたの都合でしょう!」


はぁ、俺は一つため息を吐いた、俺が生徒会に入る?

そりゃ無理だ、生徒会っていうのは全校生徒の前で喋ったりするんだろ?

俺は今最低最悪の男として名が響いてる、そんな俺が生徒会に入る等到底無理だ。

それに面倒くさい。


「まぁ別に今決めなくたっていいよ、気が向いたら私の所に来てくれよ」

「多分もうここには来ないと思いますけどね」

「いや来るよ、君は来る」

「何なんですか、その自信は…」

「だって私の予想外れた事無いもん、君がいじめられているのは予想外だったけど」

「まぁイレギュラー要素が入ってませんでしたからね、会長のテストには」


そもそもあんなテストで人の力量は計れるものだろうか?

いや無理だ。


そんなこんなで話していると授業10分前の予鈴が鳴った。


「じゃあそろそろ帰ろうか」

「そうですね」

「生徒会の事、検討しといてね」

「分かりましたよ…」


「そういえば、会長以外に立候補していた人は居たんですか?」

「居たには居たけど、みんな降りちゃった」

「何でですか?」

「最初こそ全役職に人が就いてたんだよ、でもみんな気付いたんだ、私さえ居れば生徒会は運営できる事に、いやいやだったんだよ、みんな推薦で立候補した人達だったし、自分から立候補したのは私だけだったんだよ、だからみんな辞めちゃった。」

「…」


何だか随分重たい過去が有るんだな。

そうしてちょっと暗い雰囲気になりつつも俺たちは別れた。


それにしても…久しぶりだった。

学校で人と喋るのは。


「これが続けられるなら生徒会も良いかもな」


生徒会室と会長を後ろ目にそんな事を呟きながら、俺は怠惰な教室に向かっていた。

生徒会に入る、か…





















ここまで読んでくれた皆様、ありがとうございます。

何か中途半端なところで終わってますけどまだまだ続きます、まだ六千字しか書いて無いですし。

何でラノベを書こうと思ったかというと、何か一つに真剣に取り組んでみようかなーと思ったわけです。

そこでラノベを書いてみよう、と思い立ったわけであります。(初心者なのでかなり稚拙なモノですけど)

さて、使い古されたワード生徒会ですけども。

実は自分、現役生徒会書記なんですよ。

まぁまだ佐原が生徒会に入るか分かりませんがそこに自分の経験も織り交ぜて書いて行こうと思ってます。

是非次回作も読んで頂けると幸いです。


byサクサク

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