06 王都
初めての社交界からはや5年が経過した。
2度目のお披露目に関しては、社交界慣れした部分があり無難にこなせたと思う。
なんの戸惑いもなく普通に社交界に出たりする俺もすっかり王族として慣れてしまったのだと思う。
最初の社交界で印象に残り、その後もそこそこの付き合いのあるアイリーン嬢とアリーシャ嬢。
他にも何人かは付き合いがあるのでいずれその話もしようと思う。
話は変わるが、最近になってようやく魔術の勉強や習得練習が解禁された。
魔法はまだ見る機会がないが、魔術は見せてもらった。
地球にはなかったものでとてもテンションが上がった記憶がある。
たぶん子供のうちに見せてしまうと、無駄に憧れて習得をせがむと思われたのだろうと今は思っている。
王子のわがままなんてたまったもんじゃないだろうから『見せない』が徹底されていたのだろう。
これは、現在進行形で行われていることでもある。
この国にはお抱えの魔法使いが複数いるらしいのだ。
国に仕える魔法使いを魔導士と呼び、一定の地位と身分が約束されている。
魔法使いと敵対していいことなんて1つもないので、平民出の魔法使いに対し貴族が傲慢に振る舞っていれば白い眼で見られるし、下手すれば国にとって不利益になったとして改易されてしまう可能性すらある。
貴族が下から優秀な者が現れる事を恐れるのは、自分のポストをそいつに取られてしまうという恐怖心からきている部分が大きい。
が、魔法使いに関しては他者にはできない技能を持っているため普通はそちらに従事することになるし、魔導士の地位や、宮廷魔導士としてのポストが予め決められており、予算も決められている。
だからよほどの事がなければ魔法使いに対し敵対的になる貴族家は存在しないのだ。
それに、貴族家自体無限に増やせるわけではない。
予算には限度があるが、貴族家の多くは世襲可能なので代々年金を払わなければならない。
だから貴族家が増えるには直轄領が増え中央政府の予算自体が増加されるか、未開地を1から開拓するなど厳しいものになっている。
それでも、現在は貴族家の数には余裕をもたせている。
功績を上げたら貴族になれる可能性が0だと、現貴族を殺しに回るやつが現れても困るからだ。
それに土地自体はまだ余っているのだ。
開拓にかかる費用や予算が莫大でかつ失敗のリスクまである。
誰もやりたがらないのが現状であった。
実家から融資を受けて開拓する場合でも、よくて村を作って騎士爵になって終わる。
実際それは貴族になったというより、村長になったという感じだろう。
村を複数作ることに成功し、村長レベルを卒業しても、生活レベルは下手すれば王都にいるより下がる可能性がある。
やはり、誰もやりたがらないのだ。
俺は10歳になり、そろそろ将来の事を考えはじめなくてはならないだろうと思っている。
日本じゃ10歳で将来の事をなんて考えられないが、兄が優秀で次代国王になることは間違いないだろうと思っているし、そうなってほしい。
だから俺は何かしら王とは別の道へ進んでいかなければならない。
これはいい機会だと思いこの国の事、王都の事を少し調べてみた。
グランオルフィード王国王都グランドランド。
人口は200万人とも言われ、この国ひいては近隣諸国の中でも最大の人口を誇っている。
この時代の大国の首都の人口は150万人いればいいほうで、地方都市なら大きいところで30万いれば福都級である対しこのグランドランドは別格である。
グランオルフィード王国が他国に対し何かしらの技術が特別優れているとか、そういう理由ではない。
実際にグランオルフィード王国の地方都市は同党の国力をもった国と規模は変わらないらしい。
ではなぜこの都市が頭一つ飛び抜けているのかというと単純に立地の関係である。
この世界には魔物と呼ばれるモンスターが存在しているが、魔物は一定の範囲からは外に出ない。
魔物が生息する場所の『魔の領域』と言う。
『魔の領域』は、山であったり森であったりするのだが、珍しいものだと木であったり、洞窟であったりするらしいのだ。
この木なんかが属するタイプは本当に摩訶不思議空間で、木を潜れば全くの別空間が広がっており、それがまるまる『魔の領域』であったりする。
さらに木の中に存在する『魔の領域』にある木が違う『魔の領域』であったりするというとんでもない事があるのだ。
現代の感覚だと、前者がフィールド型ダンジョン後者が迷宮型ダンジョンみたいな感じだろうか。
この迷宮型は無駄に場所をとらないすごい『魔の領域』なのだ。
そしてグランドランド内に5つの『魔の領域』を抱える都市なのだ。
他にもグランドランド付近には小さい『魔の領域』が複数存在している。
こんな珍しい場所に都市を構えたので中世レベルでも養える人口が多いのだ。
『魔の領域』には魔物がいるが、魔物にも種類がある。
中には肉が美味しい魔物もいるし、植物系の魔物は薬草になったり香辛料になったりするものも存在する。
魔物の定義が体内に魔石と呼ばれる鉱石を保有しているものらしいので、たくさんの種類がいる。
さらに『魔の領域』内には魔物以外も当然そんざいするので、果実だったり、木材だったりと採取できるものも多岐にわたる。
つまり『魔の領域』とは資源の宝庫なのだ。
『魔の領域』で狩りをしたり、採取をしたりして生計をたてる人たちの事を冒険者と呼ぶ。
王都グランドランド内に存在する『魔の領域』は、主に獣系・鉱物系・植物系・動植物系が存在する。
獣系とは肉食草食問わず動物系の魔物がいる『魔の領域』。
鉱物系とは各種金属ゴーレムがいる『魔の領域』。
植物系とは直物系の魔物がいる『魔の領域』。
動植物系は獣系と植物系のハイブリット型の『魔の領域』である。
冒険者が持ち帰る各種素材を纏めて買い取ったり、『魔の領域』の情報を集めたり、冒険者を管理する組織が冒険者ギルドである。
ギルドと名の付くものは、組合である。
同じような仕事をする人を管理する、ルールを決める、仕事をする人たちの権利を守る役割を持つ。
全く知識のない人間にはさすがに無理だが、貴族子弟の有力が天下り先でもある。
貴族領にしても、その領内限定の貴族みたいな陪臣たちの天下り先だろう。
冒険者とは、魔物をばったばったと倒す集団ではあるのだが、物語に出てくるようなのとは少し印象が違う。
どちらかというと猟師の方が近いかもしれない。
魔物と正面からやり合うより罠にはめた方がリスクは下がるし、出てくる魔物の情報をしっかり集め、狙った魔物だけを効率よく狩っていく人。
魔物とは戦わず、木材や果実、薬草などの採取を専門に行う人。
パーティメンバーと工夫した戦い方、魔術の組み合わせなんかで特定の魔物に特化した人。
冒険者と一括りにしてもスタイルはそれぞれだし、みんなできる限り危険な目に合う確率を減らし効率的に稼ぐのが当たり前なのである。
冒険者の収入は完全に出来高によるものなので、高い人は下級貴族を優に上回るだろう。
冒険者に興味はあるが問題もある。
1番がパーティメンバー。
次が生き物を殺せるのかということだ。
俺は魔術を現在習得中で、魔力もそれなりに多いほうなのだとか。
直接的ではなく魔術で間接的に殺すなんて事をすればどうか。
実際にやってみなければ分からない事ではある。
最初は無理でも慣れてしまうことだってあるかもしれないのだし。
冒険者の収入は出来高だといったが、それなら1回ごとたくさんの素材を持って帰らなければならない。
それに関しては、どうにかする構想だけはある。
実際に行動して、行動の微修正だけすればなんとかなると思っている。
が、1人ではどうしようもないだろうと思っている。
ある程度信頼のおけるメンバーを集めたい。
メンバーについても候補はいるが、それにはいくつかやらなければならない事がある。
まぁ、冒険に出るのは早くても2年後以降になるだろう。
まだ体もできていない子供のうちじゃあ最高のパフォーマンスはできない。
切羽詰まっているわけではないので、しっかり準備して準備が整い次第というながれだろう。
とりあえずは魔術の練習と情報収集からだな。
あとは想定している最初の1手が打てるかどうかの確認もしておかなければならない。
他にもやらなければならないことはある。
この5年で貴族家には派閥が多数存在することは分かったし、要注意な野心家なんかも見極めていかなければならない。
俺が知っているのは上級貴族。それも王都にいる法衣貴族ばかりだ。
それですら詳しいことまでは分かっていないのだ。
俺が上手く立ち回るためには情報収集は欠かせないだろう。
なんだろうな。
基本的にやる気がない人であったはずなのだが、転生してからは様々な事をやろうとしている。
まぁ、あの頃の様にてきとうに生きていればこの先詰むだろう事が分かっているからなのかな。
とにかく頑張ろうかな。




