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04 ダンスレッスンは嫌だ

この国には、季節がある。

一応、春夏秋冬の四季があると考えられているが、春は夏までの、秋は冬までの準備期間という認識らしい。


1日は日が昇ってから日が暮れるまでのようなアバウトな感じで捉えらてている。


時間は商人や貴族、教会のお偉いさんくらいしか把握していない。

ほとんどの人は教会が2時間ごとに鳴らす鐘の音をきいて大まかな時間を把握するのは事で生活している。


ちなみに1ヶ月30日の12ヶ月、1年は360日で区切られている。


農業をする上で季節を決めたり、日付けを決めたりするのは都合が良かったりする。

種植の時期なんかもこれでだいたい分かるからだ。

細かい事はその土地ごとのローカルルールで動いているのだろう。


地球の場合は1年364日でやっていて、こことは違うのだから、この星は地球とは全く別物だと改めて実感する。

30日ごとの360日なんてきりのいい数字にして大丈夫なのかとも思うけど、今まで大丈夫だったのだから、問題はないのだろう。


でも、この国には誕生日という概念が殆ど無い。

この国の人たちはみんな新しい年と共に一つ歳をとるという認識なのだそうだ。

お祝いなんかに関しては、5歳、10歳、15歳のきりのいいところで祝うらしい。


乳児の死亡率が高いこの時代では、元気に育ったということで5歳に最初のお祝い。

半人前になった10歳にお祝い。

大人の仲間入りの15歳に最後のお祝いという感じが貴族では一般的らしい。

平民だと5歳と15歳の2回が一般的らしい。


まぁ、貴族での10歳祝いは半分は社交界開催のための名目だからという理由かららしい。


人脈は一生かけても作り続けなれけばならない貴族には子供のうちから他家との交流は必須であり、王都でも王家や大貴族が連名で主催するレベルの大規模なものが開催されるらしい。


いつも、春から夏の間に開催される。

理由は、収穫と税集の時期をはずしてさらに移動しやすい時期にという事でだいたいこの時期になったそうだ。

他にも年始はみんな忙しいだろうからとか、季節が変わり服装も変わるだろうからその準備がしっかりできるようにだとか細かい配慮がなされている。


俺は今年5歳になった。

つまりお祝いの歳である。

このお祝いを期に普通の貴族家の子供は社交界デビューするのだ。




「はいそれ1、2、1、2」



そのせいで俺は、ダンスのレッスンをさせられている。




「だいぶ上達してきましたね。 背筋を伸ばしてシュッとしていればかっこ良く踊れる事間違いなしです」



教師はもちろんアデーレである。

が、これは大いなる陰謀が隠されている!



「もうやってられるかっ!」

「あらまあ。 どうしましたか殿下」



あらまあじゃねーよ。

とてもいい笑顔ありがとうございます。


でも、俺は知っているんだぞ!



「確か5歳の子供はダンスしなくていいはずだろ!」



そう。

そうなのだ。


いくら貴族家の生まれだろうと子供は子供。

5歳の子供は社交界ってこんな感じだよって事を見て覚えていってねってくらいだったはずだ。


恥をかかないように場の雰囲気を覚えたり、他の貴族家の子供を覚えたりするだけでいいのだ。

5歳児たちは少し年上の子供を見て、自分が何をすればいいかを知る。

それで100点満点のはずである。


食事や飲み物を楽しみながら他の貴族家の人間とコミュニケーションをとり、ダンスに誘い誘われ、しっかり踊れるなんてそんなパーフェクト5歳児なんていないから。

恥にならないように親は子供に冒険させないし、最悪の場合を考えて5歳のお祝いまでは社交界には参加させないという不文律まであるというのに。



「何故、ダンスのレッスンの時間がこんなに長くとられているんだ」



全くもって謎だらけである。

というか、いい加減手を離せ。

逃げられないではないか。



「あらあら、どこでそれを知ってしまったのやら」



あらあらじゃねー!

俺は無駄な努力はしたくないのです。

いや、社交界にダンスが必須なのは知ってますよ。

でも普通は6、7歳くらいから聞きましたよ。


社交界になれる→他の子供と喋る→ダンスを踊れるようになる。

みたいな順序があるってちゃんと知っているのですからね。


普通に考えれば5歳児にダンスなんてやらせてみたら、誰かしら事故ると思うから、ある意味当然だと思うけど。

むしろ事故多数のトラウマだらけの会場が容易に想像できてしまう。



「確かに5歳の子たちはダンスを踊らなくても問題にはならないけど、踊ってはダメなんて事はないのですよ?」

「踊らなくていいダンスをわざわざ踊る意味が分かりません」

「それに、ダンスが好きな子だと5歳でも踊る子がいるのですよ?」

「踊らなくていいダンスをわざわざ踊る意味が分かりません」

「それに殿下は間違いなく注目の的の一つになるでしょう。 ダンスに誘われることが必ずあるはずです」

「踊らなくていいダンスをわざわざ踊る意味が分かりません」

「仕方ありませんね。 少し休憩に、しましょう」



なんだか壊れた蓄音機になってしまった気分でした。


しかしそれもここまでの事!


やっと手を離してもらえたのでここぞとばかりにダンスレッスンとはおさらばしよう。



コンコン!



「はーい」

「失礼します叔母様」




なんと現れたのは我らが母上様でござりまする。






「いつもありがとうございます叔母様」

「王妃殿下に様付けだなんてなんだか恐縮してしまいます」

「もう。 ここは公の場ではありませんので問題ありません。 それに私がどんな身分になろうと叔母様の姪には変わりありませんのに。 だからからかわないで何時ものようにしてください 」

「うふふ。 それもそうね。 でも一応お礼は言っておくわね。 わざわざ来てくれてありがとう」

「私の子供の事ですからお礼なんてよろしいのに。 それで、ウィルちゃんは大丈夫なのですか?」

「ええ。 殿下はとても聡明で呑み込みもはやくて・・・」



綺麗な金色の髪を輝かせながら母と先生は話出した。

母は、青く大きな目を輝かせ、とても可愛らしい笑顔でら先生から話を聞いている。

3つ上の兄と俺、さらに2つ下の妹を産んだ三児の親であるはずなのに、全くそうは見えないほど若くて美しい美貌やプロポーションを維持している。


実際の歳は知らないが、少なくとも20代なかごろ。下手すれば三十路であるはずなのにまだまだ生娘のような若さを保っている。


俺たち兄弟妹を溺愛している。

俺も事あるごとにほっぺをふにふにされたり、頭をよしよしされるのだ。


俺を愛してくれていくのは分かるし嬉しいのだが、どこか気恥ずかしくもあったりすのだ。


精神年齢は、俺の方が上だと思うと余計にね。


ちなみに母の名前は、アンジェリカ。

確かもとはハルゼー侯爵家の長女。

先生は母の叔母だから現ハルゼー侯爵家当主の妹か、もしくは姉。

ハルゼー侯爵家の嫡子。つまり母の兄にはすでに子供がいたはずなので、俺の従兄弟にあたる人物がいる。

何人いるかしらないけど、社交界で挨拶でもするのかな?



「じゃあウィルちゃん。 当日は任せてね」

「母様。 ちゃん付けはやめて下さい」

「もー。 堅いこと言わないの」

「当日は任せてねってどういう事ですか?」

「叔母様がウィルちゃんはダンスも出来るのに当日は緊張して誘えるかわからないって言うからね。 だから最初は誰かリードしてくれる相手を見つけて話をつけておくから心配はいらないわよ」

「うぇ?」

「上手く踊れないならしょうがないけど、ウィルちゃんはちゃんと踊れるらしいじゃない。 なら踊らないのは勿体無いから最初のパートナーはこっちで見つけておいてあげるから! 」



いや、余計なお世話。

とは言えませんよね。


なんか本当に輝きだしそうなくらい満面の笑みですもん。


これ、ダンス決定ですか?


というかこのタイミングでの登場。

間違いなく先生がやりましたよね。


なんか先生もいい笑顔だし。


母を使って逃げ道を塞ぎましたよね?

ぐぬぬ。

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