7歳の少女・ヴァネットと、小さなタオル_02
超短め。です。
ヴァネットは、急いで木から降りました。
「どうしよう、どうしよう……!」
ヴァネットの心のなかは、迷っていました。
悩んでいる間にも、タオルはビュンビュン吹く風と一緒に、遠くへ飛んで行ってしまいます。
(タオルは大事だし、森の外にも行ってみたい。でも、でも……)
ヴァネットは泣きそうでした。
(バネーラとも離れたくないよ……)
「うぅう……うぇええ……」
タオルを追いかけることと、森の外に行くこと。
その2つの願いはヴァネットにとって、バネーラと離れたくない想いと、ほぼ同じ重さでした。
グスグスと鼻をすすりながら……。
それでも視線は、どんどんどんどん遠くに行ってしまうタオルに、釘付けでした。
(いま追いかけなかったら、もうあのタオルとは、ずっとお別れかもしれない……そんなの、そんなの嫌だよ)
気が付けば、足が前に出ていました。
(そうだ、タオルを取り戻して、すぐバネーラの所に戻ろう!)
持ち前の明るさと前向きな考え方は、こういう場面でも役立ちました。
ヨロヨロだった足取りは、自然としっかりしたモノへと変わっていきます。
涙は引っ込み、ヴァネットは飛んでいくタオルを、口をあんぐりと開けながら空を見上げて追いかけました。