00.神がいる世界で
新連載です。ゆっくりと更新していきます。
「……いた」
彼女は目を細め、手に持った弓を引き絞った。その矢じりが、目標へ定められる。
「行けっ」
小さな気合いと共に、彼女は矢を放った。それは空を貫き、そして、対象を貫いた。
「よしっ」
妖鳥が墜落していく。彼女はその後を追って駆け出した。走っていると、彼女の隣に影が寄り添った。彼女はその影の人物を見ずに尋ねた。
「見てないで、倒すの手伝ってよ」
「あれは君の仕事だろう? 私が手を貸す義理はない」
「とか言って、いつも助けてくれるくせに」
「そう言う約束だからな」
やや言葉遣いが古いが、柔らかい口調だった。並走する女性を見上げ、彼女はべっと舌を出した。
「いじわる」
「はいはい」
受け流された。まあ、年季が違うのだから当然か。
墜落した妖鳥は甲高い鳴き声を上げる。彼女は一つ、柏手を打った。
「彼のものをいざないたまえ!」
術が発動する。術の直撃を受けた妖鳥はそのまま帰らぬ人となった。女性が微笑む。
「見事だな」
「どーせ、あなたならもっと手早くできたんでしょ」
少しすねながら、彼女は妖鳥を灰にして空へととばした。女性はそんな彼女の頭をなでる。
「まあ、これもお前の修行のうちだな」
できると思ったから手を出さなかった、と女性は笑った。詭弁のような気がするが、彼女は目を細めただけで何も言わなかった。
「そもそも、私がお前に付き合っていることからしておかしいからな」
さらりと女性が言った。勝手についてきてるんだと思うんだけど。
「物好きな人」
「一応、私は半分人ではないよ」
「さして変わらないでしょ。人間みたいな行動をとってるんだから」
「違いない」
彼女の言い分にくすくすと笑い、女性は言った。
「じゃあ、帰るか、千草。送っていくぞ」
「あら、ありがと、瑠依」
互いの名を呼び、2人は帰路についた。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。