*植物図鑑で調べてみた。
植物図鑑であの不思議な歩く草を調べてみることにした。
今まで生きてきて、あんな草を見たことがない。話にも聞いたことがない。
……この辺にしか生息していないのかもな。
あんな歩く草がいっぱいあったら怖いぞ。
***
この家には図書室がある。
以前に使っていた人の残した本とか、俺が持ってきた本とか、各種必要最低限の本は揃っていると思う。足りない本があったとしても、協会に申請して受理されれば手に入れることができる。
まぁ、今回は植物図鑑で大丈夫だと思う。草だし。
図書室には植物図鑑だけで十冊あった。しかも一冊の厚みが俺の手でかろうじて掴めるくらいだ……マジか。
ちょっと気が遠くなる。だって、名前もわからないんだぞ?
この植物図鑑を一頁ずつ確認しなければならないなんて…………。
いや、やるしかない。
気合いをいれて一冊目に取り掛かった。
一日じゃ調べ終わらなかった。
「あ゛ー!!」ってなりながらも調べもの二日目に突入。だが見つからず。
二日で五冊調べた。俺スゴくね?
「う゛あ゛ー!!!」ってなりながらも三日目に突入。細かい字に目が滑る。
前世の図鑑と違って写真が付いてない。古い図鑑のようで文字だけで書いてある。絵ぐらい入れろ。
見 つ か っ た!!!
なんだか泣きそうだ。あの草の記述を七冊目にしてようやく見つけた。
“妖精の揺籃草”
図鑑によると、あの草は妖精が生まれる花が咲くという。
大昔は根付いて動かなかったそうだが、人間に乱獲されて絶滅の危機に瀕し、自衛のために根が動くようになったそうだ。
……マジか。え? 妖精? 妖精って花から生まれるの? メルヘン?
しかも動くのは自衛のためなのか。
捕まえて悪いことをしたな……。でも植木鉢に植えちゃったけど、大丈夫なのか?
図鑑の続きを読んでみる。
『なお、安全な場所を見つけたら、そこに根付く。
そして十分に栄養を摂り、開花すれば妖精が生まれるだろう』
……ということは、この家が安全だと判断されたということか?
確かに、家の中はこれ以上ないほど安全だ。子供たちのためにそれぞれの親が自重しないで防御・守護の各種魔法を施したからな。
多分どこよりも安全だろう。
「妖精か……楽しみだな。よし、子供たちにも教えてやるか!」
伸びをして凝り固まった体を解し、俺は図書室を出ていった。
そして、この草が成長したら妖精になると知って、子供たちは大喜びだ。
草一号をティノ。
草二号をフィオと名付けたようだ。
名前を付けて愛着が湧いたのか、毎日楽しそうに観察している。
草も名前を付けたあとの方がよりイキイキしてみえる。
……とりあえず、見に行く度にお水をあげようとするのは止めておこうか。