*満月の夜の集まりのこと。
「そういえば、少し前に参加したっていう満月の夜の集まりはどうだったんだ?」
今日も外は暑い。少し外に出るだけで汗が噴き出す。
ここ数日は、暑さをやわらげるため泉でたくさん遊んだので、今日の自由時間は居間でみんな一緒にまったりしていた。そこでフとこの前の満月の夜にあったという月の宴の話を思い出したので、ティノとフィオに訊いてみた。
二人を見ると、お互いの頭に咲いている花に水をあげているところだった。
……え、それってお水をあげるものだったの!? 頭濡れない?
不思議なことに水は“妖精の揺籃草”の花に吸い込まれるように消えた。水分を得たからか、花弁がより瑞々しくなり、ほのかに輝いているように見える。
びっくりして凝視してしまった俺に、ティノが「この花が萎れると僕らも力が出なくなるんだよね」と教えてくれた。
……そうなんだ!!?
訊いたこととは違うことで驚いてしまった。
ティノとフィオの話を聞くために子供たちも周りに集まってきた。
どの子供たちも興味津々の顔をしているが、一番早くエアがフィオに話をねだった。わくわくとした顔で二人の妖精を見ている。
「それで? 宴には妖精がたくさんいたのっ?」
「いーっぱい妖精がいてすごかったよ。僕ら生まれたばかりだから、宴に参加するのは初めてだけど、もうすっごい歓迎されたよー」
「そうそう。久しぶりの同族の参加ってことと、一番年下だからみんなに喜ばれたんだよね」
答えるフィオは楽しそうに身振り手振りで説明する。そしてティノもにこりと微笑みながら追加で説明した。
二人とも同族の妖精に可愛がられて楽しく過ごせたようだ。二人の様子にこちらも安心する。
「へぇ、仲間にいっぱい会えてよかったなー」
「宴ってどんな感じだったの~?」
「そうだねぇ……みんなで花の蜜を飲みながら、歌ったり踊ったりしたよ。あとは、色んな土地の人間の噂とかを話したりして、とてもにぎやかだったね」
ウィルが首を傾げて宴のことを訊いたのに対し、ティノが思い出を辿るように上の方に目線を上げながら答えた。金緑色の瞳をゆるく細めている。
「それって…………」
……各地の人間の噂……って、危険な人間とか妖精狩りとかに遭わないように……か?
言葉を濁す俺が不安そうに見えたのか、ティノはにっこりと安心させるように微笑んだ。
「ふふ、安心して? 妖精が人間にどんな悪戯をしたかとか、悪戯したときの反応が誰が一番よかったか……とか、そういう話だよ」
「そ、そうなのか」
……いや、それはそれで安心していいのかわからないけどね?!
「フフフ、それは楽しそうですね。ワタシも参加してみたいです」
内心でツッコミをいれる俺とは違い、悪戯話で盛り上がると聞いて、カルマが愉しそうにニコリと笑う。悪魔の一族でも似たような話で盛り上がるらしい。
……満月の夜の宴っていうから、もうちょっと神秘的なのを想像していたんだが。なんか思ってたのと違うな。いや、妖精は悪戯するイメージか? うーん、そうかも。なら、いいのか??
俺は軽く混乱しつつも話の続きを聞く。
今度はフィオが話し出した。
「それでねー、妖精たちみんなでどの妖精の悪戯が一番面白かったか投票をしたんだ。順位をつけて、栄えある一位に輝いた妖精には、王蜜が賞品として渡される。だからみんな凄く頑張ってたよー」
「すごく盛り上がってたよね」
「王蜜ってなに? すごいの?」
クスクス笑い合う妖精二人。
ジークが疑問をティノに尋ねる。それに答えるティノはとても楽しそうだ。
「ふふ、特別な花から採れる……特別な、蜜だよ」
「特別な花……ですか??」
「ふぅん? 凄いんだね」
「そう。とっても凄いんだよ」
シエルが首を傾げてティノを見るが、特別な花がどんな花なのかを言うつもりはないようだ。ベルが「特別な蜜ってどんな味だろう。甘いの?」と言いながら尻尾を揺らしている。花よりも蜜の味が気になるみたいだ。……ベルは甘いものが大好きだからな。
にこにこ笑うティノとフィオを見る。満月の夜の宴はとても楽しかったようだ。やはり同族である妖精たちにたくさん会えたのが良かったのかもしれない。
次の満月も妖精が宴を開催するのなら、また楽しんでくればいいと思う。
そして、また楽しい話を俺たちに教えてくれれば嬉しいな。
「それで、どんな悪戯が一番だったのっ?」
「ワタシも気になります」
「えーっとねぇ……」
……ちょ、ウケた悪戯ランキングは教えてくれなくていいからな!!?




