10.~はじめてのお手伝い~
「レン、レン!」
「ん? どうしたんだ?」
子供たちが俺のもとへ駆け寄ってきた。
俺は微笑ましい気持ちで問いかける。
「なにかお手伝いがしたいです!」
子供たちはキラキラした瞳で俺を見上げてきた。
……え、いきなりどうしたの?
***
さぁっ、清々しい朝だー!
陽の光を浴びて、気持ちよく目が覚めた。曇りひとつない空を眺めると、身体中から元気が湧いてくるようだ。
俺の周りにはすやすや寝ている子供たち。そして俺の腹の上ではベルが猫の姿で丸まっている。なんか呼吸が苦しいと思ったよ……!
子供たちは昨日の夜遅くまでおしゃべりしていたので、しばらく起きないだろう。
体は成長して大きくなったけど、寝顔はまだ幼さを残している。
……可愛いなぁ。うん、みんな可愛い。
起こさないようにみんなの頭を撫で、ベルはそっとクッションの上におろした。そして俺は朝食の準備をするためにベッドから抜け出した。
朝食が終わり、勉強も終わった自由時間。
いつもならそれぞれが自由に過ごすのだが、今日はなにやらみんなで集まってゴニョゴニョ話し合っていた。
……珍しいな? なにかあるんだろうか。
気にはなったが、なにかあれば俺に言ってくるだろう。
子供たちの主体性、自主性は大事だ。
俺の役目は、なんでもかんでも手助けすることではなく、頼られたときに力を貸すことだ。もちろん臨機応変にだけど。……そもそも頼られないかもとかは悲しすぎるので考えない。
子供たちは何事かの話し合いが終わったようで、何度か頷いてから俺のもとへやって来た。
「レン、レン!」
「ん? どうしたんだ?」
「なにかお手伝いがしたいです!」
子供たちはキラキラした瞳で俺を見上げてきた。
……お手伝い?
内心で首を傾げる。
「お手伝いって、急にどうしたんだ?」
「レンがいつも一人で大変だろうなって、みんなで話してたの。だからね、僕たちが毎日お手伝いしたらレンも少しは楽になるかな~って思ったの」
……いい子!!! ウチの子たちは、なんていい子なんだ!
俺は感動した。
俺のことを気遣ってお手伝いを申し出てくれるとは。
こういうところでもこの子たちが成長しているんだなということがわかる。
他人を思いやることのできる子に育ってくれて、とても嬉しい。
じゃあ、何をしてもらうかな~。
早速お手伝いをしてもらうことにした。
ウィル&カルマ
この二人には、お昼ご飯を作るのを手伝ってもらうかな?
ウィルは食べることが好きなだけあって、料理にも興味があるようだ。野菜を洗ったり、切ったりするのを積極的に手伝ってくれる。……まぁ、出来上がった料理を片っ端から味見するのはどうかと思うけどね!
カルマは盛り付け担当だ。
悪魔の美意識がそうさせるのか、カルマが得意なだけなのか、繊細で彩りもよくセンスがある。
ただ、凝り性なのか妥協を一切許さない。
……そのサラダで作った龍はとても凄いのだが、食べるのがもったいないぞ?
お手伝いって、本人の性格が出るんだな。
俺も一つ勉強になった。
シエル&ベル
シエルとベルには掃除と洗濯を手伝ってもらうことにした。
シエルは綺麗好きなので、とても楽しそうに隅々までお掃除してくれた。
……あー、棚の上とか高いところもシエルなら飛びながら掃除できるのか。いいなー。
俺も掃除に手を抜いてなどいないが、やはり高いところは掃除しにくい。いつもは台に登って掃除していたんだけど、シエルは飛びながら楽々と掃除している。
……これは助かるな。
シエルが掃除する姿を、俺も掃除しながらのんびりと眺めていた。
ベルには洗濯物を干すのと取り込むのを頼んでみたのだが……干すのはよかった。普段はあまり動きたがらないベルだが、やればできるのだ。いつもやらないだけで。
ベルは要領よく洗濯物を干し終わり、今度は午前中に干してあったものを取り込んでいった。
カゴの中をジッと見つめるベル。すると、太陽の光をたっぷりと浴びた真っ白なシーツの魅力に抗えなかったのか、カゴの中に入れたシーツに猫の姿になって飛び込んだ。そして、気持ち良さそうにゴロゴロしたあと、丸くなって──寝た。ちょ、おぉぉぉい!!
慌てて駆け寄る。丸い洗濯カゴの中で満足気に丸まるベルは、前世で見た“ねこ鍋”を思い出す。
仕方なく俺が洗濯カゴ(ベル入り)を持って、室内へと戻った。
エア&ジーク
この二人は、少しは成長したといっても見た目は五歳児くらいだ。
お手伝いをするにはまだ早い気がするが……うーん。
食事のときに食器を並べるのとか、皿洗いとかなら平気か?……いやいやお皿を割ったりしたら危険だし却下かな。
「エアとジークはどうするかなぁ。気持ちはとても嬉しいんだけど」
「ボクたちだって、お手伝いできるよ!」
「そうだよ。できる! レンをお手伝いしたいんだ」
二人の意気込みは十分。
積極的なのは良いことだが。
「あ、そうだ! ボクね、新しくできるようになったことがあるんだよっ」
エアがはいっと手をあげる。
「ん? どんなこと?」
「えーとね、“しょくぶつをせいちょうそくしんさせる力”……だったかな? 長老さまがそう言ってたよ!」
「それは……」
「おぉー、エアすごいね!」
エアに「すごいすごい」と言っているジークと、手放しでほめられて、誇らしげに胸を張っているエアが超可愛い。
「えへへ~。ねぇ、レン。ボクすごい?」
「あぁ。凄いぞエア」
いやホント凄いぞ。
“ほめてほめて”と顔に書いてあるエアの頭を撫でると、弾けるような笑顔になった。ジークが「ズルい、ぼくも」と言ってきたので、こちらも撫でる。
それにしても、しょくぶつをせいちょうそくしん……植物を成長促進させる力、か。
お、良いこと考えた。
「レンー、どこ行くの?」
俺は二人と手を繋いで歩きながら、あるところに案内した。まぁ、家の裏手なんだが。
家の裏手にはあまり目立たないが、畑があるのだ。今までは畑にまで手が回らなかったので、有効に活用出来ていなかった。だが、エアの能力を使うにはいいのではないだろうか。
「じゃーん、畑だ」
「はたけー?」
「畑ってなに?」
エアもジークも畑って言葉にピンと来ていないようだ。
……あれ、そういえば畑について教えたことってなかったか。
「簡単に言うと、野菜とか植物を育てる場所だ」
「そうなの? あ、じゃあ……」
「そうだ。エアの能力を使うのにちょうどいいと思ってな」
「わぁ、ボク頑張るねっ!」
エアが笑顔で拳を握るのに対し、ジークはプクッと頬をふくらませた。
「えー? それじゃあ、ぼくは何をするの?」
「ジークも畑だよ。種を植えたり、お水をあげたり、雑草を抜いたり……やることはいっぱいあるぞ~? エア一人でやるのは大変だからな。もちろん俺も一緒にやるよ」
「そっか。ならいいや」
まずは畑を使える状態にしないとな。
畑には元気に雑草が生えていた。
「レン~? あ、こんなところにいた~」
「家の裏手に畑があったのですね。知らなかったです」
「私も知りませんでした」
「みんな何してるの?」
ウィル、カルマ、シエル、ベルが畑にやって来た。俺たちが戻ってくるのが遅いので迎えにきたようだ。
俺たちは、ちょうど雑草をむしり終わったので、休憩しているところだった。腰が痛い。
腰をトントン叩きながら、四人を手招きする。素直に寄ってきた四人に周りへ座ってもらった。
「畑で野菜を作ろうと思ってな。今は畑を使える状態にしているところだ」
「えっ!? 野菜を作るんですか?」
「へ~、面白そうだね~!」
「レン、私たちもお手伝いしますね」
「ありがとうな。じゃあ耕すのを手伝ってくれるか?」
「はい。喜んで」
午後はずっとみんなで畑が使えるように耕したり、倉庫に置いてあった肥料を混ぜたりした。
幸いにも、元々畑はある程度整えられていたので、雑草を抜いたり、少し手入れをしたら使えるようになった。
「よし、完成!」
あとはお待ちかねのジークに野菜の種を渡して、植えてもらった。
うん。芽が出るのが楽しみだ。
ウィルとカルマには料理のお手伝い。
シエルとベルには掃除と洗濯のお手伝い。
そしてエアとジークには畑仕事のお手伝い。
まずは二、三日みんなの様子を見て、その後はローテーションでお手伝いしてもらうかな?
できれば、どれも一回は経験してもらいたい。だけど、今後どうなるかはまだわからない。得意なことを伸ばすか、不得意なことを無くすか……。
この経験が将来役に立てばいいんだけどなぁ。
でも家事ができる男はモテると思う。モテる……はずだ!
俺はそう信じている。




