第992話 「差し伸べられた手①」
愛読者の皆様!
『魔法女子学園の助っ人教師』第4巻が発売決定致しました!
詳細は決まり次第お報せ致します。
書籍版をまだお読みではない方は、第1巻~3巻を宜しくお願い致します。
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ヴァレンタイン魔法女子学園の下期始業式が終わった。
この始業式で、オレリー達2年生にとっては……
長いようで短い、3年間に渡る学生生活の折り返し地点を、通過した事となる。
始業式を終えた生徒達は、各々所属するクラスに戻り、ホームルームを行う。
しかし今日は、単に式典だけでは終わらない。
王国の学校殆どが、下期初日は式典のみ行い、すぐ帰宅扱いとなるのに。
だが……
魔法女子学園は他の学校に比べ、その点はシビアだ。
久々に会うクラスメート達と、長かった夏休み明けの『再会』を改めて楽しんだ後、早速下期の授業が始まるのだから。
2年C組も担任のフランから、ホームルーム終了の声が掛かると……
オレリーはすぐに立ち上がり、ジョゼフィーヌ、リーリャへ目くばせした。
当然、ジョゼフィーヌ、リーリャも「心得た!」とばかりに大きく頷く。
彼女達が受ける、本日第3時限目の授業は、午前11時開始の専門科目。
気合が入るのは当然で、ルウが担当する、魔法攻撃術B組なのである。
既に科目担当のルウと副担当のフラン、教師ふたりの姿は教室にはない。
授業の準備をする為に退出済みだ。
今回、魔法攻撃術の授業を受ける場所は、この本校舎教室ではなかった。
本校舎を出て、少し歩いた場所にある、広大な屋外闘技場なのである。
オレリー達3人は2階のロッカールームで、急いで運動用の法衣に着替え、本校舎を出た。
すると、本校舎の出入り口脇に、同じく運動用の法衣をまとった生徒がひとり立っていた。
……2年A組の学級委員長マノン・カルリエである。
マノンは、オレリー達へ向け、大きく手を振っている。
以前の険しさは消え、表情は穏やかだ。
穏やかどころか、満面の笑みを浮かべていた。
「オレリーさん、ジョゼフィーヌさん、リーリャさん」
「マノンさん、どうしたのですか?」
急いで駆け寄ったオレリーが尋ねると、マノンは「ぷくっ」と頬を膨らませた。
「どうしたもこうしたもありません! 貴女達を待っていたに、決まっているじゃないですか」
ええっと……
決まっていると言われても……別に、待ち合わせの約束などしてないし……
オレリーは、そう反論しようとしてやめた。
マノンの性格が、徐々に分かっていたからである。
なので、素直に謝罪した。
「ああ、ごめんなさい!」
「分かれば良いのです。下期の授業に関しては、貴女達とは殆ど一緒になりますからね。さあ行きましょう」
「ええ、行きましょうか」
「では、私が先導します。皆さんは、後をついて来て下さい」
オレリーは思う。
やはりマノンは、リーダーシップを取るのが、好きであると。
話していて、いつもすぐ主導権を取りたがるのは勿論の事、今も先頭に立ってどんどん歩いて行く。
手を思い切り前後に振って歩く姿は、まるで先陣を切る王国軍指揮官のようである。
屋外闘技場へ歩きながら、オレリーは記憶を手繰る。
朝……
学食に誘われたオレリー、ジョゼフィーヌ、リーリャの3人は……
マノン、ポレット、ステファニーから散々質問攻めにあった事を。
質問内容はといえば、主にルウの授業内容に関してであった。
確か、ルウは夏季休暇前に告げていた。
「俺の授業は基礎である呼吸法のおさらいと身体の鍛錬を行った上で、身体強化の魔法、そして属性に合わせた攻撃魔法という順番で学んで行く。ちなみに防御魔法も行使出来る者は希望を出せば攻撃・防御合わせた指導を行うから申請してくれ」
言葉通り、ルウがその次に行った授業は呼吸法の訓練だった。
だから今日のルウの授業は……身体の鍛錬をする筈なのである。
そもそもヴァレンタイン王国の魔法使いで、進んで身体の鍛錬を行う者など稀れなのである。
もしもそんな暇があったら、魔法式のひとつでも覚えて、発動のスキルアップをした方が遥かに「まし」だと、普通は考える。
しかしルウの授業で、身体の鍛錬が求められるのなら、話は別だ。
単位を取る為には、何か手立てを講じなければならない。
マノン達は、『ライバル』に対して悔しいとは思いながらも……
ライバル……すなわちルウの妻であるオレリー達が、既に魔法を含めた彼の『手ほどき』を充分に受けていると推測していた。
それ故ルウが授業において行うであろう、身体の鍛錬の『やり方』を、事前に聞き出そうとしたのである。
そもそもルウの授業は、従来の魔法女子学園のモノとはまるで違う。
マノン達は夏季休暇前の授業で経験し、充分認識していたから。
ちなみにポレットとステファニーは別組のC組でルウの授業を受けるので、今ここには居ない。
夏季休暇に入ってすぐ、オレリーは普段の修行の様子を話してくれた。
しかし!
オレリーは『真実』を全ては告げなかった。
家族だからこその、『秘密』というものがある。
さすがにまだ、マノン達へ『全て』を話すわけにはいかないのだ。
なので、鍛錬に関して、差し障りのない内容だけ伝えておいた。
伝えた内容とは……いわゆるストレッチと柔軟体操である。
オレリー達へ、マノン達が『取材をする事』を見越して、ルウの立てた『対策』であった。
今朝、学生食堂で話した際、オレリーから、
「休み前に話した通り、ストレッチと柔軟体操をたっぷりやるかもしれない」
と聞いた、マノン達は色めき立った。
予想がずばり当たった! からである。
オレリー達と別れた後に……
マノンが、ポレット&ステファニーと、『歓喜のハイタッチ』をしたのはいうまでもない。
3人は夏季休暇中、オレリーの言葉を信じ、ストレッチと柔軟体操を充分にやっていたのだ。
実際、マノンは調べてみて驚いた。
ストレッチと柔軟体操の効用は、魔法使いの能力アップに繋がるものが多いと。
マノンが読んだ本には、「あくまで著者のいち学説だ」と断った上で、たくさんの効果効能が書かれていた。
身体をほぐす事は勿論なのだが……
その他にも……
無理なく呼吸が出来るようになる。
血行が良くなる、つまり血と共に流れる魔力の巡りも良くなる。
集中力を高めるのに効果がある。
身体のバランスが良くなる。
怪我をしにくい等々……
何と!
全ての効果が魔法使いにとっては、プラスになる事ばかりなのである。
こうして……
改めてルウの着眼点に惚れ直した事、自分の『対策』がバッチリだった事もあり、マノンは機嫌が良く、尚更張り切っていたのだった。
いつもお読み頂きありがとうございます。
東導の別作品もお願いします。
☆『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』新パート連載中!
https://ncode.syosetu.com/n4411ea/
※『魔法女子学園の助っ人教師』とは微妙に違う
ヴァレンタイン王国における、のんびりスローライフな田舎ワールドです。
故郷に帰りたかった青年が謎の死を遂げ、15歳の少年になって異世界転生!
バトルは少々ありますが、基本は田舎の村で美少女達とスローライフ。
畑を耕したり、狩りをしたり、魚を釣ったり、結婚した美少女達と日本の昔遊びなど。
スローライフ最中、自らの転生の謎を解き、様々な人々と、出会い&別れを繰り返す。
結果、逞しい『ふるさと勇者』へと成長して行く話です。
☆『隠れ勇者と押しかけエルフ』
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深き深き地下世界で……
怖ろしい悪魔王により、父と一族全員を殺されたダークエルフの姫エリン。
穢されそうになったエリンを、圧倒的な力で助けたのは謎の魔法使いダンであった。
※両作品とも本日3月12日朝、更新予定です。




