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第982話 「テオドラの復活⑦」

愛読者の皆様!

『魔法女子学園の助っ人教師』最新刊第3巻が発売中です。

ぜひお手に取って頂ければと思います。

笑顔のジョゼフィーヌとオレリーの表紙が目印です。

※店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。


何卒宜しくお願い致します。

 ウッラとテオドラはブランデル邸を出ると、隣に建つドゥメール邸を横目で見ながら、中央広場へと向かって歩く。

 王都に来て、まだ日が浅いウッラではあるが、さすがに自分の住んでいる家の周辺は熟知していた。


 「すたすた」歩くウッラの後を、テオドラは俯き加減で歩いて行く。

 かつて精神体として、ルウと共に在ったテオドラではあるが……

 ただ見ているのと、実際に王都を歩いて体験するのでは大きな違いがあった。

 ふたつに分離した魂が、ルウにより修復され、ひとつになった影響もあるのだろうか。

 以前、精神体アストラルであった頃の記憶が曖昧で、冒険者ギルドへの道筋もはっきりと確信が持てないのだ。


 と、その時。

 いきなり前から声が掛かる。


「おい、テオドラ、大丈夫か?」


 声を掛けて来たのは、ウッラであった。

 いつの間にか足を止め、振り返ってテオドラを見ている。

 とても心配そうな表情をしていた。


 テオドラは吃驚してしまった。

 先程のやりとりで、ウッラは自分に対して好印象を持っていないと思ったからだ。

 否、好印象どころか……絶対に自分を嫌な女……だと思っているだろう。

 

 なのに、どうして?

 と、つい考えてしまう。


 その為か、テオドラは、ちゃんとした受け答えが出来ない。


「あ、ああ……」


「悪かった、もう少しゆっくり歩こう」


 何故かウッラは怒りもせず、僅かに微笑むと、今度はゆっくりと歩き出した。


「…………」


 テオドラは呆然として、ウッラの背中を見ていたが、慌てて歩き出す。


 ヴァレンタイン王国王都セントヘレナの貴族街区は、貴族の住む大きな屋敷と、小さな公園のような広場が混在する造りとなっている。

 ウッラとテオドラは、少し時間を掛けて、ゆっくり貴族街区を抜けた。


 歩いていた、ふたりの視界が、いきなり開ける。

 見れば、前方は大きな円形の場所が広がっていた。

 石畳が敷かれたこの場所は、行き交う人も多く、遠くには何か市場らしきものも見える。

 また大きな道が何本も放射線状に延びており、ウッラ達は貴族街区に通じる道からやって来た事になる。


 これが、ヴァレンタイン王国王都セントヘレナの中央広場である。


 真ん中には大きな建物がそびえており、これが確かヴァレンタイン王国の王宮だ。

 テオドラは、王宮を見上げた。


 結構、大きい……と思う。

 だが、故国ガルドルド魔法帝国の巨大な王宮に比べれば……まるで小屋のようだとも感じる。


「テオドラ、こっちだ」


「あ、はい!」


 良かった!

 声が出た。

 反応出来た。


 素直に返事をする事が出来て、テオドラはホッとした。

 「ちらっ」とウッラを見る。

 姉ソフィアからは、屋敷に居る者達の詳しいプロフィール、そして何故ブランデルの屋敷へ来たのか、理由等はまだ教えて貰ってはいない。

 もしも話してくれるのなら、直接本人から事情を聞いた方が良いとも、姉からは言われた。

 目の前のウッラにしても……妹パウラと双子のダンピール姉妹。

 テオドラの知識は、ただそれだけなのだ。


 そのウッラが、少し前で手招きしている。

 冒険者ギルドは、中央広場を起点にしたら東南の位置にある。

 テオドラの記憶でも、間違いない。


 ウッラとテオドラは今度は横並びになり、東南の方角へ向かって歩いて行った。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 中央広場を歩く、ウッラとテオドラ。

 と、いきなり大声が。

 どうやら、若い男のようである。


「お~い、ウッラじゃないか」


 ふたりに声を掛けて来たのは、鋼商会カリュプスのニーノ・カピッツィであった。


「ふん! 何だ、誰かと思えば……お前か、ニーノ」


 吐き捨てるように言うウッラを見て、ニーノは大袈裟に肩を竦める。


「はぁ、相変わらず愛想がねぇな。昔っから女は愛嬌って言うじゃんよ」


「うるさいな、余計なお世話だ。そんな言葉は年寄りのたわごと、さっさとゴミ箱にでも捨てておけ」


「かぁ~、愛想の無さに加えて、口もめっぽう汚いと来てる。そんな可愛い顔して勿体ねぇよ」


 ニーノから「可愛い」と言われ、ウッラは顔が真っ赤になった。

 

 初心な少女のような表情を見せるウッラ。

 テオドラは思わず笑いそうになってしまう。

 ウッラは赤くなったのを隠したいのか、顔を「ぶんぶん」横に振って叫ぶ。


「う、うるさいっ! 本当に余計なお世話だ」


 怒るウッラだが、どうやらニーノは、もう「慣れた」らしい。

 今度はテオドラを見て、「ほう」と息を吐く。

 どうやら、テオドラが法衣ローブ頭巾ドミノを深く被っていたので、最初は誰なのか気付かなかったようである。


 何故か、テオドラの顔を見てにっこりする。


「あれ、そういえばソフィアちゃんも一緒か? これは失礼。いつも俺っちを見たら先に挨拶して来るからさ」


 ニーノ・カピッツィというこの若い男……

 テオドラは、何となく知っているような気もするが……思い出せない。


「…………」


 反応しないテオドラを見て、とっさにウッラがフォローする。


「いや、この子はテオドラだ。ソフィアの双子の妹で、理由わけあって今迄離れて暮らしていた」


「へぇ、そうなんだ。でもソフィアちゃんの妹だけあって、可愛いな。無口なのかい?」


 ニーノの笑顔は人懐っこい。

 しかしテオドラは、人一倍警戒心が強かった。

 初対面の男と、馴れ馴れしく話す事など出来ない。


 以前のソフィアも全く同じであったが、ブランデル家の使用人として働くうちに鋼商会の者とは顔なじみになっていたのである。

 ニーノとも、普段は気軽に挨拶を交わしていた。


 ここでまた、ウッラが助けてくれた。

 パッと飛び出し、ニーノの前に立ちふさがったのである。

 まるでテオドラをかばうように。


「馬鹿者! お前が初対面なのにずうずうしいから、吃驚しているのだ。いたいけな女子を脅かすな」


「うっわ! ひっで~な。そんな事しないって!」


 ウッラから叱られたニーノは、心外だという表情である。

 但し、怒っているわけではなく、苦笑していた。


「ウッラ、誤解だぞ。俺っち、テオドラちゃんみたいな可愛い女子には優しいんだ」


「はぁ? 何が可愛い女子には優しいだぁ? おい、ニーノ。悪いが、お前の戯言ざれごとを聞いている暇はない。これからミンミ奥様の下へ行かねばならぬのだ」


 ウッラはそう言うと、いきなりテオドラの手を掴んだ。

 そして「ぐいっ」と引っ張り、脱兎の如く駆け出していたのであった。

いつもお読み頂きありがとうございます。

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