第981話 「テオドラの復活⑥」
愛読者の皆様!
遂に1月25日に、
『魔法女子学園の助っ人教師』第3巻が発売されました。
ぜひお手に取って頂ければと思います。
笑顔のジョゼフィーヌとオレリーの表紙が目印です。
※店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。
何卒宜しくお願い致します。
いろいろと、ドタバタはあったが……
ウッラとテオドラは、急いで着替えると、すぐにブランデル邸を出発した。
ルウから命じられたのは……
冒険者ギルドの王都支部でマスターのミンミに会い、その後は金糸雀に寄って、予約した焼き菓子をピックアップ。
更に、店に併設されたカフェで、ふたり一緒にお茶を飲んで帰って来る。
という……まるで、子供が行くお使いのような仕事である。
一方、モーラルはソフィア、パウラと共に大広間でお茶を飲んでいた。
美味そうに紅茶をすする、モーラルの顔を見たソフィアが、何故か大きくため息をつく。
「はぁ……モーラル様」
元気がないソフィアに対し、モーラルは笑顔である。
「何? ソフィア」
ソフィアは再び、ため息をつくと、モーラルへ問う。
「あの……ウチの妹、大丈夫でしょうか?」
先程見せたテオドラの態度は、とても高圧的であった。
ルウ以外の指示は絶対に受け入れないという、頑なな態度が表れていた。
ソフィアは、そんな妹の不器用さが心配である。
更には、ルウとモーラルが、まだ王都に不慣れな妹を使いに出す『意図』も知りたい。
ソフィアの質問が終わるや否や、パウラも追随する。
「モーラルさん、ウチの姉もですよ」
ソフィアとパウラは真剣であった。
切羽詰まった様子がありありだ。
真っすぐな眼差しが何かを訴えるように、モーラルを見つめている。
対して、モーラルは全く表情を変えない。
「……ふたりとも何を心配しているの」
モーラルの質問を聞いて、よくぞ聞いてくれたという表情をするふたり。
まずはソフィア、
「だって、テオドラったら、凄く偉そうで生意気です。ウッラさんと話してから、醸し出す険悪な雰囲気は危険です。あのふたり……また絶対に喧嘩しますよ」
そしてパウラも、
「いいえ、ウチの姉こそ、そうです。大体が、いきなりテオドラさんへ、新参者とか言うなんてとっても失礼ですよ。最近ちょっと変わったかなと思いましたけど……やっぱり駄目です。テオドラさん以上に短気ですから」
ふたりの話を聞いたモーラルは、ゆっくりと紅茶を飲み干す。
飲んでいるのはブランデル家御用達の品で、香りが芳醇、且つ値段もリーズナブルな茶葉だ。
その茶葉を熱め適温の湯で淹れた紅茶が、モーラルの大が付く好物なのである。
「うふふ、ふたりともさすが双子の姉妹ね、よ~く分かっているじゃない?」
全く慌てないモーラルを見て、ソフィアとパウラは首を傾げる。
「モーラル様も、テオドラとウッラさんの能力は分かっているでしょう? ならば、どうして?」
「そうです。あのふたりの力を考えたら凄く危険です。この王都で、もし見境なく暴れでもしたら、大騒ぎになりますよ」
「その通りね」
ソフィアとパウラの心配を、モーラルはあっさり肯定。
笑顔で頷くのを見て、ソフィアとパウラはもう黙っていられなかった。
身を思い切り乗り出して、モーラルへと迫る。
「だ、だったら! い、今から私達が出ます!」
「すぐ追いかければ間に合いますっ、ふたりと一緒に行きますっ!」
しかし、モーラルは首を振る。
「それは、絶対に駄目」
どうして止める?
ウッラとテオドラのふたりが、一番言う事を聞くルウは不在なのだ。
で、あれば身内の姉妹が行くしかない。
「え? 何故ですか?」
「そうですよ、急がないと!」
ソフィアとパウラは、完全に目の色を変えていた。
最も近しい身内だから、ふたりの性格を一番良く知っている。
短気なウッラとテオドラの事だ。
万が一、喧嘩して、歯止めがきかなくなったら……
王都の建物を、派手に壊すかもしれない。
そうなれば騎士や衛兵も駆け付けてくるだろう。
野次馬もいっぱい出る。
下手をすれば、巻き添えで死人が出てしまうかもしれない。
しかしモーラルは笑顔のままだ。
「貴女達、姉妹なら分かるでしょう? あのふたりは良く似た者同士……きっと相性が抜群なの」
「???」
「???」
あんな喧嘩をした、ウッラとテオドラの相性が抜群?
この人は……何を一体、言っているの?
ソフィアとパウラは盛大に?マークを飛ばしながら、ポカンとしてしまった。
唖然として、モーラルを見ていた。
片や、見つめられたモーラルは、相変わらず面白そうに微笑んでいる。
「うふふ、そう、旦那様が仰ったわ。だから大丈夫!」
ルウまでが?
どうして?
余裕たっぷりなモーラルに対し、固まってしまったソフィアとパウラ……
微妙な沈黙が、屋敷の大広間を支配する……
「…………」
「…………」
黙ったままのソフィア達へ微笑みながら、モーラルはカップをテーブルに戻した。
そして、ゆっくりと立ち上がる。
「さてと……美味しい紅茶も飲んだし、……そろそろ行こうかしら」
「え?」
「モーラルさん、どこへ?」
モーラルが出掛ける?
こんな時に?
どこへ?
そんなソフィアとウッラから、疑問の視線を受け止めたモーラルは、
「ええ、私が姿を消して、あのふたりを見守るから」
「え?」
「モーラルさんが?」
「だから安心でしょ? 任せてくれる? じゃあね」
モーラルは「にっこり」笑うと、ピンと指を鳴らす。
その瞬間、シルバープラチナ髪の美しい少女の姿は、あっという間に消えていたのであった。
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☆『隠れ勇者と押しかけエルフ』
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深き深き地下世界で……
怖ろしい悪魔王により、父と一族全員を殺されたダークエルフの姫エリン。
穢されそうになったエリンを、圧倒的な力で助けたのは謎の魔法使いダンであった。
※本日2月5日朝、更新予定です。
何卒宜しくお願い致します。




