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第980話 「テオドラの復活⑤」

愛読者の皆様!

遂に1月25日に、

『魔法女子学園の助っ人教師』第3巻が発売されました。

ぜひお手に取って頂ければと思います。

笑顔のジョゼフィーヌとオレリーの表紙が目印です。

※店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。


何卒宜しくお願い致します。

 モーラルは、更に補足説明をする。

 説明とは言っても、所詮簡単な注意レベルであるのだが……

 しかしモーラルが話す間、ウッラとテオドラはお互いに見向きもしなかった。

 ふたりとも、それぞれずっと、モーラルの顔を真っすぐに見つめていたのである。


 やがて説明は終わった。

 モーラルは、ウッラとテオドラへ、法衣ローブに着替えて出かけるよう指示をしたのである。


 ウッラの妹、パウラは微笑みながら思う。

 自分と別行動をする事に、少し不安はあるが……

 姉は変わった。

 

 あの日……

 王都見物をした時に……モーラルが姉を大切な友だと言ってくれた日から……

 なので、もう大丈夫だと思うのだ。


 そんな妹へ、姉ウッラは言う。


「パウラ、見送りは不要、たかがお使いじゃないか。」


「了解、姉さん」


 返事をするパウラへ、ウッラは鼻を鳴らす。

 そしてテオドラへ向き直る。


「ふん、新参者、良いか? さっさと着替えて、10分後に大広間へ集合だ」


 ウッラは普段から『上から目線』で、誰にでも高圧的な物言いをする。

 現在、屋敷ではテオドラが一番の新米だから、尚更だ。

 世間一般では、『先輩の言い方』として、よくあるものかもしれなかった。

 だが、テオドラはカチンと来たらしい。


「こら、ダンピール! 新参者ではない! テオドラという名で呼べ」


 言い返すだけなら、良かった。

 しかしテオドラは、ウッラにとって『禁断の言葉』を告げてしまった。

 だからウッラも黙ってはいられない。


「何! ……貴様、今、私をダンピールと呼んだな」


「呼んだがどうした? 紛れもない事実だろう?」


 平然とするテオドラに対し、ウッラは悔しそうに唇を噛み締める。


「ああ……事実だ。しかしお前こそ、私を名前で呼べ」


「ふん!」


 鼻を鳴らしてそっぽを向くテオドラ。

 しかしウッラは、怒りを爆発させずに何とか踏み止まる。


「まあ、一回だけは許してやる。だが今後、再び呼んだら容赦しない」


 テオドラを注意するウッラを見て、パウラは吃驚した。

 変わったとは思っているが、短気な姉が今の『侮辱』に対し、良く耐えたと思うからだ。


「ほう! ダンピールめ、どう容赦しない? やって見せろ」


 しかしテオドラは平然としており、全く悪びれなかった。

 テオドラの姉ソフィアは、「はらはら」して見つめている。

 挑発まで始めたテオドラに呆れ、さすがにモーラルが手を挙げた。

 先程、口論を止めたのと、全く同じである。


「待て! やめろ、ふたりとも。今のは両名が悪い。まずウッラ、新参者ではなく、テオドラの事をちゃんと名前で呼べ」


 意外にも、モーラルはウッラを叱った。

 『味方』が増えたと感じたテオドラは、ますます勝ち誇る。


「ほうら、見ろ」


 ぺろっと、舌まで出すテオドラに、ウッラは拳を握り締め悔しがる。

 だが、手を出さずに堪えている。


「くううう……」


 モーラルは、ウッラを見て優しく微笑むと、テオドラに向き直る。

 そして、一段と厳しい声を出した。


「テオドラ!」


 鋭い声で呼ばれたテオドラは、呆気に取られていた。

 いきなり、足元をすくわれたという表情だ。


「な、何ですか?」


 そんなテオドラへ、モーラルはきっぱりと言い放つ。


「確かにウッラも悪いが、それ以上にお前は悪い」


「な!?」


 驚愕するテオドラを、モーラルは厳しい表情で見つめている。


「言っておくが……二度と仲間をそのように蔑称で呼ぶな。もしも呼んだら、ルウ様は、お前と縁切りするだろう」


「え? 縁切り!?」


 想定外の言葉に、目を丸くし、口をパクパクするテオドラ。

 動揺する様は、まるで生身の人間のようだ。

 ガルドルドの技術は、とてつもないものである。


 目を細めたモーラルは、更にぴしりと言う。


「そうさ、ウッラもお前も人間だ。私もソフィアもパウラもそうだ。それを絶対に……忘れるな」


 半魔ダンピールも、仮初の肉体を持つ自動人形オートマタも、人間。

 そして夢魔モーラも人間……

 ブランデルの屋敷では、この部屋に居る者は全てが『人間』なのだ。

 多分、ルウの考えでもあるのだろう。


 深い意味を持つらしい、モーラルの言葉を聞き、テオドラは項垂れてしまう。


「…………」


 無言になったデオドラに対し、モーラルは言う。


「テオドラ、返事は?」


「は、はい……」


「ならば、まずウッラに謝罪しろ。そして改めて言うが、今回の『仕事』はウッラの指示に従え」


「…………」


「念を押すぞ、ウッラの指示をルウ様や私の指示だと思え」


「…………」


 相変わらず、無言のテオドラ。

 モーラルの顔が、僅かに怒りで歪む。


「全てルウ様の指示だ。どうした? 従えないのか?」


 散々、促されて渋々といった感じで、テオドラは返事をする。

 声が、酷く掠れていた。


「分かりました……」


 しかし、気持ちを整理したのだろう。

 ウッラに深く頭を下げる。


「ウッラ……殿。……済まない……以後、気を付ける」


 対するウッラの対応は、


「……テオドラ、私も悪かった」


 何と、同じくらい深く頭を下げたのだ。

 驚いたのは、傍でやりとりを見守っていたパウラである。


「え? 姉さん!」


「どうした、パウラ」


 声が大きくなったパウラを見たウッラは、優しく微笑んでいた。

 やはり!

 姉は……変わった。

 それも劇的に。

 

 だが、ここで確かめるのは、けして良いタイミングではない。


 パウラは、姉に尋ねたい気持ちを無理やり飲み込む。

 そして首を横に振る。


「いえ、何でもありません……」


 そろそろ、頃合いと見たのだろう。

 ウッラが、出発を宣言する。


「では、モーラル。着替えたら、行って来る。さっきも言ったが見送りは不要だぞ」


「行ってらっしゃい」とパウラ。

「気を付けてな」とモーラル。


 最後にソフィアが頭を下げる。


「ウッラさん、妹をお願いします」


 ウッラは手を振りながら、部屋を出て行った。

 部屋に残されたテオドラは…… 


「……じゃあ、姉さん、私も着替えるわ」


 掠れた声で言うと、大きなため息をついた。


 やはりテオドラは、元気がない。

 今の顛末がルウに伝わる事を、とても気にしているらしい。

 もしや嫌われてしまうのではないかと……


 ソフィアは、また妹が心配になってしまう。


「テオドラ、気を付けて。ウッラさんの言う事を良く聞いて」


「…………」


 モーラルが用意した法衣ローブに、無言で着替え始めたテオドラを、ソフィアは不安そうに見つめていたのであった。

いつもお読み頂きありがとうございます。

東導の別作品もお願いします。

『負けません!くじけません!猫☆魔女さん、奮闘します!』


https://ncode.syosetu.com/n1564ek/


※アイディール王国王都在住の駆け出し魔法使いパティは愛くるしいが、小柄でやせっぽっちな女の子。既に両親も亡くなり、ひとりぼっちで暮らしている。だけどパティはいつも元気、そして大きな夢があった。それは、生まれ育ったそよ風通りを昔のように、にぎやかな活気に満ちた通りにする事。しかし、その夢も風前のともしびである……違法すれすれな借金を理由に、そよ風通りの強制立ち退きを迫る愚連隊『赤蠍団』の女ボス、カルメンから連日、嫌がらせをされていたからだ。鬱屈した日々を送るパティはある日、王都の裏通りで瀕死となった一匹の白黒ぶち猫を拾う。しかし、その猫の正体は……こうしてパティの運命は大きく変わり始めた……


宜しかったら、読んでみて下さい。

本日2月2日朝更新です。

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