第979話 「テオドラの復活④」
愛読者の皆様!
遂に1月25日に、
『魔法女子学園の助っ人教師』第3巻が発売されました。
ぜひお手に取って頂ければと思います。
笑顔のジョゼフィーヌとオレリーの表紙が目印です。
※店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。
何卒宜しくお願い致します。
テオドラが睨み付けても、モーラルは全く動じずに話を続けている。
「でも今の貴女は違う……理に縛られた召喚対象ではなく人間であり、私達の家族だもの」
「で、でも!」
テオドラは反論する。
否!
しようとしたが、叫んだだけで、その後の言葉が出ない。
何と言ったら良いのか……分からないのだ。
ただ、ルウの傍に居たいだけなのに!
忠実に、仕えたいだけなのに!
私だって、同じ従士の筈なのに!
モーラルは……
何故、邪魔をするのだろう?
どうして意地悪をするのだろう?
理由を、ちゃんと教えて欲しい。
そう、テオドラの目は強く強く語っていた。
「テオドラ、大丈夫、安心して。ルウ様のおそばに居なくとも従士の役目は果たせるわ」
「従士の役目が? モーラル様、貴女にどうして分かるのですか?」
テオドラは、分かっていながら聞く。
仕方がない。
それが、唯一の抵抗出来る方法と言葉だから。
返って来たのは……やはり、テオドラが予想した通りの答えである。
「何故ならば……私が……そうだから。貴女と同じ道を歩んで来たから、はっきり言えるわ、従士の先輩としてね」
「…………」
「まあ全てが一緒じゃあないけれど……貴女と私はルウ様と過ごした時間もほぼ同じ。だから分かるのよ」
「…………」
ルウと一緒に居た時間も同じ……テオドラが特に強調したい部分まで、『無効化』されてしまった。
こうなるともうテオドラに、抗う術はない。
道は完全に、閉ざされてしまった……
ここでモーラルは「にこっ」と笑う。
今迄とは全く違った、明るい晴れやかな笑顔である。
「大丈夫! 貴女には新たな仕事が命じられているから」
「え?」
新たな仕事?
何だろう?
驚くテオドラ。
ソフィアが、思わず庇う。
「モーラル様。い、妹は、先ほど身体が本調子に戻ったばかりです。ルウ様はそれをご承知なのですか?」
「ソフィア、姉の貴女にも分かるはず。この子はルウ様の為に生きたい。その思いが強すぎる。だからとりあえず、何かをさせた方が良いの」
「で、でも……」
ソフィアにも分かる。
テオドラは、ルウへ依存し過ぎている。
このまま何もしないと、気持ちが不安定になってしまうだろう。
口籠るソフィアへ、モーラルは言う。
「安心して、テオドラにはお使いに行って貰うだけだから」
モーラルの言葉を聞き、吃驚したのはテオドラだ。
「お、お使い? この私が?」
「ならば尚更です。テオドラはまだ、この王都の勝手が分かりません」
ソフィアも首を振った。
来たばかりのテオドラを、王都の街中へすぐ出すなどありえない。
そう思ったようだ。
しかし、モーラルは譲らない。
今迄の、テオドラのした経験を知っているようだ。
「いや、精神体としてルウ様と一緒に居たテオドラは王都のイメージだけは掴んでいる筈だ。そうだな? テオドラ」
「……はい! おぼろげですが、アンノウンで居た頃の記憶はあります。王都の様子は分かります、大丈夫です」
モーラルの問いかけに対し、テオドラは肯定した。
『出来ない子』だと思われるのが嫌なようである。
だが、姉のソフィアは、同意出来ない。
愛する妹が心配でならない。
アンノウンでいた頃の記憶?
そんな曖昧なモノで、妹をこの街へ出す?
「で、でも……」
「ソフィア、安心しろ。そこはルウ様もきちんと考えていらっしゃる。ここに居るウッラを同行させるから」
「へ?」
「え? 姉さんを? テオドラさんと?」
今度はウッラとパウラが驚く。
どうやらモーラルから、何も聞いていないらしい。
そんなダンピール姉妹に構わず、モーラルは一方的に告げて行く。
「ウッラ、お前はテオドラを連れて、ミンミ姉の下へ行け。ミンミ姉と話したら、金糸雀に頼んである、おみやげの焼き菓子を受け取り、この屋敷へ戻る。ただこれだけの仕事だ。お前なら容易いだろう?」
話の流れで……
「2か所への使いなど、楽勝だろう?」と聞かれたウッラは、即座に肯定する。
「ま、まあ簡単だ」
「それに金糸雀に行ったら、ふたりでお茶を飲んで来ると良い。カフェに予約を入れてあるから、所要時間をきっちり計算して動くのだぞ」
「りょ、了解だ」
とりあえず、ウッラは『仕事』を引き受けた。
しかし、テオドラは不満そうである。
「ちょっと待って下さい、モーラル様」
「どうした? テオドラ」
「良く考えたら、たかが使いなど、私には不十分な仕事です。その子の言う通り、簡単すぎます。本当にルウ様の指示なのですか?」
ジト目で、モーラルを見るテオドラ。
しかしモーラルは、表情を全く変えない。
嘘偽りなど、全くないという雰囲気である。
「ああ、本当だ。疑うのなら夜、お戻りになったら聞いてみるが良い」
「……分かりました。だが……こんな仕事は私、ひとりで充分。彼女は……不要です」
テオドラの言葉を聞いて反応したのが、ウッラである。
「な、何! それはこっちのセリフだ。こんな病み上がりの新参者など居なくとも、使いなど私ひとりで充分だ」
「何? 私が病み上がりの新参者ですって! 失礼ですよ」
ウッラとテオドラの口論が始まった。
モーラルは苦笑し、手をさっと挙げる。
「ストップ! 待て、ふたりとも……今回はウッラとテオドラ、このふたりで行けというルウ様の指示だ」
「むむむ、ならば我慢する。新参者の面倒を見てやる」
「我慢? 面倒を見る? それこそ、こちらのセリフです……ルウ様の命令ならば、お受けするしかありません」
顔をしかめたウッラとテオドラは、相手をじろりと一瞥すると、仕方なく頷いたのであった。
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