第978話 「テオドラの復活③」
愛読者の皆様!
遂に昨日1月25日に
『魔法女子学園の助っ人教師』第3巻が発売されました。
ぜひお手に取って頂ければと思います。
笑顔のジョゼフィーヌとオレリーの表紙が目印です。
※店頭にない場合、天候の関係で入荷が遅れている場合は、恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。
今回の更新分から通常版へ戻ります。
何卒宜しくお願い致します。
「ソフィア、私よ。ウッラとパウラも一緒なの。入って良い?」
扉をノックしたのは、モーラルであった。
彼女は先程、ルウと共に姉妹の機体を『調整』してくれた恩人である。
ルウの妻ではあるが、元々はテオドラと同じ従士でもある。
テオドラは「ぜひ話をしたい」と考え、大きく頷いていた。
ソフィアは、傍らに居る妹の意思を確かめると、大きい声で返事をする。
「はい! どうぞ」
ソフィアの返事に応え、ゆっくりと扉が開く。
まずシルバープラチナ髪の美しい少女が部屋に入る。
続いてウッラとパウラも……
魔法により瞳の色をルビー色から碧眼へ変えた、これまた美しい金髪のダンピール姉妹も、後から入って来た。
じっと3人を凝視するテオドラへ、モーラルは優しく静かに微笑む。
「うふ、テオドラ、どう具合は? ……ほんの応急処置で悪いけど」
具合?
言うまでもないと、ばかりにテオドラは答える。
「はい! 全く問題ありません。姉から聞きましたが、モーラル様は昨夜ルウ様と共にアシェイリーまで行かれたとか……わざわざ、ありがとうございました」
「お安い御用よ、私達は家族だから」
「家族ですか、ありがとうございます。……ルウ様からも言われました」
ルウから家族と言われ、テオドラは嬉しかった。
「一生忘れられない言葉だ」と思う。
噛み締めるように繰り返すテオドラへ、モーラルは言う。
「旦那様の仰る通りよ。……それに貴女と私は良く似ている。ルウ様と過ごした経歴と立場がね」
「私が? モーラル様と?」
聞き直すテオドラ。
モーラルは、小さく頷く。
「そう……でも従士という立場はともかく、経歴なら私達だけじゃない。貴女の姉さんも含め、この家の者は皆、そう。数奇な運命により、ルウ様と関り家族になった者ばかり」
数奇な運命……
そうだ。
確かに、モーラルの言う通りなのだ。
目の前の、姉ソフィアにしてもそうだ。
姉からは……ルウの屋敷へ来た顛末を聞いた。
あの大破壊の日、何と!
姉が、怖ろしい悪魔アスモデウスに助けられていたとは思わなかった。
それだけは感謝する。
悪魔の事だから、どうせきまぐれにせよ、姉の命を助けてくれた事だけは……
その悪魔がルウに倒され、忠実な従士となった。
しかし従士となった悪魔は何をとち狂ったのか、信じられない事に、姉を怪しいオークションに出品したのだ。
出品された姉を、ルウは大金を出して買い戻してくれたという。
結果、姉はこの屋敷へ来た……
そんなの絶対に許せない!
話を聞いたテオドラは憤った。
姉から悪魔アスモデウスの『気持ち』を聞いても一切理解出来なかった。
まるで……
飽きた道具のように、あっさり姉を売るなんて!
万が一、見ず知らずの変な奴の手に渡っていたら、二度と会えないどころか、どんな辱めを受けていたか分からない。
自分を虜にしていたネビロス共々、その悪魔に会ったら、絶対にやっつけてやろうと思う。
それより!
肝心のルウは?
姉からは「魔法女子学園に居る」と教えて貰ったが、改めてモーラルへ確認したかった。
「モーラル様…………ルウ様は?」
「旦那様は……お仕事よ」
「やはりそうですか……姉から聞きました。魔法……女子学園に行かれているのですね?」
姉の言う通りだった。
テオドラの言葉を裏付けるように、モーラルは告げる。
「そうよ。フラン姉、アドリーヌ姉と一緒にね……教師の仕事なの」
「何となく覚えています。ならば……私も、行かなければ」
事実がはっきりすれば、テオドラのやる事はひとつ。
主である、ルウに付き従わなければならない。
絶対に離れてはいけない!
そう思う。
しかし、モーラルは首を横に振る。
「いいえ、学園には行かせません。貴女には別の仕事があるわ」
学園に行かせない?
そんなの理不尽。
何者も私を止められない。
姉も、モーラルも。
テオドラに命令出来るのは、ルウただひとりだけなのだから。
「いいえ、モーラル様。私は忠実な従士。従士たる者、常にルウ様のおそばに居なくては!」
「ええ、従士の務めは私にも分かる……でもね、テオドラ。貴女は今迄のアンノウンではない。もう、貴女はひとりの人間、本来あるべき姿に戻ったの」
アンノウンの時の、おぼろげな記憶でテオドラには分かる。
目の前のモーラルは、元々ルウの従士で今は妻。
正体は……怖ろしい夢魔モーラである事も。
「それがどうしたというのです。人間であろうとアンノウンであろうと、従士として果たす役割は変わらない筈」
「いいえ、変わるわ。アンノウンは所詮、精神体。召喚された者として付き従うというよりは召喚者から離れられない存在、つまりルウ様に縛られていたのよ」
「え? 私が? ルウ様に縛られていた?」
モーラルは一体何を言っているのだろう?
テオドラは疑問に思う。
首を傾げる。
だが、モーラルは言葉を改めたりしない。
「ええ、そうよ。絶対にそのような事はないけれど……もしルウ様が貴女を不要である、そう望んでも貴女は離れられなかった……それが、この世の理なのだから」
「…………」
召喚の理を告げられ、テオドラは黙り込んでしまう。
さすがに……認めざるをえない。
ルウの傍に、付き従う根拠があっさり突き崩される。
何故 駄目なの?
この切ない気持ちを持って行けるのはどこ?
だが、反論……出来ない。
理屈が、言葉が見つからない。
もどかしい感情が生まれ、さざなみのようにテオドラの心を乱れさせる。
ついテオドラは、モーラルを思いっきり睨み付けていたのであった。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
東導の別作品もお願いします。
☆『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』新パート連載中!
https://ncode.syosetu.com/n4411ea/
※『魔法女子学園の助っ人教師』とは微妙に違う
ヴァレンタイン王国における、のんびりスローライフな田舎ワールドです。
故郷に帰りたかった青年が謎の死を遂げ、15歳の少年になって異世界転生!
バトルは少々ありますが、基本は田舎の村で美少女達とスローライフ。
畑を耕したり、狩りをしたり、魚を釣ったり、結婚した美少女達と日本の昔遊びなど。
スローライフ最中、自らの転生の謎を解き、様々な人々と、出会い&別れを繰り返す。
結果、逞しい『ふるさと勇者』へと成長して行く話です。
本日1月26日朝、更新予定です。




