第975話 「特別閑話 オレリーの宝物」
本日1月23日から、書籍版発売日の1月25日まで3日間、
『魔法女子学園の助っ人教師』第3巻
発売記念の特別閑話をお送り致します。
※書影及びカラー口絵、イラスト数点を公開致しました。
活動報告にアップしております。
ぜひご覧下さい。
何卒宜しくお願い致します。
オレリーには、肌身離さず身に着けている宝物がある。
愛するルウから託された、魔道具且つ護符である、銀製のペンタグラムだ。
元々は召喚魔法の授業で使用する教材であったが、金製が金貨30枚、銀製でも金貨10枚と非常に高価であった。
日々の生活に窮するオレリーは、そんな大金の持ち合わせなど無い為に購入出来なかった。
だが、ペンタグラムはどうしても必要な教材の為……
悩み抜いたオレリーは、魔法女子学園にばれないよう内緒のアルバイトをして、購入資金を稼ごうとした……
その為に、奴隷に売られそうになるという、人生最大の危機に陥ってしまったのではあるが。
幸いオレリーはルウとモーラルによって救われ、王都で無事に生活している。
母アネットと共に、元子爵夫人ドミニク・オードランの屋敷に住み込みで働いているのだ。
今日も無事に仕事が終わり、もう寝る時間である。
隣のベッドで、アネットはもう寝息を立てていた。
基本的に控えめな性格のオレリー。
彼女が秘めていた自分の気持ちを、ルウへ告げる事が出来たのは、あの『事件』がきっかけである。
しかし……
あんな怖い思いは二度としたくないと、オレリーは思う。
それに、これからはルウが居る。
ルウが託してくれた、この『宝物』がある。
オレリーは「そっ」とペンタグラムを触った。
使い込まれた銀製の魔道具は、金属特有の冷たい感触を返して来る。
このペンタグラムは、愛するルウの師匠の形見だという。
それだけでも恐れ多いし、何度思い返しても感激してしまう。
ペンタグラムに関して、基本的な知識を持っていたオレリーではあったが……
良い機会だと考え、更に詳しく調べてみた。
すると、いろいろな事が分かって来た。
そもそもこのペンタグラムは魔法使いの間では、護符としてあまりにも有名な魔道具だ。
だが護符として使うだけではなく、魔法使いの気力を上げる効果もあるという。
一説によれば、この独特な図形は、魔力の構成数、エレメンタルの数、人間の形状と感覚を表すらしい。
中でも、上部に突き出た光芒は偉大なる救世主を差すものだという。
術者が五芒星の形に宙を切る事で、その救世主からの加護が増すというのだ。
すなわち偉大なる救世主の力により、邪な存在の力を封じ、従わせる事が可能となる魔道具なのである。
そもそも一般的に『偉大なる救世主』とは、宇宙そのものである創世神の事だと考えられていた。
創世神教会が絶対的な信仰を集めるこの世界では、当然ともいえる常識であったし、その為にペンタグラムは聖なる護符として信頼されている。
しかし!
その常識は正しくはなかったのだ。
実は五芒星とは……
今や禁忌とされた、地の底深く堕ちた大いなる元・天使長の紋章だった。
その恐るべき事実まで、オレリーが知る事はなかった。
ある一部の、背信者と呼ばれる存在の研究者達だけが、真実を認識していたのである。
……五芒星とは『明けの明星』、すなわち金星を指すのだ。
恐るべき真実が隠された五芒星……
だけどオレリーが、もし真実を知ったとしても、護符として身に着ける事はやめなかっただろう。
愛するルウがプレゼントしてくれた、オレリーにとっては命にも代えがたい一番の宝物なのだから。
「おやすみなさい……」
いつか、ルウと一緒に暮らせる日を夢見て……
オレリーは、深い眠りへと落ちて行った。
※この物語はフィクションです。
五芒星に関しては、作者の創造及び、多くの解釈がある中での一説である事をお断りしておきます。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
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※『魔法女子学園の助っ人教師』とは微妙に違う
ヴァレンタイン王国における、のんびりスローライフな田舎ワールドです。
故郷に帰りたかった青年が謎の死を遂げ、15歳の少年になって異世界転生!
バトルは少々ありますが、基本は田舎の村で美少女達とスローライフ。
畑を耕したり、狩りをしたり、魚を釣ったり、結婚した美少女達と日本の昔遊びなど。
スローライフ最中、自らの転生の謎を解き、様々な人々と、出会い&別れを繰り返す。
結果、逞しい『ふるさと勇者』へと成長して行く話です。
本日1月23日朝更新予定です。




