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第974話 「テオドラの復活②」

『魔法女子学園の助っ人教師』


 愛読者の皆様、いつもご愛読、応援して頂きありがとうございます。

 いよいよ新刊第3巻が、今週【2018年1月25日発売】となります。

 何卒宜しくお願い致します。

 

 ※書影及びカラー口絵、イラスト数点を公開致しました。

 活動報告にアップしております。

 ぜひご覧下さい。

 ルウとモーラルが、異界の書店『幻想パンタシア』に行った翌日の昼……


 ブランデル邸3階の一室で、テオドラは目を覚ました。

 何故か深く、ぐっすりと眠る事は出来なかった。

 多分、『浅い眠り』が続いたのだろう。

 目覚めた時に頑張っても、良く思い出せない。

 

 違う夢を、何度も何度も見た。

 そして……

 見た夢自体は、酷くリアルだった気がする……

 

 近しい人々と仲良く暮らしている懐かしい喜びと、突如訪れた、むごたらしい別離を思わせる悲しみの感情が入り混じっていた。

 楽しい夢と悪夢が、複雑に混在していたに違いない。


 テオドラは起きる度に、現実へと引き戻された。


 魔族ならいざ知らず、限りある生命しか持たない有機体モータルである筈の人間が……

 とてつもない強度を誇り、半永久的に稼働する仮初かりそめの肉体を得たとしても……

 遥か昔に生まれた人間が、数千年後の未来に生きている。

 

 何と……

 不思議な事なのだろう…

 窓から見える、すっかり様式が変わったヴァレンタイン王国王都の街並みは、ガルドルドの都と比べればまるで別世界、否、異世界である。

 

 ぼんやりと、外を眺めながら、テオドラは思う。

 あまりにも陳腐な表現ではあるが……自分は数奇な運命に囚われたと。


 あの大破壊で、意識を失い……

 原因は不明だが、いつの間にか自分の魂は、ふたつに分離していた。


 分離して……

 自動人形オートマタに残った魂は、ネビロスという怖ろしい悪魔に支配されてしまっていたのだ。


 そして砕けた、もうひとつの魂は……

 今から10年近く前、奇跡ともいえる確率を潜り抜け……

 アンノウンとして、ルウに召喚されていたのである。


 数奇と言えば、これも同じくらい予想不可能な事なのだろう。

 主である怖ろしい悪魔から命じられ、ひょんな事から、ルウと戦い呆気なく敗れた。

 そして幸運にも、ルウに付き従う、己の魂の片割れと巡り合えたのだ。

 

 更に、大きな幸運があった。

 

 戦った相手がルウでなければ、そのまま殺されていたか、相手を殺していた。

 神の御業みわざともいえる、魂の修復などは到底無理だっただろう。

 

 狂気じみた父の実験の為に、残念ながら生身の肉体こそ失われてしまった。

 だがルウに出会った事で、テオドラは正常な魂を持つ人間として、『完全体』に戻る事が出来たのである。


 『人間』に戻って、またも奇跡が起きた。


 数千年ぶりに、生き別れになっていた姉とも会えたのだ……

 それも、姉はひとりではなかった。

 既に、大勢の家族と暮らしていたのである。

 結果、姉以外にも、一気に家族らしき者達が増えた。


 寝ている間、あっという間に、時間は過ぎて行ったが……

 テオドラが、ベッドから起き上がる事はなかった。

 意識は、はっきりしており、自由に動き回りたいのはやまやまであったが。

 

 しかし、はやる気持ちに反して、テオドラの身体は思うようには動かなかった。

 ルウと戦った時には、あれだけ自在に動かせた身体なのに。


 疑問を感じたテオドラは、姉ソフィアへ聞いてみた。


 妹から質問を受けた、同じ仕様の身体であるソフィアによれば……

 ルウとの激しい戦いは勿論、悪魔から無理やり魂を支配された事が原因ではないかという。

 その為、自動人形オートマタの機体に、何か狂いが生じていると。


 魂の残滓であった時に、召喚したルウへの想いはしっかり残っていた。

 その、あるじと慕うルウからも……

 「無理はせず、ゆっくり休むように」とは言われている。

 

 だけど、早く動きたい。

 とても……もどかしかった。

 

 それが……

 今、起きたら様子が違っていた。

 身体が、やけに軽いのだ。


 思わず勢いよく起き上がり、部屋の扉を開けようとしたら、ちょうど姉ソフィアが来た。

 ソフィアは、妹の顔を見ると朗らかに笑う。

 半ば生存を諦めていた、たったひとりきりの肉親が生きていて、心の底から嬉しいのだ。


「テオドラ、どう? 気分は」


「姉さん……何か、これまでと違う」


 テオドラは首を傾げ、そう言うと、「パッ」とベッドから降りた。

 身体を屈伸し、手足を思い切り伸ばしてみる。

 やはり、気のせいではない。

 身体が今迄通り、いやそれ以上に軽々と動かせるのだ。


「へぇ……やっぱり」


「やっぱりって?」


 ソフィアの答えを聞き、テオドラは訝し気な顔付になった。

 どうやら姉は、理由を知っているらしい。

 

 間を置かず、テオドラの疑問は、すぐに解消した。

 姉からすぐに、答えは伝えられたからだ。


「ルウ様のお陰よ、そしてモーラル様にもご尽力いただいたわ」


「え?」


「詳しい事は仰って頂けないのだけれど……昨夜、ある所へ私達の事を調べに行かれ、そのまま貴女が居た遺跡に行って来たって……仰ったわ」


「え? アシェイリーへ?」


 テオドラは、思わず遺跡の名を呼んだ。

 己の意思は全くなかったが、どこに居たのか、認識だけはしていたのである。


 ソフィアは?マークを出すが、すぐに納得した。


「アシェイリー? ああ、貴女が居た遺跡の事ね。ルウ様と貴女が戦った後、遺跡から悪魔共を追い出し、結界を張って封鎖していたんですって……昨日改めて探索されて、いくつか残っていた私達のパーツと部品を回収して来てくれたのよ」


 ルウがわざわざ、自分の為に動いてくれた事は分かった。

 しかし、テオドラにはまだ疑問がある。


「で、でも……この機体の仕組みは? もしパーツや部品があったって、ガルドルド人の一流魔法工学士以外にはどうにもならない……どうして?」


「うん、分かってる。私達のお父様が心血を注いで造り上げた、高度な技術を持つ身体だもの……」


 妹の質問を、聞いた姉も同意した。

 しかし、ある光景を目撃した姉は、驚愕すべき事実を伝えてくれる。


「あのね、ルウ様は貴女と戦い、そして調べた結果、私達の身体の仕組みをある程度理解されたらしいわ。そして応急手当だと仰りながら、調整してくれたのよ」


「な!? 理解したって!? 私達の機体の仕組みを?」


「そうよ! ルウ様は本当に素晴らしいわ! 私も一緒に調整して貰って、動きが凄く滑らかになった」


「姉さんも…………」


 ソフィアは微笑み、腕を軽く回す。

 テオドラから見ても、すぐ分かる。

 確かに、とても楽そうだ。

 そして、


「ええ、テオドラ。ルウ様は私達姉妹の命の恩人よ。いいえ! そんな表現では言い表せないわね……」


「ね、姉さん! ルウ様は? ルウ様はどこ? 今、このお屋敷にはいらっしゃらないわっ! あ、あの方の波動を感じない!」


 ルウが屋敷に、自分の近くに居ない!?

 テオドラは、大きな不安を覚えた。

 目が……完全に泳いでいた。


 妹は、ルウに依存し切っている。

 無理もない……

 アンノウンとして召喚され、10年近くも一緒に居たのだ。

 

 そう感じながら、ソフィアは苦笑した。

 やんわりと興奮する妹をなだめる


「ルウ様は……お仕事よ。学園へ行かれているわ」


 ルウの所在が分かった!

 と、なればテオドラの選択肢は、たったひとつしかない。


「わ、私も行くっ! 学園へ行くわっ!」


「え? テオドラが?」


「ええ、私はルウ様に仕える身なの。従士が傍を離れてはいけないわ」


 と、その時。


 とんとんとん!


 姉妹の居る部屋の扉が、軽やかなリズムで鳴らされたのであった。

いつもお読み頂きありがとうございます。

明日1月23日からは書籍版第3巻発売記念と致しまして、

特別閑話を1月25日まで3日連続で更新致します。

通常版は1月26日に更新しますので、本日を含め5日連続の更新となります。

ぜひお楽しみ下さい。


東導の別作品もお願いします。


☆『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』新パート連載中!


https://ncode.syosetu.com/n4411ea/


※『魔法女子学園の助っ人教師』とは微妙に違う

ヴァレンタイン王国における、のんびりスローライフな田舎ワールドです。


故郷に帰りたかった青年が謎の死を遂げ、15歳の少年になって異世界転生! 

バトルは少々ありますが、基本は田舎の村で美少女達とスローライフ。

畑を耕したり、狩りをしたり、魚を釣ったり、結婚した美少女達と日本の昔遊びなど。

スローライフ最中、自らの転生の謎を解き、様々な人々と、出会い&別れを繰り返す。

結果、逞しい『ふるさと勇者』へと成長して行く話です。


本日1月22日朝更新予定です。

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