第972話 「ふたりめの親友⑧」
『魔法女子学園の助っ人教師』
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新刊第3巻【2018年1月25日発売】
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ケルトゥリには、分かる。
恋人を作らなかったのは、否、作れなかったのは……
今、目の前に居る、とぼけた人間の男のせい……
ルウが原因なのだと。
元々ケルトゥリは、自分より才能のない者を愛せない。
一族の中にも、ただひとりを除いて、自分を超える男は居なかった。
唯一のひとり……
すなわち、今は亡きシュルヴェステルは、ケルトゥリの実力など遥かに超える別格の存在ではあるが……
一族の偉大なる長が、ケルトゥリの恋愛の対象になるなどありえない。
だから、ろくな男がおらず、恋人が出来なかった。
それは、人間の街に来てからも同じであった。
ルウに対しても同様である。
完全に対象外だった、筈なのだ。
当初は、異種族である人間のルウなど可愛いが、ちょっと生意気な弟くらいにしか見ていなかった。
シュルヴェステルに命じられたから仕方なく、生きて行く為の知恵、躾、全てを世話し、教えてやった。
そう!
ルウは恋人というより、ただの子供。
少しくらい成長したって、出来の悪い弟の筈だったのに……
だが、あの精霊降臨の日……
ルウは、一気に自分を超えた……
全属性魔法使用者として覚醒したのである。
ケルトゥリが持っていた、複数属性魔法使用者としての自信は無残にも打ち砕かれ、瞬時に圧倒的な差を付けられてしまった。
ケルトゥリが唯一認めていた伝説のソウェル、シュルヴェステルを超えるかもしれない素質の片りんを、ルウは見せつけたのだ。
そして……
これまでは面倒を見て、助けてやるばかりだった筈が……
遂に、決定的ともなる事件が起こった。
それはこの王都で再会して、暫く経った次なる運命の日……
ケルトゥリは……ナディアに憑依した凶悪な大悪魔ヴィネに魂を囚われ、籠の鳥となってしまう。
あの時は……
悪魔に身も心も奪われた、ケルトゥリの人生最大の危機だった。
あのままなら、抵抗する術もなく魂を喰われ、死ぬしかなかったのだ。
絶体絶命の窮地に陥ったケルトゥリを、ルウは鮮やかに救い出してくれた。
もう遠慮はしなかった。
好きな気持ちが、正直に出た。
ケルトゥリは嬉しくて頼もしくて、ルウにすがり、号泣したのだから……
今やケルトゥリの心は、劇的に変わっている。
狂おしいほどにルウが好きだと……
しかし……とケルトゥリは思う。
肝心のルウの気持ちは、初恋と思ってくれたあの時から……
変わってしまっているのだろうか?
穏やかな笑顔を見せるルウを、ケルトゥリは問い質すように睨む。
今日、ルウを訪ねた目的は、リューディアの件を告げるだけではない。
どんな形でも良いから、自分の持つ気持ちをルウにぶつけ、何らかの答えが欲しかったのである。
だが、やはりケルトゥリはとんでもなく天邪鬼だ。
まるで男の子が、大好きな女子をつい苛めてしまうように……
ルウに対しては、態度も言葉もきつくきつくあたってしまう。
「私って、あんたにとっては変な存在よね?」
「変な存在?」
「そうじゃない? 母で姉で、あんたの初恋の相手なんだもの」
ケルトゥリが言うと、ルウは首を傾げる。
「母? 俺、そんな事言ったっけ?」
「何、言ってるの? 私とリューでしっかり面倒みてあげたでしょ? ああいうのを母の愛って言うのよ」
「おお、そうなんだ、ありがとう。ケリーが俺をどう思っているのか、よ~く分かった」
ルウが自分の事を理解した?
「とんでもない!」と、ケルトゥリは憤る。
「こら! 待ちなさい!」
「ん?」
「もう分かったなんて、偉そうな事を言わないで! はっきり言っておくけど……私が今迄出会った男の中で、あんた以上の人はシュルヴェステル様だけなんですからね」
「おお、爺ちゃんの次か! そりゃ、嬉しいぞ」
素直に喜ぶルウを見て、ケルトゥリは微笑む。
「ええ、ついでにあんたの質問に答えてあげる。私が今のあんたをどう思っているのかをね」
ケルトゥリはそう言いながら、呼吸法で息を整えていた。
助走は、完璧だと思う。
後はルウに向かって、思い切り跳ぶだけである。
「ああ、ぜひ教えてくれ」
「じゃあはっきり言うわ。単なる友達よりは大好き! でも恋人にするのにはまだまだ物足りないわ! もっとも~っと凄くなってシュルヴェステル様を遥かに超えて貰わないと納得しない!」
「おお、ありがとう!」
ありがとう?
何それ?
この私が、ケルトゥリ・エイルトヴァーラが告白してやっているのに?
相変わらずだ。
この子は……変わらない!
ケルトゥリは、だんだん可笑しくなって行く。
「馬鹿ね! ここはお礼をいう流れじゃないでしょ! まだまだあんたは、いけてないって駄目出ししているのよ」
「うん! 俺、自分でもまだまだだと思う。だからケリーの期待に応えるよう修行してもっと強くなるよ」
ケルトゥリの為にも、強くなる!
ルウの温かい気持ちが、ケルトゥリには伝わって来る。
素直に、ケルトゥリは嬉しいと思う。
そして改めて分かった。
もしかしたら、ルウだけじゃない。
多分、この気持ちが恋。
ケルトゥリにとっても……初恋の相手は……ルウなのだと。
「そうよ! もしも! わ、わ、私をあんたの女にするのなら! もっとじゃなくて、とてつもなく! 頑張らないと無理だって言ったのよ! わ、分かったぁ?」
「おう、分かった! とてつもなく頑張るぞ、だからこれからも仲良くしてくれよ」
ルウは優しく微笑み、右手を差し出した。
言い方は酷くても、自分の気持ちをようやく伝えられたケルトゥリは……
嬉しさを無理やり、かみ殺す。
そして少し口を尖らせながら、同じく右手を差し出して、ルウの手をしっかりと握ったのであった。
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※『魔法女子学園の助っ人教師』とは微妙に違う
ヴァレンタイン王国における、のんびりスローライフな田舎ワールドです。
故郷に帰りたかった青年が謎の死を遂げ、15歳の少年になって異世界転生!
バトルは少々ありますが、基本は田舎の村で美少女達とスローライフ。
畑を耕したり、狩りをしたり、魚を釣ったり、結婚した美少女達と日本の昔遊びなど。
スローライフ最中、自らの転生の謎を解き、様々な人々と、出会い&別れを繰り返す。
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☆『隠れ勇者と押しかけエルフ』
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深き深き地下世界で……
怖ろしい悪魔王により、父と一族全員を殺されたダークエルフの姫エリン。
穢されそうになったエリンを、圧倒的な力で助けたのは謎の魔法使いダンであった。
※本日1月15日朝、更新予定です。
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