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第963話 「ふたりめの親友④」

『魔法女子学園の助っ人教師』愛読者の皆様、いつもご愛読して頂きありがとうございます。

 

 第3巻発売予定日が出ました。

 来月、2018年1月25日の発売予定となります。

 何卒宜しくお願い致します。

 ※カバーイラスト公開致しました。

 活動報告にアップしております。

 リューディアは決して諦めていない……一層、燃えている。

 ルウを必ずソウェルにする。

 ケルトゥリの言った事は、完全な事実である。


 しかし、ルウは理解しているのだろうか?

 今のリューディアはルウを、単にアールヴの長ソウェル、つまりシュルヴェステルの後継者にしたいだけではない。

 やがて訪れる、世界を破滅させる可能性の災厄から、アールヴ一族を守りたい。

 

 否、ただ守りたいなどという、生易しいものではない。

 

 ルウをソウェルの座へ据える事に、アールヴ一族の存亡がかかっていると言い切るのだ。

 もしソウェルになったならば、ルウにはアールヴ一族を輝かしい未来へ導くとともに、絶対守らねばならない義務も生じるから。

 義務とは、単に「守る」と口で言うより、遥かに重い、『掟』というべき規範である。

 それ故、守護者たる者として固く絆を結ぶ為に、ルウを一族の長ソウェルに据えたいのだ。

 ルウとの間に子供……が出来ても構わないとまで言い切っていた。


 リューディアが、そこまでルウにこだわる理由とは何か。

 答えは……謎めいたルウの出自である。

 姉いわく、ルウの出自は創世神の禁忌に触れるほど、大きな秘密……なのだ。

 

 果たしてルウ自身は、その重大な秘密を知っているのだろうか?


 そして、不可思議ともいえるリューディアの気持ち。

 ケルトゥリ同様に、ルウへの秘めたる愛のみではない。

 リューディアの意味不明な言葉……

 何故ルウの妻となる事が、神の眷属であった『アールヴの栄えある名誉』となるのか?

 

 ケルトゥリが、いくら考えても分からない……謎だらけだ。

 そして、ケルトゥリ自身のルウへの気持ちも……


 つらつらと考えに耽るケルトゥリへ、ルウが言う。


「俺もケリーも……この街で、こうなるなんて、全く想像もしなかったな」


「ええ、そうね……お互いに、魔法の教師なんかやっているものね」


 確かにそうだ。

 アールヴの里で暮らしていたふたりが、日々魔法の修行に明け暮れていたふたりが……

 今や人間の国、ヴァレンタインで予想もしなかった仕事をしている。

 ケルトゥリは同意して頷いた。

 そして昔の記憶を思い出す。


 そもそも目の前のルウに魔法の初歩を手解きしたのが、リューディアとケルトゥリだ。

 いや魔法だけではない。

 シュルヴェステルが連れて来た10歳の孤児の面倒を見て、育て上げたといって良い。

 それで情が移った?

 

 否、違う。

 ルウは不思議にアールヴの女達を惹きつけた。

 彼を好きなのは、けしてリューディアとケルトゥリだけではない。

 現在ルウの妻となっているミンミ、それ以外にも多々居たのである。

 ケルトゥリから見れば純粋とはいえないアールヴの、アマンダとケイトもそうであった。


 そもそもリューディアとケルトゥリのふたりとも、アールヴでは上位と言える貴族の血筋である。

 従来のアールヴの純血主義的な考え方では、同族以外と結婚するなどありえない。

 それが今や、一族の為という理由以上にルウという人間と結ばれる事を望んでいるからだ。


「これから何が起こるか分からない……多分、いろいろな事が起こるわ……良い事も悪い事も……」


 大破滅……

 今迄起こった、神の怒り――大破壊を、遥かに凌ぐ災厄……


 ケルトゥリの脳裏には、リューディアが言った不吉な言葉がずっとあった。

 そんなケルトゥリの思いを知ったように、ルウは言う。 


「確かにケリーの言う通りだな、人の運命とは未知であり、出口の見えない迷路のようなものさ」


「…………」


 ケルトゥリも思う。

 もしルウがアールヴの里へ来なかったら……

 ケルトゥリもリューディアの運命だけでなく、シュルヴェステルは禁忌に触れずまだ健在だっただろう。

 

 ルウが来た事でアールヴ一族の運命は大きく変わった。

 それは、間違いない。

 但し、それが良かったのか、悪かったのか……

 だが少なくとも姉リューディアは、前向きに捉えている……


 ケルトゥリが黙っているからか、ルウは言う。

 強い決意を語る。

 弱き者として、人間として、神が下した翻弄される運命に抗いたいと。


「運命とは大概自分の思うようにはならない。だが俺は僅かでも希望を持って……自分の意思で切り開いて行きたい。常に前向きに、手を抜かず人生を全うしたい。たとえ理不尽な力が真っ向からふさごうとしても」


「…………」


「それに俺はひとりじゃない、頼もしく優しい家族が居る。たったひとりより強く生きて行く事が出来るだろう」


「…………」


 羨ましい!

 ケルトゥリは、純粋にそう思う。

 自分の近しい家族と言えば、姉リューディアだけ。

 いくら故国イエーラに親族は居ても……

 離れて長くこの人間の国ヴァレンタインで暮らしていれば、もう他人と変わらない。

 ケルトゥリは……酷く孤独な気持ちになった。


 唇を噛み締め、無言になったケルトゥリを、ルウは正面から見据える。

 漆黒の瞳に囚われるような、吸い込まれるような錯覚……

 思わずケルトゥリは、ルウの虜になったように感じた。


「ケリー、おこがましいかもしれないが、俺は持てる自分の全力を尽くし、家族を守り、幸せにしたい」


「…………」


 家族を幸せにしたいって……余計に羨ましい。

 でも私は……違う……

 フランやミンミとは違う……今のルウとは何のかかわりもない。

 強い決意を語るルウの言葉が、ケルトゥリにはやけに遠くで聞こえる。

 

「当然、お前も」


「え? 私?」


「そうさ、俺の家族のひとりだ、ケリー」


 突如!

 遠かったルウの声が耳元で聞こえた……ような気がした。

 堅く閉ざした、心の扉を開けられた。

 それも強引に。


 今迄、真っ暗闇だった部屋に、明るい光が差した。

 眩しい!

 

 吃驚して大きく目を見開くケルトゥリを、相変わらずルウはじっと見つめていたのであった。

いつもお読み頂きありがとうございます。

東導の他の作品も宜しければぜひ!

『悪魔☆道具』


https://ncode.syosetu.com/n0281eg/


謎めいた悪魔バルバトス、そしてルシフェルの娘、美しき銀髪夢魔ツェツィリアが営む不可思議な魔道具店ストレイアラ。数奇な運命に導かれた人々が悪魔の持つ魔道具に魅了、囚われ翻弄されて行く話です。

※本日12月25日朝更新予定です。

※25日中に当該更新パートを一気に完結する予定です。


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