第953話 「我が儘ケヴィンの恋③」
『魔法女子学園の助っ人教師』愛読者の皆様、いつもご愛読して頂きありがとうございます。
只今、書籍版第3巻の改稿作業中です。
発売日等、詳細が決まりましたら、随時お知らせしますので何卒宜しくお願い致します。
ケヴィンとの話が終わり、ルウは副学長室を出た。
次に向かうのは、魔法大学の資材部である。
この資材部が、各地の冒険者ギルドへ研究教材用のマンドラゴラの納品依頼を出していたのだ。
幸いにも、依頼された条件の中にはあったが……
手続きをしたバートランドのギルドではなく、この資材部へ『直接納品』して依頼完了となる。
資材部に出向いたルウは、応対した担当者へマンドラゴラを10株納品した。
1株につき報酬は金貨30枚という約束なので、引き換えに金貨300枚分の王金貨3枚と、依頼完了証明書を受け取る。
ちなみに、直前まで亜空間につながった収納の腕輪に入れておいたので、鮮度は全く落ちていない。
ケヴィンの件、冒険者ギルドの依頼完遂、これで大学における用事は済んだ。
なので、帰ろうと、ルウは正門へ向かう。
そんなルウを、後ろから呼び止めたのは……
「あら? ルウじゃない? 今日は大学に何か用事?」
今年、魔法大学へ入学したばかりのフランソワーズ・グリモールであった。
彼女はジゼル達の一年先輩で、去年魔法女子学園を首席で卒業していた。
だが……その正体は、人間に転生した大悪魔グレモリーだ。
今日は機嫌が良いらしく、ルウを見て、にこにこしている。
そんなフランソワーズへ、ルウも穏やかに笑顔を返す。
「おう、フランソワーズか、ちょっとな……」
「うふ、ちょっとって何? もしかして私に会いに来たの?」
悪戯っぽく笑うフランソワーズだが、ルウはすぐ首を振った。
「いや、全く違う、もう帰るところだ」
「もう! 即否定? それって酷くない?」
ルウのきっぱりとした物言いを聞いて、フランソワーズは頬を膨らます。
彼女は、少しルウに甘えてみたいのだ。
しかし当のルウは、
「ああ、酷くない」
相変わらず穏やかな表情で、平然と言い切った。
そんなルウを見て、フランソワーズはため息をつく。
「そういう物言い自体が酷いって言うのよ。私達、親友でしょ? 友達以上恋人未満の」
「うん、まあ、そんなところだ。それより元気そうじゃないか?」
「ええ、最近貴方の噂で、面白くなっているから」
「俺の噂? 面白い?」
ルウの噂?
一体、どのような事だろうか?
人間とはいえ、グレモリーは大悪魔ウヴァルを付き従えている。
多分、独自の情報網を持っているのだろう。
「うふ、聞きたい?」
「ああ、聞かせてくれ」
「じゃあ、大学のカフェで……話すお礼にお茶でも奢って。飲みながら、念話で話しましょ」
ルウとフランソワーズのふたりはこうして大学のカフェへと向かったのである。
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ルウに一番高いアイスティとケーキをご馳走して貰うと、フランソワーズの機嫌はすぐに直った。
「うふ、美味しい」
「そうだな」
「でも、意外。貴方も甘党なのね」
そんな他愛もない会話をしながら、ふたりは念話でも話している。
『それで、グレモリー、いや、レヴェナ……噂とは何なんだ?』
『うふ、本名で呼んでくれて嬉しいわ! ええ、噂とは、悪魔達がね、……どちらへ、つこうかって噂してるの』
『どちらにつく?』
『うん! 貴方か…… それとも大魔王バエルかね……』
大魔王バエルは古の魔法王ルイ・サレオン72柱の1柱……
それも第一位とされる強大な魔王だ。
今迄にルウが戦った、大悪魔の背後に居ると思わせる痕跡を残していた。
ズバリ、フランソワーズが指摘したのでルウは真剣な表情になる。
『それって、どういう意味だ?』
『大魔王バエルは邪な野望を持ち、悪魔を次々と束ねている、所在は不明だけど、どこかの異界へ潜り込んで何かとんでもない事を企んでいる……自分の配下である悪魔、魔族達、そしてあらゆる世界や異界に散らばったアッピンの赤い本……その収集家、アッピニアンと呼ばれる者達を使ってね』
フランソワーズの『話』を、ルウは認識しているようだ。
『ああ、知っている……備えは……しているさ』
『うふ、頼もしいわ! 片や、貴方も悪魔達を束ねている。貴方にそのつもりがなくても……バルバトス、アモン、アスモデウス、他にもいっぱい……あの気難しいマルコシアスまでさえ貴方を慕っている』
『……俺はルシフェルの使徒として義務を……いや、違うな、俺を頼って来る者を受け入れているだけだ』
『確かに……そうね。でも今やどんどん貴方のファミリーは大きくなっている。かつてあの方が転生した……そう、転生前の私も含めた72柱をまとめた古の魔法王ルイ・サレオンのように……この世界の根幹を為す高貴なる4界王でさえ貴方に忠実だわ』
『サレオンはともかく、俺の方は成り行きの結果さ……』
『果たして……そうかしら? 創世神による運命の歯車が確実に回っているとしたら?』
何か意味ありげに言葉を吐き、じっとルウを見つめるフランソワーズ。
以前の口振りからしても、ルウの正体を薄々知っているようだ。
しかしルウは首を横に振った。
『もしそうだとしても与えられた時と場所でベストを尽くす。俺の生き方は変わらない』
『うふふ、そう言うと思った。まあ良いわ、この話はここまで。それよりルウ、貴方……これから、ひとつ恋を叶えようとしていない?』
それ以上会話をしても、進展がないと思ったらしい。
フランソワーズは、いきなり話題を変えて来た。
先ほど、ルウとケヴィンが話していた気配を読み取ったようだ。
『ああ、そうだ。よく分かるな?』
『何、言ってるの? 私の力は主に男女の愛を成就させる事、恋の気配には超が付くほど敏感なの。忠実なウヴァルが付き従う事で、私は更に数倍の力を得ているわ』
大悪魔グレモリーは占術に長け、隠された財宝の発見能力を有する悪魔である。
それ以上に、恋愛を成就させる悪魔としても知られている。
話題が切り替わり、ルウはいつも通り穏やかな表情になった。
『ああ、当然、知っている……だが、俺が依頼された事だからな』
『何言ってるの? 水臭いじゃない。私はね、貴方の親友として、素敵な恋を成就させてあげる』
『……分かった。お前の言葉に甘えよう……ぜひお願いしたい』
『うふふ、嬉しいわ。ルウが私を必要だと言ってくれたから』
『ああ、お前は俺にとって必要な女だよ。だが……』
『だが、何?』
『さっきの話……お前はどうするんだ?』
ルウがさりげなく聞いたのは、悪魔達の行動について……
バエルの誘いに乗るか、否かの答えである。
『馬鹿ね! 分かっていて聞かないで。友達以上、恋人未満の女が貴方につかない筈ないでしょ』
フランソワーズはそう言うと、ルウを見て花が咲くように笑ったのである。
東導の別作品もぜひ宜しくお願い致します。
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故郷に帰りたかった青年が謎の死を遂げ、15歳の少年になって異世界転生!
バトルは少々ありますが、基本は田舎の村で美少女達とスローライフ。
畑を耕したり、狩りをしたり、魚を釣ったり、結婚した美少女達と日本の昔遊びなど。
スローライフ最中、自らの転生の謎を解き、様々な人々と、出会い&別れを繰り返す。
結果、逞しい『ふるさと勇者』へと成長して行く話です。




