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第940話 「鋼商会の飛躍①」

『魔法女子学園の助っ人教師』愛読者の皆様、皆様の応援のお陰で第3巻の発売が決定しました!

ありがとうございます!

発売日等詳細は未定ですが、概要が決まり次第お報せしたいと思います。

何卒宜しくお願い致します。

 女子供に優しく、年寄りには親切。

 理不尽な強きをくじき、抵抗する術のない弱きを助ける。

 無口で、ぶっきらぼう。

 一見とっつきにくそうな強面こわもて揃いだが、実は粋でカッコイイ頼れる男達。

 最近、王都でそんな評判の鋼商会カリュプス


 だが……

 彼等の前身は王都にいくつかある凶悪で冷酷無比、蛇蝎のごとく嫌われる愚連隊のひとつ、『鉄刃団アイエンブレイド』であった。

 元々、若く粗暴なはみだし者が集まったどうしようもない不良集団を、当時兄貴分だったリベルト・アルディーニが取りまとめた。

 そして、清濁併せた様々な『シノギ』により組織を維持、運営していたのだ。


 しかし、年老いた女魔法使いの店を不当な借金の形に取り上げたのがきっかけで、怒ったルウから徹底的に懲らしめられた。

  

 いつもは穏やかなルウは、時たま非情さを見せる。

 鉄刃団アイエンブレイドと同じ愚連隊、蠍団スコーピオンズは首領以下を容赦なく粛清したのがいい例だ。

 

 蠍団スコーピオンズが無慈悲な殺人を含めてありとあらゆる犯罪に手を染めていたのは勿論、多くの女性を拉致し、慰み者にした上で国外へ奴隷として売り飛ばしていたからである。

 

 だが鉄刃団アイエンブレイドに対しては、そうしなかった。

 首領のリベルトが殺人と麻薬、人間の拉致と奴隷売買を厳重に禁じていたからであり、孤児という彼自身の不幸な生い立ちのせいもある。

 

 ルウはリベルト達の話を全て聞いた上で、自らの考えを伝えた。

 親身になったルウから諭されたリベルト達は今回の行いも含め、これまでの行いを心から反省したのだ。

 結果、心を入れ換えた鉄刃団アイエンブレイドの団員達は鋼商会カリュプスと改名し、堅気として再出発を決意したのである。

 ※第312話~323話参照


 堅気になって働く……言うだけなら容易い、簡単だ。

 だが、リベルト達は一体何をすれば良いのか分からない。

 

 商売替えをするには、新たなスキルと経験が全然足らない。

 今迄は何かあれば、暴力、脅し、ゆすり、たかりなどで全てを押し通していたから尚更だ。


 そんなリベルト達の特性を踏まえて、ルウのアドバイス&提案は絶妙だった。

 

 今までやっていた『ぼったくり』がお約束のあこぎな飲食店から、適正料金で美味しい食事が摂れる健全な店へと変貌させた。

 それも可愛い女性と同席して楽しく食事が出来るという特典付きだ。

 また強制的な押しつけともいえる『みかじめ稼業』を、真っ当な警備事業として立ち上げる事を勧めたのだ。


 リベルト達はルウのこまやかな気配り、優しい思いやりに感激した。

 加えて、博打で巻き上げた莫大な金を「再出発の運転資金にしろ」とあっさり返してくれた漢気おとこぎにも惚れた。

 出来ればルウに傍にいて貰い、ず~っと頼りにしたかった。


 だが……


 王国の正式な教育機関であるヴァレンタイン魔法女子学園の臨時教師という正業を持つルウが四六時中、鋼商会カリュプスの面倒を見るわけにはいかない。

 結局ルウの代理として、忠実な彼の従士が『相談役』として派遣されたのだ。


 初代の『相談役』はアーモンこと悪魔アモンであった。

 アモンは豪胆で腕っぷしが強い。

 それでいて知的でもある。

 『詩』が趣味なのは内緒だ。

 リベルト達は最初おっかなびっくりだったが、すぐアモンに惚れ込む。


 やがてアモンが諸事情で交代すると、メイスンこと悪魔シメイス、アスモスこと悪魔アスモデウスのふたりが相談役を引き継ぎ、何かと力になっていた。


 シメイスもアモンに勝るとも劣らない侠客。

 野性味あふれる風貌に反して、倫理学、修辞学、文法について造詣が深い。

 文武両道のタイプであり、平凡な男を凛々しい戦士へと変える素晴らしい能力を持つ。


 片やアスモデウスはシメイスより、さらにいかつい風貌。

 正体は恐ろしい悪魔なのに、人間の女に対して、人間の男以上に魅了されていた。

 その為か、従業員の女性にはめっぽう優しく新規店舗の運営には適任であった。

 ルウの人選、いや悪魔選びはとんでもなく的確だったのである。


 当然、彼等は悪魔としての素性を隠した。

 悪魔達はルウとは全く違うタイプであったが、リベルト達を鍛え、管理し、導いた。

 リベルト達も情に厚い悪魔従士を慕ったので、関係は良好。

 鋼商会カリュプスは正式に商業者ギルドにも登録し、王都になくてはならない店として認識されて行った。 


 ルウがアドリーヌの故郷へ帰省する少し前……念話でシメイス、アスモデウスへ連絡があった。

 コレット&ダロンド両家と行う、例の『取引』の件である。

 具体的には、地下遺跡から出土した古代人工遺物アーティファクトを中心とする大量のお宝の鑑定、王都までの護衛、運搬である。


 この時点でルウとアドリーヌはまだ両家へ『提案』をしてはいなかった。

 だが備えあれば患いなしの例え通り、物事が決まってから慌てて準備をしても遅い。


 シメイスとアスモデウスはルウが帰って来るまでに話をまとめようと、早速、会頭のリベルト・アルディーニと打ち合わせを持ったのである。


 まずはシメイスが打合せの趣旨を告げた。

 対して、リベルトは目を輝かせる。

 彼にとって依頼して来た人物が特別な存在だからだ。


「へぇ! ルウ様から請け負う新しい仕事……ですか?」


「ああ、今迄の鋼商会カリュプスにはない仕事だ。だが、これまでやって来た経験が生かせる」


「経験が生かせる?」


 リベルトは自分達のやって来た経験を思い起こす。


 現在、鋼商会カリュプスが受けている主な仕事は、王都内の警備、警護及びトラブル処理である。

 最初は慣れずに、とんでもなく難儀をした。

 ただの治安維持だけではなく、市場の商店主と商店主、商店主と客、客同士、日々起こる大小のトラブル処理。

 すなわち人間関係の調整もあったからだ。

 

 だが、ルウの目は確かであった。

 リベルト達はすぐ仕事に慣れたばかりか、優れた適性を見せた。

 結果、今では市場で欠かせない存在となったのである。

 そんな中央市場の警備の実績と評判を聞きつけた各商会、商店の店主から依頼が殺到し、大忙しな毎日を送っていた。


 そんな経験が生かされる新たな仕事。

 それもルウが考えてくれた鋼商会カリュプスの為の仕事……


 リベルトは、思いっきり身を乗り出す。

 早く聞きたくて、催促せずにはいられない。


「メイスンさん、アスモスさん、楽しみだ! 詳しく聞かせて下さいよ! さあ、早く!」


「ははは、リベルトよ、そう来たか」


「俺もメイスンも新しい仕事が楽しみでな、お前の気持ちはよ~く分かるぞ」


 シメイスとアスモデウスも満面の笑みを返した。


 強面こわもて顔を突き合わせたごつい男達には、滅多に見せないとびきりの笑顔が浮かんでいたのであった。

いつもお読み頂きありがとうございます。

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