第927話 「特別閑話 じゃじゃ馬の決意」
魔法女子学園の助っ人教師』第2巻が昨日23日に発売されました。
皆様、宜しくお願い致します。
第2巻発売を記念して本日も特別閑話です。
WEB版の時間軸とすれば、第76話の遅めという感じです。
ドゥメール伯爵亭において、ルウとジーモンの練習試合があった日の夜……
ジョゼフィーヌ・ギャロワは帰宅すると、碌に食事も摂らず私室へ籠ってしまった。
父親のジェラール・ギャロワ伯爵は愛娘に何かあったのかと心配したが、ドア越しに問いかけてもジョゼフィーヌは何も語らなかった。
最近、亡き妻ベルティーユに生き写しと言って良いほど似て来たジョゼフィーヌであったが、性格はだいぶ違っていた。
優しく大人しかった妻に比べて、忘れ形見のジョゼフィーヌははっきりモノを言う。
頑なになると譲らない所は、特に自分に似てしまった。
苦笑したジェラールはとりあえず様子を見る事にしたのである。
心配する父の干渉から、漸く解放されたジョゼフィーヌはベッドの上に仰向けになる。
そして、ずうっと考え事をしていた。
……考えていたのは当然ルウの事である。
凄いショックだった。
まさか、あのような『イベント』が行われようとは予想だにしなかった。
試合が終わって、ルウの強さに大が付くほど感激していたジョゼフィーヌにとっては青天の霹靂であったのだ。
「どうしてですの? どうして? どうして?」
思わず声に出た。
それも繰り返し、繰り返し、疑問の言葉が。
無理もない。
ジョゼフィーヌには何がどうしたのか、わけが分からないから。
あの校長代理——フランシスカは単にルウを従者にしていたのでは?
好きな素振りは見せていたけど……普通、貴族が従者なんかと結婚する?
その上、母親の伯爵、アデライド理事長は何故許したのか?
分からない!
それ以上に不可解なのがナディアである。
今迄ルウとそんなに接点はなかった筈だ。
試合をして負けたのがきっかけ?
ナディアは学園の秀才。
将来を嘱望された風の魔法使い。
上級魔法使いになるのは確実と言われている……
そしてあの美貌……
男性に、とてももてると聞いていたのに、何故?
他にも言い寄る者が大勢居る筈だ。
よりによってルウを選ばなくても!
ジョゼフィーヌは悔しくなって枕に顔を埋めてしまう。
悔しさに涙が溢れて来る。
不思議だ。
この感情は何だろう?
これが嫉妬?
これが恋?
ならば、幼い日に恰好良い騎士に憧れたのと同じ?
それが自分の初恋だった。
いや……
比べ物にならない。
何故ならば、こんなに胸が苦しくはなかったから。
フランシスカとナディアの婚約者ふたりに囲まれて、ルウは幸せそうだった。
でも……私なら、ジョゼフィーヌ・ギャロワなら、彼をもっと素敵な笑顔にしてみせる。
ルウは自分に優しく言葉をかけ、才能を認めてくれた初めての男性。
『お前には風属性の素晴らしい才能がある』
『頑張れよ』
『相当の上級魔法使いになれる筈だ』
ルウの言葉が次々にリフレインされる。
何故か心が温かくなる、そして希望に満ちて来る。
『お前の為にも一生懸命、授業をしよう』
「そうですわ……ルウ先生、私をこのような気持ちにして……責任を取って頂きますわ……絶対に!」
キッと睨むジョゼフィーヌの眼差し。
彼方には、ルウの穏やかな笑顔が浮かんでいたのであった。
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