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第88話 「新しい仲間」

「あ、あ、あの先輩は……な、何故ルウ先生の事を……お、お聞きになるのですか?」


「先輩? まあその呼び方なら、許そうかな」


 オレリーから先輩と言われ、ナディアは納得したように微笑んだ。

 そして、突如『爆弾発言』を行ったのである。


「理由は簡単。公式には発表していないけれど」


「簡単? 公式には発表していない?」


「うん! 内々で一部の人しか知らない。フランシスカ先生、ボクとジゼル3人が皆、ルウ先生の妻なんだよ」


「へ!? つ、妻?」


 オレリーは唖然あぜんとしてしまった。

 ルウとフランのやり取りを見ていたら……

 ふたりが特別な関係になっていても、おかしくないと思ってはいた。

 

 しかし……

 3年生で名門貴族出身の美貌を誇る才媛のふたりもルウ先生の妻? 

 

 オレリーの頭の上には?マークが盛大に飛び交っている。

 

 見かねたフランが助け舟を出す。


「ほらナディア、オレリーが困っているじゃない。もっと『簡単』に説明してあげて」


「うん! 簡単にか、フラン姉、分かった」


 ナディアは頷くと、


「オレリー君、ボク達はルウ先生に……すなわちボク達の『旦那様』に全員、命を助けて貰ったんだ」


 ルウ先生が?

 旦那様!?

 命を助けて貰った? 

 ここに居る人が皆?

 わ、私と一緒だ!


「旦那様と邂逅かいこうした時。3人共、伴侶はこの人しかいない、そう思ったんだ」


「…………」


「とりあえず、全員婚約者という立場かな」


 ナディアから、ルウは『婚約者』と言われ、オレリーはますます混乱する。


 こ、婚約者!?

 でも……

 ここに居る3人共、名門貴族の令嬢じゃない。

 それがどうして?

 婚約って!?


「うふふ、君の言いたい事は分かるよ」


「…………」


「上級貴族の娘であるボク達が、平民である旦那様と、何故婚約出来たのかって疑問だろう?」


「は、はい……その通りです」


「答えは簡単。全員、旦那様が大好きだからさ」


 と、ナディアは悪戯っぽく笑っている。


「???」


 しかし……

 オレリーには全く話が見えない。

 単に好きというだけで、身分の差を超える事が可能なのかと。


 ここでフランがひと言。


「ほら、ナディアったら……それじゃあ全然説明になっていないわ。オレリーが戸惑っているじゃない」


「ごめん、フラン姉」


 罰が悪そうなナディアに代わり、フランが、


「ええっとね、オレリーさん。私は全く問題なしだったわ。むしろ母にはすぐ結婚かって聞かれたくらい」


 フランはそう言い、ちょっと悔しげにねてみせる。

 そしてナディアも、ぺろっと舌を出す。


「ボクは父様(とうさま)にお願いして了解を貰った。絶対に幸せになるからってお願いしたんだ」


 そしてジゼルも、


「私も両親に許可を貰っている。全く問題ない……と思う」


 3人の中で、ジゼルだけ歯切れが悪い。

 ルウとの結婚を、兄ジェロームが強硬に反対しているからに違いない。


 話を聞いたオレリーは圧倒されていた。

 

 まず貴族と平民という身分の差から来る劣等感が大きかった。

 そして容姿も……

 地味な自分と比べれば、3人共皆スタイルが良く、凄い美人なのだ。

 

 私には何もない。

 全然取り柄がない。

 ルウ先生を好きになる資格なんかない……

  

 オレリーはがっかりし、思わず俯いてしまった。

 

 しかし、

 オレリーの肩がしっかりとつかまれる。


「え!?」


 オレリーは思わず声を出した。

 顔を上げ、肩をつかんだ相手を見ると……

 真剣な表情のナディアが居た。


「それじゃあ駄目だよ、オレリー君。愛に身分なんか関係ないんだ」


「え?」


「そう! 愛も魔法も身分なんか関係ない」


「愛も魔法も? 身分は関係ない?」


 オレリーの言葉を聞き、ナディアは優しく頷くと、

 一転、真剣な眼差しでオレリーを見つめた。


「この際、オレリー君の気持ち通り、素直に正直に行動するべきだよ」


「私の気持ち通り…素直に正直に……」


「そうさ! もし君が旦那様を失っても平気でいられるか、想像してご覧」


「私が……ルウ先生を失っても平気かどうか……」


「うん、もしも君が平気ならば、単なる先生と生徒の関係に戻るって選択肢もあるけどね」


 選択肢はふたつ……

 勇気を出すか、

 それとも……

 ルウ先生と……大好きなルウ先生と、

 単なる先生と生徒の関係に……戻る……


「い、嫌! 嫌です! 絶対に嫌!」


 オレリーは自分でも驚くほど、大声で叫んでいた。


「私、ルウ先生が大好きなんです! 絶対に離れたくない、失いたくないんですっ!」


「それが聞きたかったのよ」


 いつの間にか……

 オレリーの傍らにはフランが立っていた。


「オレリーさん、貴女が旦那様と生涯をともにするという決意と覚悟があるのなら」


「フランシスカ先生……」


「私は同じ妻として歓迎する」


「同じ妻として歓迎する? 私を受け入れてくださるのですか?」


「ええ、そうよ。旦那様はきっとこれからも私達みたいな女性を大勢助けて行くでしょう」


「…………」


「もしも助けられた女性が望めば……相手を慎重に見た上での判断もあるけれど、私達は基本、受け入れるわ。同じ男性を愛する同志として」


 フランはそう言ってから苦笑する。

 ぽつりと呟いた。


「私は以前、結構、焼餅を焼いてしまったけれどね……」


「え?」


 この綺麗なフランシスカ先生でさえ……焼き餅を焼く……

 

 それに、フランシスカ先生の言う通りかもしれない……

 ルウ先生はこれからも私みたいな困った女性が居たら助け、親身に相談に乗ってあげるだろう。

 

 そうしたら優しくされた女の子は……

 ルウ先生を好きになる……必ず。

 確信出来る。


 でも私は……私!

 ルウ先生への私の愛は、『私だけのもの』なんだ!

 

 と、その時。


 ジゼルがずいっと近寄り、

 考え事にふけるオレリーの肩を「ぽん」と叩く。

 表情も、いかにも幸せいっぱいというような、満面の笑みを浮かべている。


「私達は旦那様を中心に、これからの人生を助け合って生きて行く。但し途中で、抜けると言っても敢えて引き止めないが」


「ど、どうして引き止めないのですか?」


 思わず聞き直すオレリーに、今度はナディアが笑顔で答える。


「人間は変わる可能性がある。ボクの気持ちは全く変わらないけど」


「…………」


「時が経てば、ルウ先生よりもっと愛する相手がこれから出て来るやもしれない。その時には、敢えて引き止めないというのが、ボク達が旦那様と話して決めた約束事なんだよ」


 そんなナディアの言葉を聞き、フランがぽつりと呟いた。


「でも、私は絶対に・・・変わらない。彼を一生愛し続けるわ」


「私も! 当然・・変わらない」と厳しい表情のジゼル。

 

 3人の決意を聞き、オレリーも気持ちがはっきりした。

 最早、迷いやためらいはない。


「わ、私だって! 死んでも・・・・気持ちは変わりません! 私も先生の事を旦那様って呼んで構わないのですか?」


 そんなオレリーの質問に答えたのはフランである。


「ええ、貴女が彼と、ルウ先生と結ばれるつもりなら」


「はい! 宜しくお願い致します」


 最後にオレリーがきっぱり言い切ると……

 改めて3人に向かい「宜しくお願いします」と深く頭を下げた。

 

 オレリーの想いをしっかり受け止め、フランは扉の前に移動し、開ける。

 開いた扉の向こう側には……何と!

 ルウが立っていた。

 

 ルウはゆっくり部屋の中に入ると……

 オレリーを慈愛のこもった目で見つめた。

 そして一生忘れないであろう、熱き言葉を告げてくれた。


「オレリー、お前は守るべき大事な女だ。俺の下に来い!」


「……は、はいっ! 私はルウ先生の! いえ、旦那様の下へ参ります! だ、旦那様! 私は好きです! 旦那様の事が大好きなんです!」


 オレリーはそう叫ぶと、ルウの胸の中へ飛び込んだ。

 そして、安堵と嬉しさのあまり、号泣したのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 午後12時45分。

 お昼休みの終了を告げる鐘が鳴った。


 魔法女子学園における午後の授業は、午後1時の開始。

 この鐘の音は生徒達に昼休み終了15分前を告げる為のものだ。

 

 校長室を出た後……

 3年A組の教室へ戻るジゼル、ナディアと別れ、

 ルウと歩いていたオレリーに、同じクラスのミシェルとオルガが息を切らせて駆け寄って来た。


「オレリーさん、次の魔道具研究の授業って、貴女と私達が組んで課題をやる事になっていたわよね?」


 ミシェルに聞かれ、オレリーは記憶を手繰った。

 言われてみれば……確かにそうだ。

 でも、どうして?

 わざわざ私に?


「え? あ、ああ、そうですね」


「じゃあ、早く特別教室に行こう!」


 と、ミシェルが促せば、更にオルガも急き立てる。 


「そうそう、ミシェルの言う通り。遅れるとまずいわよ。あれでいてルネ先生って怒ると結構怖いから」


 ミシェルがいきなりオレリーの手を掴んだ、走り出そうとする。

 片や、オルガはルウの顔を見て「心得ている!」とばかりにウインクした。

 実は……

 ミシェル達はジゼルから頼まれ、オレリーのフォローをするように言われていたのだ。

 

 びっくりしたオレリーだったが……

 級友に温かく声をかけて貰えた事が、よほど嬉しかったのであろう。

 

 オレリーはルウの方を振り向き、満面の笑みを浮かべ、大きく手を打ち振る。

 そしてミシェルとオルガに手を引かれ、走り去って行った。

ここまでお読みいただきありがとうございます!

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